熱血転校生の馬鹿っぷりが面白い!
清々しいほどの馬鹿っぷり
元ネタのPCゲームがあって、そこからアニメ化された「君が望む永遠」というコンテンツがあるようです。そして、そのアナザーストーリーとして描かれているのが、この「アカネマニアックス」というOVAアニメ作品のようです。作品タイトルには、そのことを匂わせる表記が一切なかったので、むしろ「アカネマニアックス」から観てしまいました。
正直、元ネタである「君が望む永遠」は暗いイメージが強そうなので、観る前から観る気が失せてしまいます。率直な印象、「アカネマニアックス」だけで十分のようにも思えてしまいます。
この「アカネマニアックス」主人公である剛田 城二(ごうだ じょうじ)の馬鹿っぷりと勢いは、暗い作品の印象を一転させるのに足りる衝撃だったのではないでしょうか。観ていて、こんな人物像の方を現実社会で出会ったことがありません。アニメやマンガのような空想世界でしか、お目にかかれない人だと思います。
また、現実社会にいたら、本当に面倒で、距離を置いてしまう人物であることも付け加えておきます(笑
ただ、清々しいまでの馬鹿っぷりで、火が点いたら、何事にも全力でぶつかっていける面だけは羨ましい気がします。ここまでの情熱を兼ね備えた人物は、なかなかお目にかかれないように思います。
物語の冒頭部分では、主人公の剛田に圧巻されてしまう感じが否めません。圧巻されてしまう理由として、現実とかけ離れている印象が強いと感じてしまう為です。冒頭でも記載したように、現実社会では居ない人物像なので、現実感というものがないのです。そして、主人公、剛田の勢いの良さも加えられ、リアルに感じられない部分に違和感を覚えてしまいます。
ただ、アニメを観た後に思ったことは、剛田のキャラクター性はこれで正解だったと、素直に思いました。剛田自身のキャラクター性が、このアニメ作品における大きな特徴になっていると捉えられます。
こんな人物になりたい、とは思えません。しかし、剛田というキャラクター性から学ぶことができる部分も多いのではないでしょうか。特訓とは人知れず行うもの、という剛田自身の言葉はとてもカッコ良いです。また、好きな子と接点を持つために、水泳部に入部して、水泳経験ゼロから勉強する点においても一生懸命さが伝わってきます。馬鹿だと思いますが、馬鹿にしてはいけないことも多いです。
ヒロインの存在感
本作のヒロイン、涼宮 茜(すずみや あかね)の内向的な描かれ方も印象的です。本来は、内向的な人物像ではないのでしょう。しかし、過去の出来事から立ち直れないまま、心の傷を引きずっています。
対外的には明るく振る舞っていても、過去の悲しい出来事が蘇えってしまう瞬間があるようです。そして、自分自身の環境の変化を恐れている、という部分も女性らしい価値観のように思います。一般的に、男性は夢を追う生き物、女性は現実を捉える生き物、という表現をされることが多いように思います。この「アカネマニアックス」というアニメ作品においても当てはまり、そういった構図で人物像を描いていることが伺えます。
また、アニメ作品の中で、主人公の剛田の気持ちが茜からブレていないことも良いのではないでしょうか。ヒロインである茜という人物にのみ、焦点が当てられているので、観ていて構図が分かりやすい点は好感がもてます。
ヒロイン、茜の気持ちに注目していれば、ストーリー本筋を見誤ることはありません。登場人物と関係性を複雑化していない、他の要素を潔く排除している点もシンプルで分かりやすい構成だと思います。
作品から伺えるメッセージ性
主人公である剛田の存在がそのまま、作品自体のメッセージ性になっているように思えます。そして、ヒロインの茜に与えた影響はメッセージ性を強調しているように感じます。主人公の剛田、ヒロインの茜、それぞれ正反対のキャラクター性に描かれていました。剛田のキャラクター性は強烈ですが、それすらもメッセージ性を強調させる為に仕掛けられたことだと捉えることもできます。
周囲や環境に捉われない考え方・行動は清々しいほどの馬鹿っぷりに思えますが、初めから無理だと思ったら、気持ちの強さ、行動力は弱くなってしまうのではないでしょうか。その剛田の断固たる気持ちから表れる行動を、ヒロインの茜が目の当りにして、泣いてしまう場面が強調されて描かれていました。
周囲に合わせ同調することが物事の本質ではない、カッコ悪くても良い、初めから結果を決めつけてはいけない、環境の変化を恐れない、という強いメッセージ性が込められているように感じられます。また、剛田の発言に「自分自身を信じること」「自信をもつこと」というものがあり、前述メッセージ性の土台に据えられるものと捉えることができます。
「自分自身が考えて行動した結果なら、どんな結果であっても後悔はしない」
全ては、この言葉に集約されるのではないでしょうか。
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