”反町隆史”ー鬼塚(GTO)と広海(ビーチボーイズ)
元暴走族総長が教師に
日常的にあり得ないような展開をみせる作品は良く存在する。この学園ドラマもそうだ。元暴走族総長が高校の教師になれるのだろうか。知識も豊富ではないだろう、みんなが勉強している間彼らはバイクの音を立てて走り回っているのだ。それとも鬼塚はそれなりに勉強していたというのだろうか。
鬼塚がテストを受ける回がある。目的の点数を取らないと教師を辞めさせられてしまうという回だ。必死に勉強を積み重ねてテストを受けていたが、やはり教師になれるほどの知識があるとは思えないのだ。ドラマの中の話だからその辺りは配慮するとして、鬼塚の魅力的な所は”自分を持っている”ということだ。恥じることなくありのままの自分を信じている。その姿は生徒には真っ直ぐ伝わる。同僚の教師や生徒の親には伝わらないかもしれないがそろでいいのだ。学校は生徒を教育、指導する所だからだ。外見が茶髪でも生徒としっかりとした絆が生まれお互いが信頼し合えるのならそれが教育へと繋がっていくのだ。
俳優小栗旬を創り上げた作品
この作品で注目すべき出演者は、まだ幼さを感じさせる”小栗旬”だ。全く知らなかったイジメをテーマにした回で彼はいじめられ役を演じていた。体中がアザだらけになってしまった彼は現代の教育現場でのイジメ問題を非常に上手く表現していた。この作品を経て小栗旬は徐々に活躍していき今では日本の大人気俳優となっている。その事実がこの作品の良さを物語っているかのようだ。彼の体の張った演技により現在いじめに関わっている人へ強いメッセージにもなっただろう。
”ビーチボーイズ”と”GTO”の比較
反町隆史は後にこのドラマで共演した松嶋菜々子と結婚する。鬼塚のような人間が側にいたら女性はおそらく惹かれるだろう。彼が過去に出演していた”ビーチボーイズ”では今回とタイプの似ている男性を演じたように感じる。外見や話し方が軽い感じは良く似ていてまるで兄弟のようにも見え少し不思議な感覚に陥った。鬼塚を見た時そんな風に感じた。鬼塚は兄で懸命に教師として働いている。時には大人の反感を得るが自分の信じた道をとまることはない。広海は兄の血をひき少し悪そうな印象を受けるが実際は友人想いで非常に優しい弟だ。友人のために東京まで駆けつけたり、学校まで押し掛け必死に応援もする。まるで小学生のように無邪気でやんちゃな印象を持つ広海。そんな彼の周りにはいつも笑顔が溢れるている。何をするにも友人のためならためらわない。友人が落ち込んでいれば、精一杯の笑みを浮かべて海に飛び込む。広海にとって海は鬼塚も生徒のためなら周囲の目など関係なく、助けたい生徒のことを一番に考えてあげられる優しく頼もしい性格だ。鬼塚と広海、もし兄弟だったら最強の兄弟だ。大袈裟に言えば彼らのような兄弟が世界を救うのではないだろうか。まるでスーパーヒーローのように言ってしまったが一番分かりやすいのではないだろうか。全く違うストーリーだが反町隆史が演じた鬼塚と広海はどこかで繋がっているような気がしてならないのだ。二人の間に何も関係がないなんて思えない。鬼塚は教育社会を舞台にし生徒に指導し大人に対しても自分の考えを示し少しづつ理解を得ていく。広海は自然に囲まれたのどかな風景の中で人と人との関係を結びつけていく。どちらも反町隆史が人と人との関係を作っていくのである。
反町隆史が演じた二人の男
例えば鬼塚と広海が兄弟とする。二人の周りの人々はきっと笑顔で過ごすだろう。それは彼らの力であり、反町隆史が二人を演じ切ったという証になる。二人が全く似ている訳ではなく、それぞれの良さを意識しているのだ。
もし作品の中で鬼塚と広海の二人だけが入れ替わってしまったらどうだろう。頭でイメージしてみるが作品自体が成り立ってしまうような気がするのは私だけだろうか。だからと言って反町隆史の演技の幅が狭いなどということを言いたい訳ではない。彼は鬼塚と広海をそれぞれ上手く表現し演じている。それを踏まえた上で彼らが入れ替わった場合を想定してみると実に面白いことが起きる。もしかしたらそれぞれ上手く相手に成りきりストーリーが展開していくように感じるのだ。周囲の人は彼らを少しいつもと違う様に感じるかもしれないが、あえてそこには触れずにお互いが反町隆史の鬼塚と広海を受け入れる、そんな風に思う。なんとも不思議な光景だがあり得そうな情景が私は頭に浮かんで離れないのだ。鬼塚が広い海で笑顔で泳ぐ姿、広海が教壇に立ち生徒に向かって笑顔を見せている姿が浮かんでくる。
一人の俳優が演じた二人の男は、ストーリーを超えて自然に結びついた。そんな不思議な現象が起きた反町隆史の演技に驚きを感じたのだ。”ビーチボーイズ”と”GTO”、ただ反町隆史が主演を務めた二つの作品が、鬼塚と広海によって結びついた瞬間を私ははっきり目にした様な気分になった。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)