直訳すると忘却・記憶喪失 - 風の名はアムネジアの感想

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風の名はアムネジア

4.804.80
映像
5.00
ストーリー
4.00
キャラクター
5.00
声優
5.00
音楽
5.00
感想数
1
観た人
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直訳すると忘却・記憶喪失

4.84.8
映像
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
5.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

銀河鉄道999に似ている

「風の名はアムネジア」というアニメ作品を観終えて感じたことは、「銀河鉄道999」に近いものが多いと感じました。「銀河鉄道999」は、哲郎とメーテルが宇宙鉄道である銀河鉄道999に乗車して、色んな星に寄りながら目的地まで旅する物語です。停車駅として、色んな星に寄りますが、トラブルに巻き込まれていく展開が多いです。

劇場版アニメ「風の名はアムネジア」は、宇宙を旅する話ではありません。アメリカ大陸を旅しながら目的地を目指しています。しかし、舞台が宇宙なのか、地球上の大陸なのか、置き換わっているだけで物語展開は近いのではないでしょうか。舞台設定を変えた「銀河鉄道999」という見方はできるように思います。

また、「風の名はアムネジア」の主要人物は青年ワタルと、年上で落ち着いた印象のお姉さん、ソフィアの二名で構成されています。青年と年上のお姉さんの二名で旅していく構図は、「銀河鉄道999」主人公の哲郎とメーテルを彷彿とさせるものがあります。

さらに、主人公の名前が、「風の名はアムネジア」がワタルで、「銀河鉄道999」が哲郎と日本人の名前です。旅道中の相方、お姉さんの存在も「風の名はアムネジア」がソフィア、「銀河鉄道999」がメーテルと洋風の名前です。制作スタッフが意図している部分があるのか分かりませんが、キャラクターデザインにおいても似ているように感じられます。

そして、旅道中の途中で寄る土地で、トラブルに巻き込まれ、解決しながら主人公ワタルが経験を重ねて成長していくのも類似点ではないでしょうか。意識的に似せたのか、無意識に似てしまったのか、知る術はありません。しかし、強い影響を受けていることは疑いようのないことだと思えます。

ただし、相違点として挙げられるのは、作品タイトルにも象徴されており、「アムネジア」という言葉が指すように、世界のほぼ全人類が記憶喪失状態にあることです。その中で、常識や文明を失い、地球上の物語とは思えない展開を実現させている点は、「銀河鉄道999」とは明らかに違う部分であると捉えられます。

 

世界観の恐ろしさ

全人類が記憶喪失になることで、常識や文明を失うことの恐ろしさは尋常ではないことなのだと思います。特に私自身は考えたこともありませんでしたが、「風の名はアムネジア」を通して、改めて恐ろしいものだと感じました。

「北斗の拳」という有名アニメ・マンガでは、核戦争が起き、文明が消え去った世界が舞台となっていました。それもそれで社会秩序もなくなり、恐ろしい世界だと思います。しかし、全世界の人類が一斉に記憶喪失になることが、ここまで恐ろしいことなのだと実感させられます。当然のことながら、社会秩序が崩壊するのは容易に想像がつきます。むしろ、過激な描写を抑えられていた分、柔らかく描かれていた方なのではないでしょうか。

リアルに想像したら、もっと末恐ろしいことが各地で起こってしまうのだろうと思います。

こんな発想をしたこともありませんでしたが、想像してみると、その恐ろしさを想像して実感させられました。「アムネジアの風」というのは、実感が薄いですが、記憶障害という病気は現実に存在するものです。新しい病気で、脳に障害を起こすような、危険な病が流行してしまう未来は考えられなくもないように思えます。こういった考え方ができただけでも、「風の名はアムネジア」というアニメ作品の存在意義は大きいものだと捉えられます。

 

一方的な賭け

物語冒頭から中盤場面で、ソフィアとワタルが賭けをします。旅道中の間に、一人でも仲間が加わるのか、という内容でした。しかし、これはソフィアからの提案をワタルが一方的に受けたかたちでした。

この部分に、制作スタッフの強いメッセージ性を受け取ることができるように思います。

ソフィアの提案では、ワタルは、旅道中で仲間が加わる方に賭けることを定められていました。ソフィアは、旅道中で仲間が加わらない方に賭けていたことになります。

ここから読み取れることは、ソフィアは旅道中で仲間が増えることがないことを知っていたのではないでしょうか。「知っている」という表現はおかしいかもしれませんが、誰ひとりとして仲間に加わることがない強い予感があったのだと思います。

そして、ソフィアの旅の目的は、そこにあったのだと考えられるのです。仲間が加わらないことを証明することが、本来の旅の目的だったのではないでしょうか。そして、それ自体が人類に課せられた試練であったように感じられます。

新しい環境を受け入れることができるのか、宇宙人の存在を迎え入れられるのか、そんな問題提起をされていたように感じられます。生活する人々はそれぞれの土地で、それぞれのグループに所属して生きていきます。そして、ワタルとソフィアの旅道中で、新しい環境や仲間を積極的に迎え入れる性質ではないということを証明してしまったのだと思います。

その性質自体の良し悪しに言及する部分は薄かったです。

しかし、人間の性質に言及され、そこを強調するものはメッセージ性として強かったように思えます。力関係や立場、考え方の違いで差別してしまうことが多いのが人間なのではないでしょうか。

人間の性質を理解して、その事実を受け入れることが重要なのだと思います。

「風の名はアムネジア」というアニメ作品から、そんなメッセージ性を感じました。

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