男子厨房に入るべし - クッキングパパの感想

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クッキングパパ

4.504.50
画力
4.50
ストーリー
4.25
キャラクター
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設定
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演出
4.25
感想数
2
読んだ人
2

男子厨房に入るべし

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
3.5

目次

お料理漫画の金字塔

単行本現在堂々136巻。いや~、実は背の高い本棚ほぼ半分が、クッキングパパの背表紙でまっ赤っ赤なんですよ(^_^) バブル期たけなわだった1980年代半ばからの作品ですからね。ネット普及前、情報発信は紙媒体が主流の時代で、お料理レシピ本としてもよく活用していました。時代が変わったなぁ。

連載開始から実に30年を超え、登場人物も年齢を重ねましたが、作中では現実世界より三分の一程の速度で、ゆっくりと時間が動いているようです。連載当初は小学生だった荒岩さんちのまこと君も大学生。爽やかイケメンに育って成人式も済ませていましたね。ダイヤル黒電話もスマホ携帯に取って代わられました。さりげなく時代を反映させる手法がとても巧みで、いつの間にやらPCも自然に作品に入り込んでいますよ。こら田中っ、勤務中にゲームしてんじゃないっ(^_^#)

主人公は博多の流通商社に勤務するサラリーマン。見た目硬派の荒岩一味さんは、ゴツくて寡黙でコワモテですが、包丁握らせたらスゴいんです。仕事はバリバリ、家庭では妻と子供に毎日おいしいご飯を作る、優しくて頼もしい理想のお父さん。典型的な日本の中流家庭・荒岩家と、それを取り巻く人々が調理するという形で、家庭料理に本格高級料理、スイーツから創作料理まで、実に膨大なレシピが登場しました。

掲載料理はあらかじめ、著者のうえやまとち氏とスタッフによって調理・撮影されますが、よせばいいのに実験的にミスマッチ食材も試されるもんだから、時折とんでもないものを作ってしまうのがまたユニークです。そう言えば某有名お料理番組に出演された時は、ワサビで明太子を作っておられたような記憶が……(-_-;)

お料理はITの海を越えて

今現在、お料理男子は珍しくありませんし、それをアピールする芸能人も多いですね。日本人は異様なほどに健康志向が高いらしく、むしろ全く料理出来ない(やらない?)人の方が珍しい。インターネットが一般化すると、個人ブログやお料理サイトには様々なレシピが掲載され、もはや料理本無しでも、毎日違うレシピを食卓に乗せるのが可能な時代になりました。

しかしこの作品では、そんな便利ツールを利用する場面は見かけません。誰か作中人物のレシピか、または工夫料理であったり、郷土料理のこともあれば、本来ならご家庭では不可能な豪華料理まで作ってしまいます。仰天したのは本格フレンチの、原価一杯2000円という濃厚コンソメスープ! そんなの牛肉どっかから塊で貰わん限り出来んわ~い!いや貰っても無理かも(;^ω^)うえやまさん経費落とししてんのかしら?

そうそう、この作品の初期のレシピ「おにぎらず」は、レシピサイトにも掲載されているんですよね。うーむ、知名度も影響力もハンパないですねぇ。しかもおにぎらず専用の、大きめの味付焼き海苔も、一般メーカーによってスーパーで販売されていたんですねぇ…スゴい。家庭料理として一般認可されたってことですよね、これって! 1、2度作ったことありますが、本当にラクチンです。

いや~漫画を描いたり料理人にならなくとも、一般人が自分のレシピをどんどん紹介出来る世の中になっちゃったんですねぇ(^_^;)しかしそんな世情に流されることなく、クッキングパパはマイペースです。しかもどうやら逆に、作品のレシピがどんどんwebユーザーによって改造?されつつ、現在進行形でサイトを賑わしているようです。はい、むしろこの作品は、取り残されるどころか牽引して行ってる立場なんですね。

だって本当に扱うレシピに死角なし。一時期、同じ掲載誌で体裁の違うグルメ漫画が連載されていた頃のことですが、常にクッキングパパに先行される形であったようで、作家さんは白旗揚げておられましたよ、そう言えば(-_-;)

荒岩まことの将来は?

ほぼ穴を空けることなく30年余りの連載をこなす中、うえやま氏はいくつか他の作品も発表されているのですが、やはりこの作品が主軸であるために、どうやら腰を据えてライフワークとされているようです。そこで個人的に気になるのが、やはり作品の中心となる荒岩家の今後のこと。それも連載開始時には小学生だった長男・まことの将来ですよ。いやいや下世話だとは分かってるんですがね、だって現在作中では大学生、ぼちぼち将来を考えないとならない時期になっちゃってるんですよ。あの小さかったまこと君がっ(近所のおばちゃん口調)。

作中で経過した十数年の内に、荒岩家には長女・みゆきが誕生し、お婆ちゃんは再婚し、荒岩一味の部下は田中をはじめ、数名が所帯持ちになりました。おめでたい話ばかりでもなく、別れた恋人たちや、近しい人との死別なども描かれます。なんだか他人の人生を覗いているようでもありますが、基本クッキングパパ世界は安定しており、読者は何も出来ない神様の視点で見守っている状態なんですよね。

さて、親元を離れて沖縄の大学に在学中のまことは、どんな未来を築くのでしょうか? それより何より、地味にモテる好青年に育った彼が、長年の付き合いのさなえちゃんを、セオリー通り一生の連れ合いに選ぶのか、それともまさかのダークホース、バイト先のあゆみちゃんが急接近するのか、ぶっちゃけ非常に下世話に気になってるんですよ、やらしいとか言わないで放っといて下さい!(-`ω-)

そういう訳で、我が家の本棚には、真っ赤な背表紙が増え続けることは確定事項なのでした。

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