人生の節目に観るべき映画
この映画を最初に観たのは、私がまだ娘の立場だった頃でした。小林聡美演じる母・京子の娘に対する言葉や振る舞いに冷たさを感じ、寂しいような、心細いような、そんな感情が芽生えたのを覚えています。「人と人がいつも一緒にいることだけがいいことか分からないし」と娘に言う京子。娘の私はあなたの身体の中から産みだされてきたというのに、血の繋がりなんて些細なもので、人はみな結局独りで生きて行くものなんだ、と思い知らされたような気持ちになりました。
そして今、自分が母となりもう一度この映画観ると、京子の気持ちが分かり始めた自分がいることに気付かされました。母親は子どもを産んだ瞬間から、自分を犠牲にしてもその人生を家族に捧げ生きてゆくものなのだと、無意識にどこかでそう思っている女性は少くないと思います。けれど本当にそうなのだろうか、と私も思うのです。子どものためだけに生きてゆくことが、子どもにとっていいことなのかと問われれば、私も「それがいいことなのかは分からないよ」と、きっと京子と同じように答えるだろうなと。それは”人はみな独りで生きてゆくもの”と娘を突き放すような意味ではなく、人と人は血の繋がりなんて関係なく、互いに求め、そして求められて繋がっていくものなんだよ、と教えてくれていたのかなと思うことが出来ました。この映画は、自分の置かれている立場が変化するごとに観るべき、奥深い映画だと思います。いつか私が余命半年と宣告されたとき、もしまたこの映画を観たなら、もたいまさこ演じる余命少ない菊子さんの穏やかな笑顔の理由や、京子や周りの人々の温かさをまた、理解できるような気がします。
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