前シリーズから変化している点
シリーズを通して挙げられること
前シリーズから随分と変化が見られます。この変化は「進化」と呼ぶべきなのか、「進化」とは呼べないのか、その点につきまして記述させて頂きます。
ただ、全体的なイメージ・印象までは変わっていないことを併せて記しておきます。観方によって、全体的なイメージ・印象まで変わった、という意見もあるのかもしれません。
しかし、私の感想としては、「さよなら絶望先生」という作品の方向性という点では、変化はないように思っています。物語のオチが弱い部分は相変わらずだと思いますし、そもそも物語性を重視していない作品なので、原作者はオチが弱くても気にしていないのだと思います。題材とするネタ勝負、また途中で切り出される小ネタ勝負の要素が大きい作品なのだと思います。
事実として、良いのか、悪いのか、物語としての進展は全然していないのではないでしょうか。春夏秋冬という季節感は打ち出しているものの、登場人物である学生たちの学年は一切変わっていません。季節感は演出しているものの、物語における時間は止まっているのです。これは、サザエさん、ちびまる子ちゃん、クレヨンしんちゃんといった超有名な国民的なアニメ作品においても同じことがいえます。
ネタだけで勝負している「さよなら絶望先生」というアニメ作品に好感を持ちます。
「前回までのあらすじ」
「懺・さよなら絶望先生」から取り入れられた新しい要素です。前述したように、物語性が皆無であるにも関わらず、「前回までのあらすじ」自体に意味はありません。
そして、事実として、「懺・さよなら絶望先生」における「前回のあらすじ」の要素は、方向性を変えることなく、ネタをブッ込んでくること以外ありません。
ただ、潔い・・・とか、そういうことではないです。すでに、そういう次元でなく「前回までのあらすじ」に一切なっていないことが、最大のツッコミどころなのでしょう。ただ、意味不明の不思議な文章を、面白おかしくナレーションしているだけになっています。また、通例ではナレーションの方は一名で行われるものではないでしょうか。回を重ねるごとにナレーションに参加される方の人数が増えているように感じます。
この部分で大きく感じるのは、面白さ・笑いというものをナレーション原稿の読み手に依存しているように思います。如何に面白い読み方をすることで、笑わせられるか、ということを強く感じさせるのです。ナレーション担当しているのは、声優さんなのでしょう。その責任は、とても重大なもののように感じます。
最初は斬新に感じましたが、回を重ねるごとに斬新さは薄れてしまいます。そして、新しい要素が入ってくることもなかったので、終盤に近づくほど、面白みには欠いてしまったように感じました。
「お義母さんといっしょ」
「前回までのあらすじ」と同様に、エンディングでコーナー化された新しい取り組みとして、絵描き歌の要素を取り入れています。
NHK教育テレビの有名番組のタイトルをイジッて、まずはコーナーの名前だけで笑わせようとする狙いが見え見えです。ただ、それだけで終わらなかったのは、絵描き歌を真面目にしていたのは、最初の回だけだということです。最初の回では、コーナーの名前だけで笑いを取りにきています。そして、次の回からは、同じ歌で絶望先生の似顔絵を描いているのに、幼稚園の子ども、絵心のない方の絵の下手さを強調して笑いを取りにきています。
回を重ねるごとに、似顔絵のクオリティーが明らかに下がっていることで、笑いを狙っています。
ただ、「前回のあらすじ」同様に、初めのうちは斬新だったコーナーも、回を重ねるごとに、こちらの期待を超えるものが取り入れられることがありませんでした。どうしてもネタそのものに飽きてしまうのは否めないように感じます。
登場人物の変化
特に大きな変化を感じたのは、木津 千里(きつ ちり)ではないでしょうか。「さよなら絶望先生」という作品の中で、強烈なツッコミ役が不在のままでした。しかし、千里の性格変化によって、それを補おうとする意図なのだと思います。
ツッコミというのは、激しければ激しいほど、ネタを面白くさせるのだと考えられます。そういう手法を多用していたのは、芸能人のダウンタウンの浜田 雅功さんだと思います。明らかにやり過ぎだろう、というツッコミを意図的にすることで、笑いをとる手法を多用されていたと思います。最近は、印象・イメージが悪くなることを恐れ、ずいぶんツッコミを抑えているようにも見受けられます。
しかし、その手法を取り入れようと、新しい登場人物を投入するのではなく、既存登場人物の性格を変化させる、というのは凄いことのように思います。
シリーズ冒頭のイメージから比較すると、暴力的、そして、猟奇的に変化していることが一目瞭然です。確かに、几帳面で粘着するタイプでしたが、粘着要素をパワーアップさせ過ぎのような気がしていまいます。
また、登場人物の中での変化という部分では、小節あびる(こぶし あびる)の存在も挙げられると思います。これまで、絶望先生に対しての好意を表に出すことがなかったですが、「懺・さよなら絶望先生」では、絶望先生への好意を押し出しています。それにより、常月まとい(つねつき まとい)や小森 霧(こもり きり)との関係性も面白いものに感じました。
前向きに色んな取り組みをされていることが伺える内容だったと感じられます。冒頭でも述べたように「進化」と呼べる変化だったのでしょうか。チャレンジ精神という部分では、意欲的だったことは伺えましたが、「進化」と呼ぶには厳しいものだったように思えてなりません。
新しいネタが飽きられる頃を見計らって、差し替えることも必要だったのではないか、と感じざるを得ません。
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