二人の女性の挑戦を描いた作品 - ジュリー&ジュリアの感想

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二人の女性の挑戦を描いた作品

3.53.5
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
4.5
音楽
3.0
演出
4.0

目次

ごちそう作品であると共に、メリル・ストリープの演技力に陶酔する作品 

ジュリー&ジュリアは、実在の物語を題材にした映画だ。現代(2002年)に生きる平凡な女性、ジュリー・パウエルは、人生の変化と生きがいを求め、偉大な料理家であるジュリア・チャイルドのレシピブックをお手本にブログに料理をアップしはじめる、という物語となっている。

ジュリーが尊敬するジュリア・チャイルドは185センチという高身長、独特の抑揚を持つ甲高い声と、そして家庭で出来るフランス料理をアメリカに紹介した料理番組の顔として有名な、実在した女性である。

そのジュリアを演じたのはメリル・ストリープ。アメリカ人の誰もが知る超個性的なジュリア・チャイルドを演じるには相当プレッシャーがかかっただろうに、同じくアメリカ人の誰もが知る名女優のメリル・ストリープは、この役を見事に演じてのけた。

この映画は、ジュリーとジュリア、二人の女性の人生をクロスオーバーすることによって、挑戦することの楽しさ、時にぶちあたる壁と現実、身近な人への愛を教えてくれる作品だ。

二人の女性の魅力と人生を明暗合わせて描いていることにより、より鮮明に二人の人生が見えてくる。女性の一代記として、人生の参考書としても楽しんで観られる映画であろう。 

メリル・ストリープの演技力は驚嘆に値する

早速、個人的な意見になって申し訳ないが、筆者はメリル・ストリープのファンである。

『プラダを着た悪魔』の鬼編集長・ミランダ役ではじめてメリルの存在を意識し、『マンマ・ミーア!』の楽しそうに歌いあげる陽気な女性・ドナを見て、ミランダとの巧みな演じ分けに驚いた。

そしてこのジュリア・チャイルドである。独特の甲高い声、高身長、夫を愛するチャーミングな女性である超個性的なジュリアは、かなり演じにくい役柄だったであろう。実在した人物となれば、尚更だ。

しかしメリルの演技を見ると、そんなプレッシャーなどまるで感じさせない。むしろ、観客の心配など杞憂だと「ジュリア」に笑われてしまうだろう。女優・メリル・ストリープの演技ではなく、完璧なジュリア・チャイルドがそこにいるのだ。

メリル・ストリープはもともと、方言を完璧に使い分けられる女優として定評があるというが、ジュリア・チャイルドの独特なイントネーションすら完璧に使いこなしている。ここまでくると、職人芸と言い換えても大げさではないだろう。

メリル・ストリープのファンとして、この作品を見て本当によかった、と筆者は心から思った。

この作品がジュリーとジュリア、二人の女性の一代記であることは先にも述べたが、もう一人、女優・メリル・ストリープの役者魂を観るにも最適な映画なのである。

フランス料理はやっぱり美味そうなんだよなぁ

さて、『ジュリー&ジュリア』が二人の女性の一代記であることはすでに述べているが、もう一つこの作品には重要な要素がある。そう、物語を飾るフランス料理の数々である。

フランスが「美食の国」と呼ばれていることは誰もが知っているだろう。見た目、創意工夫、何より味というあらゆる面で、フランスは今も昔も変わらず「美食の国」の面目を保ち続けている。

作中では、戦後、ジュリアが夫・ポールの駐在先のフランスで必死になって学んだフランス理が、現代に生きるジュリーの手で再現されていく。それらは時には新鮮で、時には心弾ませるほどに、観客たちの目を楽しませてくれるだろう。

作品のストーリーにはさほど関わらないものの、『ジュリー&ジュリア』はごちそう作品――フランス料理の紹介番組としての見どころも十分だ。ジュリアとジュリーの「ボナペティ」の言葉に、食欲を刺激された読者諸兄も多かったのではないだろうか? 

なぜジュリーはジュリアに嫌われたのか

さて、「輝く女性の一代記」としてキレイにまとまっているこの作品であるが、ラストのエピソードには読者諸兄も驚いたことだろう。ジュリア・チャイルドが、ジュリーのブログに苦言を呈した、という内容である。尊敬するジュリアに批判され、ジュリーは大きくショックを受け、落ち込んでいる(作中ではこれに対してフォローはされず、映画を見た観客からも疑問の声が数多く寄せられている)。

ジュリーの恋人は、旧い時代の人間だから理解が出来ないのだとフォローしたが、実際のところジュリアは何故ジュリーのブログを否定したのだろうか。

筆者はジュリー・パウエルの書いたブログを見た訳ではないから、以降は推測になってしまうが、人の書いた作品を模倣したことにより名声を得たジュリーに非難の声を浴びせたのかもしれない。

確かに、カバー曲だけで売れた歌手を「人気歌手」と評価するのは憚れるように、同じような手段で売れたジュリーは自分の力だけで売れた作家とは言い難い。つまり、ジュリーは自分の力で売れっ子になったとは到底思えないのである(もちろん、難しいフランス料理を毎日作り続けたことはすごいことではあるが)。

そういった意味でジュリアがジュリーを認めないというのならば、とても納得がいくだろう。(もちろん、ジュリアが個人的感情でジュリーを認めたくないという考えも否定できないが……)。

読者諸兄は、映画で回収されなかったこの謎について、どういう考えをお持ちだろうか。

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