歴史ものというより、壮大な純愛ドラマ - 大奥~誕生[有功・家光篇]の感想

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大奥~誕生[有功・家光篇]

4.504.50
映像
4.00
脚本
4.50
キャスト
4.50
音楽
4.50
演出
4.50
感想数
1
観た人
2

歴史ものというより、壮大な純愛ドラマ

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

目次

直球の純愛ドラマ

このドラマ、見どころはたくさんあって

とても大好きなドラマだったんだけど、

私が一番好きだった理由は、

個人の自由がほとんど見いだせない環境の中で、 

心から愛する人と想いが通じ合い、

限られた時間の中だけであっても

心も体も睦み合うことができた奇跡 。

これが描かれていたからだった。 

大奥シリーズにもいろいろあるけど、

これは、直球の純愛ドラマ、だと思う。 

きっと、みんな、

魂のどこかで共有している遠い記憶なのかもしれないけど、

私自身も 

そういう制限ある時代と環境の中で、

想い合う人と添い遂げられない

想いを伝えることすら赦されない

そんな悲恋の記憶の感覚が、

子供のころからなぜかとても生々しくあって、

だからなのか、

多部未華子さん演じる「上様(家光)」と

堺雅人さん演じる「万里小路有功(お万の方)」が

想いを遂げ合って愛し合う、そのお互いの悦びが、

まるで自分ごとのように嬉しくて報われた気がしてた。

でも、個人より国家、という 時代と徳川家の事情によって 

二人は引き離されてしまう。

世継ぎを設けるために、

自分以外の側室と上様が夜を過ごす、その初めての夜、

あれだけ冷静沈着だった有功が、己の猛り狂う嫉妬と悲しみで、

部屋の壁という壁、ふすまというふすまを 

刀でずたずたに切り裂いてしまう・・・

そして、その苦しさ、辛さを、

腹の底から上様に泣きながら訴えるシーン・・・

堺雅人さん演じる有功の、上様を想う愛の、

激しさ、深さ、大きさ、真剣さ、ひたむきさ・・・

魂が震えるような愛の姿がそこにあって・・・

でも・・・

身体の睦み合いは叶わずとも、

お互いに愛し合う心は変わらずにいつも二人の間に流れていて

魂と魂が、深く、深く、結びついていて・・・

やがて、上様は、有功が見守る中で静かに息を引き取ってゆく。。

愛する人に見守られながら

愛する人を見守りながら

永遠の愛を誓い合いながら

旅立ってゆけるなんて、

見送ってゆけるなんて、

こんな幸せなことがあるかなあ、と。

本当に、涙なしでは見られなかった。

いままで見た好きな純愛ドラマをあげろと言われたら、

間違いなく迷わずエントリーするであろう、

私にとってはそんな作品でした。

男女逆転の設定で見る「女性」と「性」

大奥シリーズは過去にもたくさん放映されたが

これは、上様が女性で、大奥で働くのはすべて男性、という

男女逆転の設定による物語。

史実の大奥は、男の上様と大勢の女性の側室がいて、

大奥に住む女性たちにとって、

上様の子を宿すことができるかどうかが、

自分自身の生き抜く道、ともいえる。

その、上様と大奥の関係性は、この作品も変わらないのだけど、

男女が逆になった場合の感じ方が、とても新鮮だった。

ぶっちゃけ、「大奥」の中心的なテーマって、

「性」に直結したハナシだと思うんだ。

女性にとって男性に身体を開く、ということは、

すごく繊細だし、本来決して簡単なことじゃない。

けど、こういう、個人の自由が許されない時代、特に

戦国時代の武家に生まれた女性たちは

家の道具として好きでもない相手に嫁ぎ、

世継ぎを設けるために

好きでもない男性に身体を開かなければならない。

そういう物語や史実には日ごろ触れる機会があるから

ある意味、その立場の辛さはなじみがあるのだけど、 

この作品は、上様が女性、側室が男性、なわけだ。

でも、関係性が男女逆転していたとしても

男女そのものの性質は変わらない。

私は女性だから、女性としての感覚で このドラマを見た時、 

今までとはまた一味違った感覚の、

受け身ならではの女性の痛み、辛さを感じた。

国の最高権力者であるにも関わらず

国の大義のために 、夜な夜な好きでもない男に身体を開き 

子作りに励むのだ。

これ、側室より、辛いんじゃないかと思った。

側室だったら少なくとも相手は一人だもの。

私個人の感覚なのか、女性というもの自体の感覚なのか、

ちょっと定かではないけど、

私は「女性」である自分を本当に大切に感じたとき、

複数の男性を同時に体内に入れる、ということに

とても違和感を感じてしまう。

生涯で相手は複数にわたることはあっても、

同時進行で複数の異性と肉体的に交わる、ということが

モラルとか理性とかじゃなくて、

もっと本能的に、なんか違和感を感じるのだ。

だって、そもそも卵子って、基本的に排卵されるのはひとつ。

そして、卵子にとってみれば、受精できる精子もひとつだけ。

卵子の気持ちになってみると、よりスムーズに受精したかったら

違う精子がいっぱい自分のまわりにいたら・・・困ると思うんだよね。

だから、そういう意味においては、

側室が女性の方が、身体的な性の痛みは

最小限で済むような気がして・・・

まあ、いずれにしても、

子作りの道具のためだけに性の営みを強要されるのは、

男であっても女であっても、

大前提として、魂は深く傷つくと思うけども。。

そんな過酷な時代を生き抜いてきた先人たちが

いたことを想うと・・・

改めて、今ある自分自身の身を、大切にしたいなと思う。

フィクションとノンフィクションの融合

男女逆転の発想そのものが、とても斬新だけど、

なぜそのような大奥が生まれたのか、という背景も、

一応フィクションであるのだけど、

実際の史実を上手く採用しながら物語としても成立させていて、 

歴史ものとして違和感のない描き方がとても面白かった。

特に、歴史上ポピュラーな時代や人物などは

過去にも散々いろんな媒体で演じられているから、

だからこそ、

「この人物は、誰が演じるんだろう?」とか

「このエピソードはどんなふうに描かれるんだろう?」とか

そういうものを他の作品や演者などと比較しながら楽しむのも

こういう歴史ものの見どころのひとつ、

とも言えるんじゃないかと思うんだけども、

そういう意味でもすごく楽しめた作品だったと思う。

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