パワーがある漫画は現実世界にも力をくれる - ペンギン革命の感想

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ペンギン革命

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
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パワーがある漫画は現実世界にも力をくれる

3.53.5
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
3.0

目次

タフな精神力、家庭環境が影響

藤丸ゆかりのお父さんの仕事が成功している様子がよくわかる。西洋式のとても高そうな家具に囲まれて過ごしています。ドアのステンドグラス、名門進学校というだけでどれだけお金がかかっているのだろう。お父さんは、寂しがり屋、仕事疲れて帰るときに酔って電話してくる相手が娘です。お母さんにも逃げられ、それでも当たりはずれの大きな仕事をしたがるというのは、人生自体がギャンブルです。確実な方法よりも好きなことをして、好きな仕事をして過ごしたいのかもしれないです。それでも何回もそんな目にあっているということは、何度も仕事を今回は当たるといいながら、いろいろな仕事をしているということです。それは、相当なスキルがないと、パワーもないとできないことです。すごいお父さんだなと思いました。成功しているときは、寄ってくる女性もいるかもしれないけど、ダメなときは速攻捨てられるタイプの人だなと思いました。それが何度もあり、本当にそれを許して側にいるのは、娘だけなんだろうなと想像してしまいました。

ゆかりのきちんとしたところは、お母さんが出ていってから培われたものかもしれません。家事をお母さんに変わってこなさなければならない日々。逃げ出したいときもあったと思います。でも、それが彼女のタフな精神力に繋がっている。ピーコックのマネジャーになるには、必要な条件が揃っていて採用された結果なのかなと思いました。それにしてもピーコックの試験難しすぎです。社長も女の子だと思っていない。慈善事業ではないときっぱりと言っています。男性だろうが女性だろうが、実力社会なのだなと男女平等な世界をみたような気がしました。最初の仕事が熱々バスタブ、しかもマネジャーとして入らないといけない。1秒1秒が長いはずなのに宣伝のために必死になって浸かっている。その姿には根性を感じます。

ゆかりのお母さんは、どこかやさしくて弱かったのかもしれません。娘を置いて出ていくということは、相当のことです。娘はどこまでも父親思いで、一緒に出ようと言っても父親のことを心配して出ない。どこか限界だったのかなと思います。仕事が成功している間に出ていってしまう。この仕事がうまくいっているうちはいいけど、家がなくなるほどの生活と豊かな生活の繰り返しは、彼女の精神力を少しずつ奪い取っていったと考えていいでしょう。ゆかりのようにタフになれなかった。精神力がもたなかったのかもしれないです。

涼に惹かれたのは偶然ではなかった

引っ越しそばをカップ麺で、でも気持ちがすごくうれしいですね。引っ越しをしてきたことを喜んでくれているのがこの場面でわかります。何も思わなければ、このシーンはなかった。だけど、この少しのシーンを描くことによって、涼の温かさがすごく伝わってきます。その笑顔に藤丸もきゅーんとなっています。高校2年生というと、骨格がまだ完璧でないので、女装してもいけますね。涼の女装姿が美少女っぷりが際立っています。このまま女優としての道をまっしぐらなのかという涼は、笑顔がすごくいい。いつも藤丸と一緒によだれ垂らしてしまいます。

