詩を読むような映画
旅先で出会ったふたりの会話劇が秀逸。
ウィーンの美しい街並みを背景に、ただただ2人のとりとめのない会話が続く。
偶然出会ったふたりが、お互いの育った環境、過去の恋愛遍歴、人生観、価値観などを、
思想を交えて会話をかわしていく。
物語が大きく動くこともなく、淡々とした内容だが、その台詞ひとつひとつや、
ふたりの距離が縮まっていく様が
視線の動き、表情で表現され、何も起こらなくともドキドキさせてくれるのである。
旅の途中で出会い、旅が終わるまでのつかの間の恋。
偶然、列車で出会ったふたり。ふとしたきっかけで会話が始まり、2人は意気投合する。
旅の途中だった男が、次の朝の飛行機で帰るまでの間、一緒にいることにしたふたり。
国籍も違う男女が、出会ったばかりなのに、お互いを知ろうとたくさんの会話を交わす。
笑い合ったり討論になったり。2人の会話は止まらない。
彼の飛行機の搭乗時間がせまるにつれ、ふたりの距離は縮まって行き、離れがたくなる。
「半年後、同じ時間にここで会おう」と儚い約束を交わし、それぞれの帰路につく。
タイトル通り、ふたりの距離感が胸をときめかせてくれる。
とにかく主演ふたりの演技がよかった。
イーサン・ホークはかっこいいし、いかにもアメリカ男。
ジュリー・デルピーは知的で美しく、いかにもフランス女。
出会って序盤、レコード店でそれぞれ音楽を視聴したり、別々に行動するのだが、
その時の視線の投げ合いがすばらしい。
目が合ってるの?合ってないの?今かわした?私を見てた?
見つめ合う、とも違う2人の視線のやりとり。
初めの頃は会話もぎこちなくて、とぎれがち。
でもその途切れている間の、緊張感が伝わってきて、ドキドキするのだ。
これって台本あるの?って思うほど自然な会話で、
恋が始まっていく感じがリアルに表現されていて、若かりし頃の胸のときめきを思い出させてくれる。
繰り広げられる会話ひとつひとつが詩のように美しく、大きな展開はなくともあきさせない。
印象に残る台詞がいくつもあり、メモを取ったほどに素敵。
ほぼ2人だけの世界で、見ている方は同性の方に感情移入できると思う。
ラスト、半年後に会う約束をして、列車に乗る2人。
不安そうな切ない表情をうかべる男に対し、
彼女の表情は微笑みをたたえて、何も語らなくとも納得出来るものであった。
というのも感情移入している私自身が、同じ場面で同じ表情になったから。
ふたりが半年後、約束通り会ったのかどうか。。。詮索するのが野暮に思える。
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