タイトルからは想像できない優しさ
殺して終わりではないところ
殺し屋の話と聞くと、殺し屋がいてターゲットがいて殺人をして終わりなイメージがあったが、この小説は殺すまでのプロセスはもちろん、実行後の殺し屋の心情が描かれてるのが良かった。
特に好きな話は第3章のシュート・ミー。
薬づけのシンガー椎名ゆかとシュウの心がラストで通い合ってて切なくなって泣けた。
椎名ゆかはシュウの勤め先に出向いて、学生として最後の3日を過ごす。
そのことをシュウへのメッセージと共にMDに吹き込んで送る、聞いたシュウはゆかのために海に骨灰を撒く。
殺し屋の小説なのですが、殺すだけじゃないラストが良かった。
優しい殺し屋
殺し屋なので、もちろん殺人を犯すが、他人の要望に沿った人殺しをする優しさが良い。
第5章スーサイドヒルでは、殺し屋である自分を雇ったはずなのにボケて殺人者だということが分からなくなるまで待ってくれという老人の要望をのむ。
すぐに殺せば手間にもならないのに、そんな時間を待ち続けることができる優しい殺し屋は魅力的に感じました。
殺し屋は基本的に1人で行動し、家族を持たず・愛さずなイメージがありました。
しかし、シュウは母親を愛し、愛しすぎていたからこそ父を殺してしまった。
そして、後に妻となる恋人を愛しています。
それがよく分かるのは第6章ナイトフラッシャーで、娼婦を殺すためとはいえ抱かなくてはいけないことを、恋人にすまないと思っているところです。
殺し屋としては優しすぎて失敗に繋がったりしますが、男として優しいシュウが素敵でした。
登場人物があっさりしている
シュウ以外の登場人物が主張してこないから、読みやすい小説でした。
第1章で父を殺し、母が殺人者として身代わりに捕まる。
そして父の知り合いによって殺し屋へと育て上げられる。
読み始めた頃は、暗いイメージ強かったのですが、殺された父親が後々までかなり強い影響を与えてくるのかと思ったら、それほど強い影響もなく気楽に読めた。
登場人物があっさりしていることで、章ごとに1話づつ物語が完成していて、第1章を読んでなくても物語が楽しる感じが良かった。
登場人物があっさりしていると一番感じたのは、エピローグのニュー・ファミリーズ・デイ。
ここまで、シュウの母の阿沙子のイメージが確定できていなかった。
私の印象は、父親を殺してしまった息子に変わって身代わりを引き受けた、優しい母親というイメージの方が強かった。
しかし、刑務所でタバコを売りさばいたりバーボンで酒盛りをするなどの豪快な性格だなんだというラストで意外性が見えた。
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