「予言の紙」は受け取る人を選んだのだろうか?
組曲「ジュピター」
タイムカプセルを埋めるときに、バックミュージックで「木星(ジュピター)」が流れています。これはグスターヴ・ホルストの管弦楽組曲「惑星」の第4曲です。これから起こる出来事が人知を超えた宇宙からの影響を暗示しているかのようです。ギリシャ神話では「ゼウス」が木星の象徴とされています。そのことからも良い印象をうけることが多く、占星術では木星がめぐってくるときは「大きなチャンスが訪れる」とも言われています。しかし「大きなチャンスが訪れるとき」ということは「大きな変化が訪れるとき」でもあります。大きな試練を乗り越えるために、これまでの自分を見つめなおし、まちがった生活・思考を改め生まれ変わるチャンスが訪れている時期でもあるのです。
木星には「人生には意味がある、そしてこの世に存在するものはすべて愛される存在である」というメッセージも込められています。教授が言っていた「未来は確定していて、起こるべくして起こる」「未来はすべて偶然の産物である」という理論にもつながっているメッセージではないでしょうか。この音楽で「予言の紙」に記されている事柄をどうとらえるのか、自分には何ができるのか謙虚に考えることの重要性をほのめかしているかのようです。
「未来は確定していて、起こるべくして起こる」
「決定論」は「未来は確定していて、起こるべくして起こる」という考えです。その言葉の通り「未来は決まっているのです」。ここでいう「未来」とは「予言の紙」のことです。どんなに記載された場所で災害を防ごうとしたところで、そこに記載してある「年・月・日・死亡者数・緯度・経度」は変わらないという考え方で、簡単に言えばその「予言の紙」を信じて被害者になる人を助けたとしても、そこにいた別の人が死ぬだけで死亡者数は変わらないということになります。人災を防いでも、天災がおこるかもしれない、何が起こるかはわからないけど、そこに書いてあるものに関しては変わることはないということです。
過去にはこの理論によって「自分が罪を犯したのは自然の摂理だったのだ」と、主張する犯罪者がいたようですが、ここで決まっているのはあくまでも結果だけなのです。世界の摂理としての結果が決まっているだけで、一個人の未来が決まっているわけではありません。ジョンはこの理論を肯定すると、自分の妻が死ぬことは決まっていたということを認めなくてはいけなくなると思って否定しているようですが、決まっていたのは「愛する人が死んでしまった時のような悲しみを体験する」ということだったのかもしれません。父親との確執の際にその悲しみを体験できていれば、奥さんは死ななかったかもしれないということだと思います。
「未来はすべて偶然の産物である」
宇宙物理学では「すべての物理学的単位群も、すべて自然定数によって築かれている」という考えから、それが少しでも違っていれば地球には生命が存在せず、宇宙も今のようにはなっていないだろうと言われています。では誰がその設定をしたのか、そこを考えると科学者たちは神の存在を肯定しなければならなくなるため、「地球に生命が誕生」したのも、「ビッグバン」も、偶然が重なったものであると定理しなければならなくなったようです。
また「時間の概念」として過去・未来というものはなく、あるのは「今」この瞬間だけだという考えもあります。そのため過去に行くことも、未来に行くこともできません。時間の概念が今しかないのであれば、「未来は・・・」という考え方さえ無意味とするものです。ここには「今」しか生きることができないのだから、何かにとらわれるのではなく今をしっかり見ようというメッセージが含まれています。過去に起こった原因を「どうして」と考えたところで、偶然に起こったことなのであれば考えてもしょうがない、それよりは「この先どうしたらいいか」ということを考えるほうが賢明だということです。
ケイレブが手にした「予言の紙」
それではケイレブが「予言の紙」を手にしたのは「決定」「偶然」どちらだったのでしょう。宇宙物理学教授の子どもが手にしたことで「決定」だったともとれますが、手紙は先生に渡されたものなので「偶然」ともとれます。選ばれたのも手紙を受け取ったからなのか、受け取る前から決まっていたのか不明です。このことからも、「決定」「偶然」どちらが正しいのかを明確には表していません。それは言い換えれば、どちらも正しくどちらも正しくないともとらえることができます。どちらの理論にしても言えることは「今自分ができることを考える」ということだと思います。それが「決定」であっても「偶然」であっても、今現在自分に起こっている出来事は事実として変わりはありません。今の状況で「自分が感じることを感じ、できることをする」。それには過去や未来にとらわれず、自分をしっかり見ることが必要だということなのでしょう。
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