消化不良が後を引く - ウロボロス~この愛こそ、正義。の感想

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ウロボロス~この愛こそ、正義。

3.503.50
映像
4.00
脚本
3.50
キャスト
3.75
音楽
3.50
演出
3.75
感想数
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観た人
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消化不良が後を引く

3.53.5
映像
4.0
脚本
3.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

ドラマを立たせて歩かせる

漫画が原作でした。「漫画が原作だろうな」とも思わなかったのが意外。いつも気づくのに。

しかも、「漫画で描けばよかったのに」と思ってしまった作品でした。

それだけ、ドラマとして立っていたのだと思います。

原作が漫画だと知ったときは「最近は、こんな凝ったお話の漫画もあるんだ」なんて、

失礼なことを思った次第です。コミックで読むと引き込まれただろうな、と感じる作品でした。

そこは、ちょっとドラマとして歩けてなかったのかもという気がしなくもないです。

段野竜哉(たっちゃん)役の小栗旬がインタビューで答えています。

「マンガは一番いいコマを見せればいいけど、僕らはその過程や動きとか見せていかなきゃ

いけないので、人間関係を見せていくためには、ドラマならではの余計なシーンを

見せていかないといけないから、そういうところを楽しんでもらいたいですね。」

んー、なるほど。そういうことであれば、むしろコマ割りがパキパキあったほうが良かった。

だって、この作品はコマの部分がかっこよく撮れていたドラマだと思うので。刺青が見えたり、

イクオとたっちゃんが店で落ち合って話す場面なんて、コマ割りの工夫が効いていて

そういうのが良かったような。漫画だと、間延びしなかったんだろうな、と思います。

小栗さんの言う「過程や動き」には、いまいちピンときませんでした。

小栗さんの成功シーンはムロツヨシ(部下役の深野武)さんとのからみの場面じゃないでしょうか。

なんだかムロさんに注目してしまって、きりっとした姿さえ、コントみたいに見えましたが、

それが、すごく良かったなと感じます。二人のからみは、いつも楽しみなシーンでした。

意図してコントチックになったのかな。オムライスを食べるシーンなど、小栗さんと

ムロさんが意図して作った画面(絵)だったのか、偶然、(しかも私だけかもしれませんし)

そう見えたのか、謎です。小栗さんは上のインタビューの続きで

「原作の持ついい部分をひっぱらせてもらいつつ新しいチャレンジをしていけたらなと

思っています。」と話しています。新しいチャレンジの一つだったのかもしれません…?

俳優陣について

イクオ役には生田斗真さんがきれいに収まっていました。「イクオ」は、あまり役者に嚙みつかない

キャラクターだと思うので、役作りしやすかったかもしれません。生田さんは、やって欲しいと思われ

る役(イケメン役というか…光源氏とかしてましたし)がある人みたいなので、今作のイクオ役には、

自分から入れたのかな、という風に見えて、それが良かったです。

たっちゃんの役が小栗旬で良かったのか、ちょっと微妙な気がしまして、小栗旬さんは

悩み深い役は向いていても、闇深い役は向0かないんじゃないかと。どうしても素の

小栗旬さんの太陽みたいな、「ぱかっ」と「からっ」とした部分が隠せないんですよね。

男のかっこよさを出したかったのだと思いますが、「男のかっこよさ」も種類が豊富だからなぁと

感じます。違う人が演じると、違うドラマになるんでしょうけど、それでいいのかも分かりません。

その点、ハマり役だったのが上野樹里さん(刑事役 日比野美月)ではないでしょうか。

このドラマの少し前に、TBSの金曜ドラマ「アリスの棘」のイメージもありますが、

ちょい暗めの役が天然キャラ(ほぼ「のだめ」のことですけど)より印象がよいです。

顔というか、体型に合っている!と思うのですが、どうでしょうか。なんというのか、

ちょっと「ずうん」としたものを持っているなと思います。(体重が重そうというのではないです)

