驚かされるくらい丁寧なアニメ作品
種族を超えた愛情
白蛇の主人公の青年に対する愛情は、アニメ本編では中盤過ぎまで伏せられています。そのことから、主人公の青年は、白蛇に騙されており唆される展開を予想していました。しかし、全然違う展開で驚かされました。そして、それが「白蛇伝」というアニメ作品の面白さなのだと思います。白蛇の本音を、意図的に分かりづらくしていることで、物語展開を読めなくさせているのだと思います。単調になりがちな話が膨らませようとする意図を垣間見ることができます。これにより、観る側の主人公の青年に対する感情移入が変わってきます。美人のお姉さんに見初められるなんて甘い展開が、そう易々と転がっているわけはありません。観る側の主人公の青年に対する感情移入は、騙されていけない、という気持ちが強いと思うのです。しかも、白蛇は物語冒頭では、妖怪のような描かれ方をしており、明らかに観る側を騙そうとする意図を感じられるように思います。如何に、白蛇が表面上は、主人公の青年に対する好感を表にしていても、本音の部分は違うことを暗に表しているのだと思います。僧侶においても、白蛇が悪い存在であることを匂わせるものではないでしょうか。僧侶は一般的な創作物における印象は良いものであり、本来は主人公を良い方向に導くものとして描かれることが多いように思われます。さらに、アニメ本編における僧侶の白蛇への敵意は、如実に白蛇を悪に仕立てようとする描写だと考えられます。そこが「白蛇伝」というアニメ作品の魅力的な部分なのだと思います。「白蛇伝」の主要な登場人物は、主人公の青年、白蛇、僧侶の三名で構成されています。そのことから、それぞれのキャラクターの担う役割も大きいのだと思います。僧侶という存在の使い方を上手に演出されていると感じさせます。
主人公の人間性
「白蛇伝」のアニメ本編、中盤以降から白蛇の本音部分が明らかにされていきます。それは、観る側を驚かされる展開だと思います。これまで、暗に主人公の青年を騙しているのではないか、と思わせられていました。しかし、白蛇の青年に対する好意は本心であり、純粋なラブストーリーだったのです。そして、この時点で気付かされるのです。制作スタッフの仕掛けたフェイントに、見事に騙されてしまったと感じられるのではないでしょうか。ただ、それは観る側の勝手な思い込みによる想像です。そして、どこか良い話を信じられない大人の邪(よこしま)な部分なのだと思います。改めて思うことが、観る側が純粋な子どもであるなら、最初から白蛇に悪い印象を抱いていないのではないでしょうか。きっと、白蛇の主人公の青年に対する好意を素直に受け取っていたと思うのです。そして、自分自身が純粋ではないと、改めて気付いてしまう場面なのだと思います。白蛇においての、主人公の青年に対する本心を明確に表すものとして、子どもだった青年に助けられていた過去の回想シーンの存在があります。そして、白蛇の本心を明確に表すのと同時に、主人公の青年の表面上ではない人間性をも表現しています。白蛇が主人公の青年を好きになってしまうことが自然なことに思え、さらに、観る側も主人公の青年を応援してしまいたくなる場面だと思います。この場面から、観る側の主人公の青年に対する感情移入が変わってきます。物語冒頭では、「騙されていけない」という心配から、純粋な愛情を応援するものに変化してくるのです。
困難を乗り切る二人
一般的には良い印象を抱く僧侶の存在ですが、「白蛇伝」というアニメ作品においては、愛する二人の障壁という立ち位置です。ただし、間違いなく言えることは、僧侶は悪人ではないのです。むしろ、僧侶という言葉から想像する通り、善人だと考えられます。僧侶に悪意はないのに、愛する二人の障壁になってしまうことに複雑な気持ちになっていきます。主人公の青年を中心に据えて、人間関係を整理してみると面白いです。白蛇においても、僧侶においても、主人公の青年を助けようとする気持ちは同じなのです。行動の原動力となる気持ちは、白蛇は「愛情」であり、僧侶は「倫理観」で違いはあります。しかし、両者ともに主人公の青年を助けたいと想う気持ちは同じなのです。ただ、白蛇と僧侶の立場の違いから、すれ違いは大きく、物語展開を膨らませています。ただアニメ本編を振り返った時にいえることは、愛し合う二人にとって、僧侶が大きな障壁となっています。愛し合う二人にとっての困難は、僧侶の存在だったといえるのです。「命の花」の存在や周囲の登場人物たちの協力で、僧侶も自分自身の勘違い、そして、間違っていたことに気付きます。自分自身の行動が、主人公の青年の危機を招き、幸せを奪っていることに気付いたのかもしれません。改めて考えてみると、「白蛇伝」というアニメ作品に明確な悪者という存在が居なかったことが印象的です。お互いの善意のすれ違いを描いた物語と捉えることができます。そこが「白蛇伝」というアニメ作品の魅力だと、私自身は受け止めました。
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