幻想的な矢沢ワールドに引き込まれて - 下弦の月の感想

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漫画レビュー数 3,135件

下弦の月

4.084.08
画力
4.30
ストーリー
3.60
キャラクター
3.98
設定
3.88
演出
3.63
感想数
4
読んだ人
15

幻想的な矢沢ワールドに引き込まれて

4.84.8
画力
4.2
ストーリー
4.4
キャラクター
3.9
設定
5.0
演出
4.5

目次

幻想的に描かれたホラー

矢沢あいの作品の中では異色の作品ですね。いや、漫画としても異色ですよね。こちらの作品あたりから作風が大人向けにシフトチェンジされてきたように思います。キュンキュンするような甘いラブストーリーではなく、胸にジーンと染みてくるようなラブストーリーが美しくもあり儚くもあり・・・。さらにホラーとミステリー要素が織り交ざり、見事に少女漫画の概念を覆す矢沢ワールド全開で、もう彼女以外の作品が読めるかどうか分かりません。

1コマが映像のように

矢沢あいさんの画力はやっぱり繊細で素敵です。さらにポイントとなるシーンは映像が流れるかのように入ってくるから不思議です。最初と最後の交差点のシーンなんて台詞がなくても画だけで登場人物の感情が入ってきます。柵のシーンは逆にとてもシンプルで、より異空間というか無機質さがでていて好きでした。

練り込まれているストーリー

なんといっても下弦の月の魅力は、画に負けない練りこまれた美しいストーリー。そもそも下弦の月というタイトルが既に惹かれます。月の神秘さと冒頭から謎めいていたアダムの人物像、そして蛍にしか見えないイブ。この設定と演出が相まって幻想的なまとまりが作られているのではないでしょうか。ストーリーの構成もかなり複雑でしたね。事故からストーリーが始まるのですもの。完全に冒頭から引き込まれます。複雑に絡み合った紐を解いていく中で、イブと蛍の間に生まれた絆も並行していく。さらに蛍が紗絵や正輝、哲との友情も深まっていく模様。そして愛情の重さは変わらずとも、伝え方与え方が変わっていく様。ストーリーは現実離れしているのに、共感できる感情模様がいつも矢沢あいさんの作品では随所に見られます。

確立されたキャラクター

こちらも下弦の月に限らず矢沢あいさんの作品はいつも、主人公以外の登場人物を含めキャラクターが確立されています。サブキャラクターで別のストーリーができるのでは(実際に描かれているキャラクターもありますが)というくらいキャラクターが完成されています。下弦の月で練りこまれていたキャラクターはやはり、蛍の友人達でしょう。それぞれ個性があり役割を持ち、ストーリーをより一層奥深くしています。キャラクターが子供とあって設定を掘り下げていくのも難しいと思いますが。少しインパクトで物足りなさがあった智己ですが、最後の病院のシーンなんかは思わずカッコイイ!と思ってしまいました。このシーンのインパクトをより高める為にも、序盤では淡白な描かれ方だったのかもしれません。

最後に

今回の作品は少女漫画の中でも異色なので、読みたい時の気分に左右されますが何度読み返しても読んで良かったと思える作品です。この作品を最初に読んだのは中学生の時でしたが、大人になってからも読み返し奥深さに浸れる作品でした。

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そーきたか!と巧みに裏切るミステリー

構成が抜群おもしろいです。はじめに女子高生・美月が理由はわからんが家族とも彼氏ともうまくいかず、家出してアダムというミュージシャンのところへ。彼は彼女の大好きな曲を歌い、安らぎをくれる人。しかし彼は素性がわからず、本当のところで分かり合えているとは感じられない人。だけど彼を追いかけたいの。そして彼女は事故に遭い…うん、死んじゃったんだね。そして幽霊になって…と思ったら、今度はまさかの小学生の女の子の目線へシフト。おいおいここからどんなふうにつなげるんだろう…?って思ってたら、同時期にルルと名付けた猫を追いかけて事故に遭った小学生・蛍が、いなくなってしまったルルをまた探し始めたところ、美月とアダムが時間を過ごした館へとたどり着き、記憶をなくした美月の霊と出会う…ここまでくると全然見方が変わってきますよね。なるほど、蛍たち仲良し小学生4人組で美月を成仏させるっていう話…?しかしここからさらに...この感想を読む

4.54.5
  • betrayerbetrayer
  • 666view
  • 3009文字
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大人が読んでも奥深い漫画

愛私は矢沢あい先生の作品が大好きでした。私が初めて矢沢あい先生の作品を見たのはご近所物語という作品でその後、天使なんかじゃないという作品を読みました。そしてその後に読んだのがこの下弦の月という作品でした。最初この物語を読んで一発目の感想としては、よく分からないが率直な感想でした。当時の私はまだ学生だったので、りぼんという漫画イコール恋愛漫画という図式ができあがっていて、この切ない恋愛物語を恋愛と位置づけるにはまだまだ理解が足りなかったのだなと今になって思います。この物語に登場するアダムという青年がいます。自分が好きな女性が亡くなっていても、自分がもうこの世にはいなくなっても、その生まれ変わりである美月という女性をも愛しているそんな青年でした。彼のその直向きすぎて、理解に苦しむ場面が多々ありました。けれど、私はこの物語を読んで、最後のアダムの語りに非常に感動したのです。アダムが好きなさや...この感想を読む

4.54.5
  • あざみあざみ
  • 4577view
  • 1288文字

アダムは最強にかっこよく蛍が最高に可愛い

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2.52.5
  • クエクエ
  • 237view
  • 502文字

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