その上野さん扮する刑事、日比野のお弁当が、印象深くて好きでした。

地味だけど堅実な内容のお弁当。そのまま日比野の人柄を映しているようで素敵です。

お弁当の中身がこんなに映されるドラマもあまりないかなと思います。

上野さんに比べて共演の広末涼子さんは、はかない感じですね。

なので「結子先生」役、良かったです。ちょっと美人すぎる気もしましたが。

原作とドラマの運命

そんなことで、原作は絵も綺麗(うまい)で、生身の人間が漫画のキャラクターに

近づいていくのは難しかったと思います。ハマり役を探しにくかったのではないでしょうか。

「人」が演じる限り、ドラマはドラマとして作品世界を確立せざるを得なくなる。

その壁が、ドラマ化の面白さで、見どころだと思います。コアな原作ファンには別物に

感じられたのかなあ、どうかな、と気になるところです。小説が原作の場合には案外

すんなりいくところが(視覚的要素が少ないので)、漫画原作の場合は壁が増えたりします。

逆もあるでしょうけれど。原作が別の媒体で出ている作品は、ドラマで見たいものもあれば

「ドラマは良くなかった」なんて言われてしまう運命のものもありますね。

仕方ないので、私は、あんまり気にしないでドラマ制作にチャレンジしてほしいです。

熱狂的に大好きな原作のものでも、私は大丈夫です。

今作の原作者「神崎裕也」さんもこんな風におっしゃっています。

「今はもうホントにたくさん漫画がありまして、作品を知ってもらうこと自体とても大変な

ことなので、ドラマ化がそのきっかけになってもらえれば幸いです。」

ファン自身も、他の媒体を通して、新しく気づくこともありまよね。

ハッピーエンドなのか

最後は謎が解けて、見てきた甲斐があったような気がしましたが、人間ドラマとしては

主役の二人が死ぬという、がっかりな終わり方でした。好みの問題だと思いますが。

この二人にとって、なんにも良いことがないじゃないか、という不満が残りました。

多分、ドラマだけでは伝わり方が不十分だったのかもしれません。二人が、これで良しとした

理由のようなものが、消化不良。じゃあ、原作だったら伝わったのか、お話自体が

つまらなかったのか、どうなんでしょう。ラストを見た時に、「漫画にすればよかったのに」と

思ったので、ドラマ作品として消化不良だったんだという気がします。ぱらぱらとページを

めくって全部見返したいような気がしました。(この作業、映像作品の苦手分野です)

1話完結のドラマではなかったので、最後がどうなるのかを期待して見ていたせいもあります。

それだけ時間をかけたのにな…という物理的ながっかり感もあいまって…ここまで見てよかった

という達成感には少し欠けていました。

じゃあ、どうなって欲しかったのか、というと、単純に生きていてほしかったな、ということに

尽きるのかもしれません。物語なので、死んだっていいんだけど、死んでしまって切ない、という

「切ない感動」が沸かなかったなあ。悲しすぎて、がっかりしちゃって、感動しなかった。

え、死んじゃうの、それでいいの?と。これでは、復讐が目的だけで人生が終わってしまう。

自分の関わっている人たちを悲しませてしまう、結子先生の遺言の意味がなくなってしまう、

なんなら復讐が果たせたとも言い難い、この二人は何を生んで何を残したのだろう。

どうにも自己満足に見えてしまったんですね。

ラストシーンは、ここまでの過程に応えていたのかなあと。

あと、誰か助けてあげてよ!と思いました。二人は二人で最後を迎えたられたのが、良かったのか。

どちらかがどちらかを救っても良かったような気がします。子供の時から報われない人たちが、

死で安心するのが悲しかったです。誰かそばにいてあげて欲しかったです。結子先生だけじゃ

悲しすぎるなと。ただ、入り込めた人には、その人の感性や美学の琴線に触れる作品だったと

思います。特に最終話には、そんな力はありました。

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切ないラスト

小さい頃から親がいなくて施設で育てられた2人が、自分たちを育ててくれた親代わりの広末涼子さんを殺した犯人を捜すって話なので、サスペンスのような話なのかなと思ったらすごい真顔で小栗くんが面白いことを言うのが面白くて。生田くんとの2人のシーンでは真剣な話とかが多いんですけれど、私は小栗くんの仕事しているシーンが好きでした!警察の人とかもたくさん出てくるんですが、どの人が良い人でどの人が悪い人なのかわからなくてずっと疑い続けてました(笑)1番ないなーって思っていた女の刑事さんが絡んでいたっていうのに驚きました。あと、生田くんの殺人的な気持ちを嗅覚で感じとる上野樹里ちゃんもすごいなと思いました!でも嗅覚でなんでも感じとられるとたまったもんじゃないなとも思いましたけど(笑)みんなどこかで繋がっていて、綾野剛くんの役も結構良くて。シュッとした顔して誰からも覚えてもらえてなかったり、カツラを被っててカツ...この感想を読む

3.53.5
  • ねこ娘ねこ娘
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