「私が聞きたかったのは。たった一人の拍手」 - もうひとりのシェイクスピアの感想

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「私が聞きたかったのは。たった一人の拍手」

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
5.0

目次

「シェイクスピア別人説」に基づくifの物語

シェイクスピアといえば、直筆原稿が残されていないことなどから、数々の戯曲を書きあげたのは田舎出身で教養もない”ウィリアム・シェイクスピア”本人ではなく、誰か他の人物なのではないか、という論争がなんと18世紀から今まで続いていることでも有名ですよね。この作品は、そんな「シェイクスピア別人説」のうちの一つ、シェイクスピア=オックスフォード伯説を軸にしたもの。「もしもこの人が〇〇だったら…」というようなifの物語が大好きな私にとっては、この作品はシナリオもしっかりしていて、とても興味深く面白い一作でした。公開当時、そこまで話題にならなかったような…?という印象ですが、観た人にはわかる、この面白さ…。観た後、歴史モノの映画が好きな友達・ミステリ映画好きの友達に勧めても、積極的に観てもらえなかったのが残念でなりません…!

芝居を嫌悪すると同時に芝居の持つ力を恐れている宰相を義父に持ったがために、自分自身の名では芝居を発表することができないオックスフォード伯エドワード・ド・ビア。愛する戯曲を書きたくても、義父も妻もそれを恥ととらえ、なんとしても止めさせたいと思っている、という彼をとりまく状況が、なんとも切ない。同時に、誰かに名を借りてでも自分の作品を世に出したいという切実な想いが胸を打ち、正体を隠さざるを得なかったがゆえの「別人説」かあ、と思わせる強い説得力がありましたね。

圧倒的な色彩・衣装・舞台装置の美しさ

ところでこの映画を見ていて楽しかったことの一つと言えば、映画全体の色合いだったり、衣装だったり、舞台装置だったりが、とにかく美しくてたまらなかったこと!もともと歴史モノ・文学モノ映画で重視するポイントに「衣装・美術が綺麗かどうか」をあげている私にとっては、この映画はまさに垂涎必至の作品でした。見ていてウットリするようなドレスの数々、壮麗なセットや建物、色彩…豪華であるものの、派手すぎず上品で、たまらない…!この映画が第84回アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされ、ドイツ・アカデミー賞でも撮影・編集・美術などの6部門での受賞を果たした、というのも頷けます。

胸に刺さる言葉の数々

「私が聞きたかったのは、たった一人の拍手」

「私には君がわかる。私を裏切っても、決して私の言葉を裏切りはしない」

劇中の言葉を引用してみましたが、このふたつからもわかるように、この映画には印象的で美しく、胸に深く突き刺さるような言葉が散りばめられていました。これは字幕を付けた方が上手なのかな…?と調べてみると、字幕は松浦美奈さん、字幕監修は英文学者で早稲田大学教授の小田島恒志さんでした!納得!松浦美奈さんは個人的に、他の映画でも、情緒があって美しく、印象的で心に残る字幕をつけてくださる方だなあという印象だったので(最近の作品だと「ゴーン・ガール」「キャロル」が特に素敵でしたよね!)、なるほどなあ…と感じました。

何度観ても、多方面から楽しめるこの映画。もう少ししたら、また観て楽しみたいなと思っています!

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