ギレルモ×J.A.バヨナが魅せる、現実。ゆえに恐怖。 - 永遠のこどもたちの感想

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ギレルモ×J.A.バヨナが魅せる、現実。ゆえに恐怖。

4.04.0
映像
4.0
脚本
3.0
キャスト
3.5
音楽
4.0
演出
4.5

目次

鬼才ギレルモのセンスが光る良質な映画。だけど…

ギレルモ監督といえば、「パンズラビリンス」を筆頭に幻想的ともとれるホラー映画を手掛けている。今回はそのギレルモ氏をプロデューサーとして迎え、J,A,バヨナ氏が初の映画監督を務めた作品。(わたし自身はギレルモ監督の大ファンなのですが、バヨナ氏はごめんなさいご存知ありませんでした)本作を知り、観るに至った経緯もギレルモ氏が関与しているからであって…以下略。

ざっくりとした紹介なのですが、今作の邦題が「永遠のこどもたち」 元が「El Orfanato」、英題で「The Orphanage」

直訳すると「孤児院」…ちなみに日本でのキャッチフレーズは、「愛を信じたら、本当の光が見える」で、公式サイトでは「『シックス・センス』以来の衝撃と感動!運命を信じる人に贈る本格スピリチュアル映画」と謳っております。なるほど。

あえてここで言いますが、もう詐欺ってレベルじゃない。キャッチコピーを信じた純粋な視聴者さんに謝るべき。

間違っても彼女とデートで見る映画ではない。そして少し辛口になりますよ、と前置き。

「何もなかった」、現実以外には。

この映画の主人公はラウラという女性。そしてラウラには愛する夫、養子ではあるが何よりも大切な一人の息子がいた。

息子のシモンはいわゆるイマジナリーフレンドとよく遊ぶ子で、不可思議なことや少しばかり物騒なことを口にするためラウラは気にかけていた…がその矢先、シモンが忽然と姿を消してしまう。

警察の捜査も空しく半年もの時間がたち、精神的にも肉体的にも疲弊していくラウラ。追い打ちをかけるように、身の回りで超常現象的な出来事が頻発。ポルターガイスト大暴れ。

「シモンが言っていた空想の友達が、シモンを連れ去ってしまったんだわ…!」

ヒステリックな思い込みでそう確信したラウラは(ここでまさかの)霊媒師に相談し、以前この家で起こった凄惨な事件を知り、殺された子どもたちを救うべく奔走しテーブルを整えご飯を作り…たどり着いた自宅の地下室で、やっと愛する息子と再会することができた。お察しの通り、シモンは既に息絶えていたのだが。

シモンの亡骸を抱き、「自分の過ち」に気づいたラウラは服毒自殺。シモンに会いたい、と一心に願いながら息絶えた彼女。直後、優しい光に包まれ死んだはずのシモンが目を覚ます。そして殺されたはずの幼馴染達次々と現れラウラを招く、「ここで永遠に一緒にいよう」と、そんな風に。ラウラは一切の迷いなく、彼らと共に永遠の世界に身を委ねたのであった…

一言でいえば「妄想の激化とヒステリー」が招いた事態なんですよね。ここに「現実」以外は存在していない。

シモンは一人で地下室に入った際に階段が崩れて転落し、出られなくなっただけ。「地下室から不気味な音がする!」と地下室のドアを厳重に施錠したラウラ、その時に思い切って地下室を確認すればまだ生きていたシモンを保護することが出来たはず(もしかしたら手遅れだった可能性もあるけれど)

そして何よりも不憫なのは、子どもを自分たちの過ちで死なせてしまった上に妻が自殺したその家に1人残された夫。

劇中でもさほど存在感がない(ごめんなさい)が、ラストだけは本当に心が惹かれた。

あの悲しみにも慈愛にも満ちた笑みは、妻の自殺を受け入れたもの…なんだろう。忽然と姿を消した息子より、傍で疲弊していく妻を愛していたのは明白だった。けれどラウラはその命を絶ってでも「母親でいたかった」のである。その意思を汲み、彼女の最後の判断を笑顔で受け入れたのではないか。

しかしね。「服毒自殺した上で、迷わず息子たちがいる未知の永遠へと身を委ねる」ほどの愛と覚悟があったなら、生前からシモンにもっと向き合うべきだった。同じ目線で語りかけてあげるべきだった。あと旦那もう少し頑張れ。

ラウラが旅立ったネバーランドは、一切の苦痛から解放された穏やかな永遠なのだろうか。それとも、子どもたちを救えなかった悲しみや後悔を抱き続けねばならない永遠の懺悔なのだろうか。

本当に救われたのは、最後まで生きた人だけかもしれない。

他の追随を許さない、独創性あふれる世界観。

全体の雰囲気は素晴らしい。ハリウッドでは決して出せない独特な作品カラー、陰鬱さ、映像美がお互いを殺さず上手く調和している。だからヨーロッパ映画は好きだ。

今作も、着眼点…もとい発想、描き方はとても良いと思う。散りばめられた伏線も、合点がいけば気持ちよく、爽快な恐怖も味わえる。けれどやっぱり脚本が粗い。主人公やその登場人物にぐっとのめりこみ、最後までギレルモマジックが解けなければ騙されると思うが、勘のいい人や繰り返し作品を見ている人はきっと「んん?」と首を傾げることも多いはず。

そもそも伏線を回収しきれていないし、ベニグマ夫人の当て馬感がどうにも否めない。他のスリラー映画…例えば公式が名前を挙げている「シックス・センス」や、わたしが近いと感じる「アザーズ」、「エスター」などに比べるとストーリーの不完全燃焼感が否めないので、その点は不親切だと感じた。

しかし全体的に見れば悲哀で美しく、欝々しさを楽しめる方なら見る価値があるだろう。

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ストーリーを簡単に述べると、ある夫婦の息子(養子)シモンは、HIV陽性で、しばしば空想上の友達をつくって遊ぶようになります。ある時、自宅で孤児院の開園パーティーを行うのですが、その際に空想上の友達の1人トマスの部屋にいくと言って聞かないシモンに母親ラウラがキレ、その後シモンは忽然と姿を消します。実はこの空想上の友達とは亡くなった子供たちの霊です。この子供たちは、奇形の子供だったトマスをいじめて殺してしまい、その復讐としてトマスの母親であるベニグナから毒殺されたということが次第に明らかになります。結局トマスが好きな宝探しゲームによって、ラウラはシモンの居場所を知ることになりますが、残念ながらシモンは死体で発見されます。実は、シモンがいた地下室の扉をラウラが偶然にも塞いでしまって死んでしまったのです。ラウラは死んだ子供たちと永遠に一緒にいようと決心し、毒薬を服用したという話です。なかなか複雑な...この感想を読む

3.53.5
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