職務と人間らしさの狭間 - i wish you were here あなたがここにいてほしいの感想

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i wish you were here あなたがここにいてほしい

3.603.60
映像
5.00
ストーリー
2.00
キャラクター
1.00
声優
5.00
音楽
5.00
感想数
1
観た人
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職務と人間らしさの狭間

3.63.6
映像
5.0
ストーリー
2.0
キャラクター
1.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

デザインださい!

一応、戦闘形態に変身するヒーローものだと捉えることができると思います。

しかし、戦闘形態の外見がダサくて驚きます。戦闘形態では皮膚は外殻に覆われており、固い印象ですが、武装を備えているわけではありません。守備能力と筋力のアップはするようです。これに標準装備といった感じで、武装などがあれば、デザインがダサいことも機能上のことで仕方ないのであろう、と考えられます。

しかし、戦闘形態へ変わることで、基本的な身体能力が上がるだけのようです。

ガッカリさせられる印象は拭えません。もっと格好良くスタイリッシュなデザインに仕上げることができたと思うのですが、その点は残念なポイントだと思います。固い外殻から、昆虫をモチーフとしたデザインなのだと予測されます。しかし、昆虫らしさは微塵も感じさせるデザインではありません。また、他のヒーローものを彷彿とさせるものもないように思えます。

こういったデザインは、アニメ作品の魅力そのものに直結するものではないでしょうか。

逆に、意図的に格好悪いキャラクターデザインにされたのでしょうか。

確かに、アニメ本編における物語は、ヒーローものとは呼べない内容だと受け取れます。敢えて格好悪いデザインにすることで、ヒーローもの作品ではないことを訴え出していたのかもしれません。明確な意図があって、敢えて格好悪いキャラクターデザインにしたようにも感じられます。

制作スタッフによる、「物語の内容で勝負している」という明確な意思表示だったのかもしれません。

ただ、私自身の感想を述べれば、前者で述べた印象が強いです。格好良いデザインであることに悪く作用することはないと思うのです。戦闘形態デザインが格好良ければ、もっと「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」というOVA作品の魅力は増したのだと言い切ります。

暗い主人公

冒頭から難しい表情を崩さない主人公、田宮 ユウジ(たみや ゆうじ)が印象的です。

難しい表情をして塞ぎこむ姿の裏側には、物語の中核を担うものが潜んでいるように感じさせます。ただ、ここまで難しい表情を表に出している主人公の存在自体が珍しいアニメ作品だと思いました。

珍しい印象と同時に、主人公が塞ぎこんでいると作品全体のイメージまで暗くなるのが否めないです。

主人公が暗いアニメ作品の存在が少ない背景には、アニメ作品全体のイメージを考えられているのだと感じさせます。この「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」というOVA作品を観ていると、何かが奥歯に引っ掛かった感じが強いのと、作品全体から漂う暗いイメージは拭えません。

制作スタッフもプロなので、そんなことは百も承知だったと思うのです。しかし、知っていながらも曲げずに突っ走った事実は、作品づくりにおける積極的な攻めの姿勢だったのではないでしょうか。

そう感じずにはいられません。

可愛いヒロイン

「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」のヒロインであるアイも、外見の可愛さとは裏腹に暗い印象の強いキャラクターです。

せっかく可愛いヒロインなのに、その魅力が台無しになってしまっています。彼女自身のこれまでの経緯や背景を考えれば、暗いのも当然のことです。しかし、主人公も暗い上にヒロインも暗いので、アニメ作品全体の暗さは相乗効果が発揮されています。

アニメ本編の中で、明確にアイの過去を描写する場面はありませんでした。しかし、実験体としてのみ、その存在を許されていたのではないでしょうか。それを示すものとして、軍上層部のアイに対する扱いは酷いことが挙げられます。人間として扱われている様子はなく、機械のように扱われていたのが印象的です。アイをサポートする現場の人物たちは、彼女の立場や気持ちに対して、一定の理解を示していました。

アイの存在を改めて振り返ってみると、別OVA作品である「最終兵器彼女」というタイトルを思い出します。あくまで、軍の人間に「物」として扱われるアイの存在が印象に残っています。

アニメ本編を観ると、軍上層部の人間たちの傲慢さに腹が立ちます。しかし、そのように描いた意図は、軍上層部の人間を悪く映すものではないと思うのです。あくまで、「物」として扱われるヒロイン、アイという存在の悲しさを強調したかったのではないでしょうか。

作品に込められたメッセージ性

前述でも例に挙げましたが、OVA作品「最終兵器彼女」と酷似した内容のアニメ作品だと受け止めています。

故に、作品自体のメッセージ性も似たものになっていると感じます。アニメ本編の根底にあるものは、「職務と人間らしさの狭間」なのだと思います。「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」と「最終兵器彼女」、両OVA作品に通じているテーマだと考えられます。ただし、「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」の主人公は、軍に属する隊員という立場です。そして、「最終兵器彼女」の主人公は、一般の高校生という立場でした。

その違いから、ヒロインの映り方が違っているように感じられます。

「切なさ」を強調しているOVA作品「最終兵器彼女」に対して、「人間らしさ」を強調しているのが、OVA作品「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」なのだと感じられます。

そして、それは作品タイトルにも表れています。

「最終兵器彼女」は、まさにヒロインそのものの存在を指しています。それと比較しても、「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」は、人間の気持ちを指したものだといえます。

また、物語の結末においても、滅んでしまった世界を描いた「最終兵器彼女」に対して、「i-wish you were here-あなたがここにいてほしい」では救われた世界が描かれています。

似ているようでいて、込められているメッセージ性が違うことが表れているように思えないでしょうか。

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