涼は家をなくしたゆかりをマネージャーとして採用試験を受けさせてもらえるように手配してくれました。自分が男だとばれたときは、ピーコックを辞めなければならない。それを知っていて危険な賭けに出た。もし、ゆかりが採用試験に受からない場合は、もしかしたら涼も辞めなければいけなかったかもしれない。そんな可能性も考えずに突っ走る。出たサイコロ勝負のようなところが涼にもあります。だけど、運のよさもその人の人生のうちだと思います。マネージャーを辞めなければいけないシーンで当然家も出ないといけない。涼と一緒に住めない状況で、公園で野宿をしようとするゆかりを汗だくになって探し回ってくれました。さらに帰ろうと手を差し伸べてくれる。大丈夫だと強がっているゆかりがその差し出された手に涙を流しています。夜の公園に一晩泊まりなさいと言われたら泣いてしまうかもしれません。帰る家もなく、寂しさが倍増しているところに帰ろうと言ってくれる存在が現れたら、その人のことを好きになってしまいます。すごい人がマネージャーになってくれるという場面でも、涼は「藤丸オレはお前がいい」と言ってくれる。それはきっと一緒に頑張ってきた仕事に関する評価だと思います。社長に直談判に行って土下座するとき、夜中から明け方まで一緒に涼は土下座してくれる。何もやらないよりも少しの可能性があればそれにかける。そんな涼の姿勢にすごく惹かれるものがあったと思います。

奈良崎さんが初めてほしいと思ったのは藤丸くんだった

奈良崎さんという人はおもしろい存在です。ピーコックの10番目の稼ぎ手なのにマネージャーがつかない人。山に籠ったりする人だから、誰もついていけないのかもしれない。亜来ちゃんのお色気の魅力にもやられたりしません。すり寄られてゴミを取ってもらう。その角度からは、すごい亜来ちゃんの胸が見えるわけですが、きっと胸も当たっているわけですが、動揺もせずにお礼を言う奈良崎さん。きっと奈良崎さんを振り向かせたいなら、お色気よりも武術を身につけるといいのかもしれないです。男性全員が大きな胸がいいと思っていないという構図がおもしろく描けています。藤丸が男のなりをしていて、女だとわかっていないのに藤丸を好きになる。男か女かという前にひとりの人間として、人を好きになる人なのだなと思いました。

よろしくマスターの3巻に夜明け前~奈良崎譲物語~が掲載されています。1日だけ藤丸がマネージャーとしてつく物語なのですが、目の前でおかずをとりわける藤丸を見て「これがほしい」と思っている奈良崎さん。それは突然で彼はもしかしたら、今までそんな感情も持ち合わせていなかったのではないかと思うのです。彼のお兄さんは譲のことを「誰にもなつかないケモノ」だと言っています。12人の兄弟は、みんな母が違う存在。彼は欲しいものがなかったのではないかなと思います。欲しいものが何なのかわからなかった。家は裕福だから、物はある。でも、だからこそ、余計なものをそぎ落としていたい。それが彼を山に向かわせたのかもしれないです。テント暮らしも苦じゃなく逆に楽だと思えるのは、もしかしたら小さい頃からそんな生活をしていたのかなと思います。兄にいじめられたら、テントに籠り、自分を修行する日々。それに誰も手を出せなくなった。その彼が初めて欲しいと思う存在が藤丸だった。最初は藤丸の機敏さに惹かれて、マネージャーに欲しいと思った。藤丸を追っかけているうちに頬にかわいく一本されてしまった。藤丸が涼というタレントを大事にする姿。いろいろな姿を見ているうちに好きになったのかなと思います。これまでにこんなに固執していなかった奈良崎さんだけに好きになったら一直線なのですね。

ピーコックの事務所が解散して、タレントさんも別々の事務所になり、男である必要がなくなったゆかりは女性だと公表します。10年の月日が流れているということは、ゆかり27歳です。奈良崎さんがその間、指をくわえてみていたわけではなく、毎日のようにゆかりに朝の挨拶がわりの剣をしかけ、「嫁に来ないか」とアプローチしています。10年間アプローチされたら、嫁に行っちゃいそうな感じがします。それでもまだ涼と見た夢の続きをみたいと思っているゆかり。涼が「オレのマネージャーにならないか」という最後のシーンで終わります。きっと楽しい毎日が待っているのだろうなということを予測させて終わりますが、続きが読みたいです。でも、きっとこの物語はこれで終わりです。だけど、続きを読んでみたいと思わせるようなラストです。

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