高校3年生の1年間を丁寧に描く
時間のスピードが1/3に
第1期では全12話(番外編を除く)で高校入学から2年秋の文化祭まで約1年半を描いている。本作2期では全24話(番外編を除く)で高校3年生の春から卒業までの約1年間を描いている。時間の経ち方は1/3のスピードになっていることになる。これによって軽音部関連の話題以外を取り上げる場面が増え、作品がより魅力的なものになっている。
クラスメイトとのからみ
第1期では軽音部についてを描くだけでいっぱいいっぱいだったが、本作第2期ではクラスメイトが描かれる場面が圧倒的に増えた。軽音部とのからみもあるほか、卒業生や下級生も登場し、澪のファンクラブイベントが開かれる話もあるなど、ストーリーの幅が広がっている。また、クラスの描写、軽音部のクラスでの様子が描かれることで、クラスの雰囲気の良さやクラスメイトとの仲の良さが伝わってくる。このことが文化祭でのエピソード、卒業前のエピソードにつながっていくのである。
学校生活の中でのストーリーも
ストーリーの幅ということで言えば学校生活上のストーリーも増えた。修学旅行、梅雨の時期、夏のクーラー事件、マラソン大会など。日常生活の話を描くことで、登場人物がより身近な存在に思えてきて、親近感が涌くのである。また、3年生ということで終盤には進路や卒業に関係する話が出てきて、ファンの心を揺さぶっていくのである。
2年生トリオもしっかり描かれる
原作では、のちに“わかばガールズ”を結成することになる2年生組、梓、憂、純についても描かれる場面が増えた。2年生組がほぼ主役の回も登場した。これによって特に純の登場場面が増え、基本はわがままだが本当は優しい彼女の魅力がよりはっきりと伝わってくるものになっている。
文化祭ライブ
文化祭のライブでは、顧問のさわ子先生の提案でお客にもおそろいのTシャツが配られた。これを配っていたのは3年2組のクラスメイトだった。また、ライブを先頭に立って盛り上げてくれていたのもクラスメイトだった。“放課後ティータイム”はすでに伝説になりつつあって、学校中の人気バンドになっていたこともあるが、クラスメイトの活躍によりさらに盛り上がったということは間違いない。先述したとおり、2期に入ってクラスメイトとの関係がしっかり描かれているからこそ、文化祭でのクラスメイトの活躍が光るのであろう。それがあったからこそ、ライブは考えていた以上に大成功になり、終了後の5人のあの涙につながったのであろう。こういう流れがあるからこそ、我々もより強く心を動かされるのである。
卒業
「卒業、しないでよ」という梓の言葉がある。これは、梓だけでなく、当時すべてのけいおんファンが思っていたことではないだろうか。これほど卒業してほしくないと思わせる作品も珍しい。もちろん、“放課後ティータイム”の話をもっともっと見たいという意味である。2クール、半年かけて最後の1年を丁寧に描いた結果であろう。
3期の実現性を探る
第3期を希望しているファンはたくさんいる。ここではその実現性について探る。まず、3期の話を進めるうえで主役級になる声優さんの中に事実上引退していると思われる方がいらっしゃるため、声優交代になることは必至であり、この点が一つネックになっていると思われる。特にそのキャラのファンがどのように感じるかが憂慮される。ただ、一番大きな要素は第3期があっても、それはもはや“放課後ティータイム”ではないということである。大学編をするにしても梓はいないし、そもそも“放課後”でもないわけである。高校に残った2年生組の様子をアニメ化するにしても、メイン4人がいないのはさびしい。そこで考えられる案が折衷案。つまり、例えばAパートでは大学編を、Bパートでは高校(2年生)編をやる、というものである。しかしこれでも梓と大学生4人組とのからみはないわけであって、本作のキモの一つだった、唯と梓のからみがないというのは、やはり物足りなく感じることであろう。もう一つ考えられるパターンとしては、思い出形式。アニメではあまり触れられていない2年生での出来事や、1年生の梓が登場していない時期のエピソードについて、アルバムを見ながら思い出すという形式で紹介していくという方法である。これならば今までの“放課後ティータイム”の魅力をそのままに新作ができる、というわけである。この形式は「水色時代」という作品でも行われた形式である。「水色時代」では、3クールでお話としては完結したが、好評を得たという理由で8話追加され、「思い出アルバム」という形式で本編では語られなかった裏エピソードが制作された。本編の進行の裏でこんなことが起きていたんだというとても興味深い内容になっていた。本作においても、ファンとしては新しいお話の中で唯たちが動き回る姿を1話でも多く見たいと思っているだろう。第3期、期待したい。
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