一気に狂い始める金銭感覚と、梨花の頭の中。 - 紙の月の感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

紙の月

4.434.43
映像
4.10
脚本
4.50
キャスト
4.50
音楽
3.93
演出
4.43
感想数
3
観た人
3

一気に狂い始める金銭感覚と、梨花の頭の中。

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.5

目次

平凡な銀行員の梨花が少しづつ変化していく理由。

銀行に勤めている主人公の梨花は、他人から見たらとても幸せな人生を送っているように見えます。ごく普通の女性です。結婚もしているし、銀行の外回りを担当していて、客からの信頼も高い彼女は、特に外見が目立つとかではなく、化粧も薄く、口紅も塗っていないのかと思わせるような女性です。髪もショートカットでごく普通の服装をしています。家庭では、旦那と幸せそうに見えましたが、彼女は少し冷めているような顔をしているのを不思議に思いました。笑っているけれど、目が笑っていないようでした。会社の同僚で梨花より若い女性がいます。その子は仕事が終わると明るい色の口紅を塗り、腕には高そうな腕時計をつけ、まるで梨花とは真逆な見た目です。梨花が彼女に憧れていたかは分かりませんが、少し気になるように彼女の高級腕時計を眺めている顔が私は非常に印象的でした。

ごく普通の女性が変わる瞬間ってどんな時でしょう。何か嬉しい事があったとか、悲しい事があったとか、きっと感情の変化によって、女性の姿は変わる様な気がします。梨花の場合もそうでした。彼女は、旦那以外の若い男性に興味を持ち始めます。真面目そうな彼女がなぜ旦那以外の男性が頭から離れなくなるのか、私は不思議でした。しかしすぐその訳が分かりました。彼女は、旦那の素っ気ない素振りに少し冷めてきていたのかもしれません。家で会話をしていても楽しそうに見えませんでした。私には不自然に見えました。このように彼女が少しづつ変わっていくまでには、旦那との溝、若い男性の魅力、高級腕時計があげられます。一番の理由は、自分がお金を取り扱う仕事をしているという事でしょう。

最初は1万円だけ、、その結果、膨れ上がった

異常なくらいの金額を使ってしまう梨花の心境。

若い男性は梨花と少しずつ親しくなります。不倫の関係にまで発展してしまい、彼がお金に困っているということを知った梨花は、自分が銀行員であることに改めて気づいたのでしょう。そして、してはいけないことをしてしまうのです。1番始めは、1万円でした、そのお金で自分の化粧品を買うという行動をするのです。私もまさかと思いました。お金を取り扱う仕事をしている人が、そのお金を盗み取るなんて絶対に許せない行為だと思います。例え1回だけ、1万円だけ、だとしても許されないと思います。しかし、梨花は、これだけでは終わらず男性のためにどんどん銀行のお金に手を出し続けます。

最初に盗んだ1万円で口紅を買い、同僚の若い女性の前で明るい口紅を塗っている時の梨花は、少し誇らしげに見えました。少しづつ服装も綺麗な格好をするようになり、もはや、彼のためではなく、自分自身のために使っているように感じました。1度上司にこの事がバレます。普通ならここで反省してやめると思います。しかし彼女は違いました。私には考えられないほどの金額を次々と盗み、彼と自分のために使い続けます。結局、最後の最後まで犯罪を繰り返してしまうのです。梨花が時々見せていた悲しそうな目はなくなりましたが、必死に犯罪を犯している彼女が哀れに見えてきました。何故人はあそこまで変わってしまうのでしょう。普段口紅もつけていなかったようなひとが、明るい口紅をつけ華やかに見えました。上品な服装をして前よりも綺麗に見えました。でも、それらは全て偽りから完成した梨花なのです。それに、もっと早く気付けばあそこまで深くはまってしまうことはなかったのじゃないだろうかと、私は考えてしまいます。

誰かに憧れるということは、あなたも誰かから憧れている存在であることに気づいて下さい。

人は皆、自分より素敵な人や物、憧れている人や高価な物、贅沢な暮らし、素敵な服などに憧れて日々を送ります。自分が他人に憧れているように、あなたも誰かから憧れているのです。それは忘れてはいけません。もし梨花のように道を踏み外してしまうと、誰も相手にしてくれなくなり、自分の悪い所ばかりが見えてきて、結局自分で自分を苦しめる結果になってしまうと思います。彼女が、そうなってしまったようにです。盗みを犯してしまったという事実によって傷つけられた人がいます。信頼してお金を預けていたのに裏切られていたショックは大きいです。そんな気持ちを考える余裕もなくなってしまうくらい、梨花の頭の中はお金のことでいっぱいだったに違いありません。異常なほど、お金を使い続けた梨花の周りにはもう誰もいません。彼からも終わりを告げられます。

後半、梨花の家の中はぐちゃぐちゃに散らかっていました。自分の罪をどうにか隠すために一杯一杯だったのでしょう。どうやって罪を隠すかではなく、どうやってこの罪を謝罪し、罪を受け入れていけば良いのかを考えるべきだったのです。しかしそれが彼女には出来ず、綺麗で整頓されていた頃の部屋のように、彼女の心はもう戻ることは出来ません。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

誰の中にもある危うい欲望

多くの人が映画をみる理由の一つとして、その映画の世界観を疑似体験できるということがあるだろう。よく言えば平和な、逆に言えば退屈な生活に飽き飽きした主婦。その頭の中によぎっては自らかき消す欲望を、そのままやってくれる主人公、梨花。非常に痛快だった。やってみなければ見えない景色を疑似体験させてくれる。思うがままに制限を全てとっぱらいやりきった先にはおそろしく孤独な世界が待っている。一見戒めのように捉えたくなる。しかし、梨花が逃亡する寸前に、隅と対峙した時、平穏を守るために隅がおくっている人生を語ったとき、「あぁ、つまらない。平和で無くてもやりたいことを全部やって死にたい。」と不覚にも思ってしまった。普段、夫や子供を理由に気づかないふりをしていた私自身の欲望を梨花をして気づかされてしまい動揺した。いや今でも動揺している。結末を知った上でもなお、その欲望にかられるのはきっと本物なのかもしれない...この感想を読む

4.04.0
  • 結婚生活に向かない女結婚生活に向かない女
  • 59view
  • 515文字

人のお金には手を出すな‼︎

この映画見ててドキドキする。今まで頑張って仕事やってきたのに、ひょんなことから悪知恵つけて人だましてお金横領していって、豪遊して気づけば多額の損失。普通のパートだったのになんか歯車が狂い始めてしまって歯止めが効かなくなるってのがドキドキ怖い。犯罪者になるきっかけってささいなことなんだなぁって思った。はじめはそんなつもりなかったのにね。不倫相手の大学生の男の子も可愛いんだけど、アァーもう‼︎バカ‼︎ってなる笑まぁ若いし人のお金だし遊んじゃうよね。甘えちゃうよね。宮沢りえの役も最初は地味ーな役だけどお金もっちゃうと人が変わったような感じで、ちょっと使ったらまた返せばいいやって感じで後戻りできると思っていたけどってなんかクスリと一緒だよね。お金に人に依存しちゃうの。自分のやってることがいいとか悪いとかじゃなくてそうしてないと自分が保てないというか。そしてそんな悪いことしていい思いしてても長く...この感想を読む

4.84.8
  • さかおさかお
  • 60view
  • 558文字

関連するタグ

紙の月を観た人はこんな映画も観ています

紙の月が好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