『AKIRA』の原点!衝撃的で挑戦的。賞賛を浴びるべきストーリー。 - 童夢の感想

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童夢

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画力
5.00
ストーリー
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キャラクター
4.67
設定
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演出
5.00
感想数
3
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5

『AKIRA』の原点!衝撃的で挑戦的。賞賛を浴びるべきストーリー。

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画力
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目次

唯一無ニの存在、大友克洋。才能のはじまりは『童夢』から。

大友克洋と言えば、『AKIRA』『スチームボーイ』を代表作と答える人は多い。ですが、その思い込みは危険!『AKIRA』も『スチームボーイ』も、この『童夢』を読まなきゃ話にならない。『童夢』こそ、全ての発端。『AKIRA』を見ても、『スチームボーイ』を見ても、シーンの至るところが『童夢』と通じています。私は、『童夢』に出会って、漫画に対する価値観がガラリと変わりました。もしも『童夢』に出会わなければ、巷にあふれる中途半端な漫画を漫画だと思い込み、本物の楽しさに辿り着くことはできなかったと思います。こんなにも衝撃的で挑戦的、そして爆発的で臨場的な漫画は他にない。また、どうしてこのようなストーリーが思いつくのか。いつも不思議で仕方ありません。作者の頭の中を覗いてみたいと思わせる稀有な漫画です。

得体の知れない嫌な感じ。記憶の底にある恐怖心が疼き出す。

何だか、心の奥がゾワゾワする。皮膚の表面から産毛の一本一本がゆっくり逆立っていく気配がする。懐かしいような、見たこともないような。後ろを振り返れば何者かがいるような。そんな得体の知れない嫌な感じがする。『童夢』を読むと、記憶の底にある恐怖心が疼き出します。それはなぜか。『童夢』で描かれているのは超能力者という非現実的な存在にも関わらず、どこか現実的なようにも感じるからです。例えば、物語の舞台である古びた団地。そして、飲んだくれの父親、ボケた老人。発達障害の子供、くたびれた警察官。どれも現実に存在し、見えているのに見ないフリをされる存在。誰しも、飲んだの父親、ボケた老人、発達障害の子供、くたびれた警察官を見れば目を背けるはず。でも、目を背けた瞬間、罪悪感を感じてしまう。この小さな罪悪感に、超能力と呼ばれる非現実的要素が加わることで、日常と非日常の間の曖昧な世界観が広がっています。

『童夢』は平行世界の物語なのか。本当に起きた出来事なのかもしれない。

曖昧な世界観だからこそ、『童夢』の中で起きた出来事は本当なのかもしれないと思ってしまう。もちろん、私が住む世界に超能力者はいないし、超能力者が起こす事件もない。それでも、「大友克洋は超能力者たちの世界を見てきたのではないか」と考えてしまうのは、作品に妙な説得力があるからです。「こうしてこう書いたら面白そう」ではなく「こうだったからこう書きました」という確定的な自信があり、まるで『童夢』の世界は実在するかのような感覚を覚えてしまうのです。だからこそ、薄気味悪い。普通の漫画ではない。オカルトでホラー、不気味で後味がスッキリしない。もう一度、薄気味悪さ正体を確かめたい。私は、何度も操られたように『童夢』へと手が伸びてしまいます。

大胆にて繊細。醜い、汚い!リアルな登場人物たち。

決して綺麗に描こうとはしない。あるのはリアルな人間らしい表情のみ。『童夢』に、美少女や美少年なんてものは一切出こない。それどころか、不細工。小さな目に団子鼻、アジア人らしいスタイルの悪さ。少女漫画では通用しない正直な価値観。思いっきりリアルに描く!美化しない潔さに圧倒されます。 また、大胆なバトルかと思いきや、背景はこの上なく繊細。大胆にて繊細、相反する二つの魅力が一寸足りとも軽減することなく、最初から最後までフルスピードで駆け抜けていく。特に、老人と少女が飛び交うシーンは、3D顔負けの迫力。これは、もはや漫画の構成ではありません。 まるで、映画であって写真であって、画集のようでもある。様々な芸術分野からのいいところ取り、なのにそれを大友流にまとめてしまう凄さといったら!最高にエキサイティングです。

感情と感情のバトル。老人と少女の真逆の暴走!

少女と老人という二人の超能力者。善悪で言えば、少女が善で老人が悪。ただ、そうも言い切れないのが『童夢』の面白さ。ボケた老人は、善悪の区別がつかなくなり無邪気な残酷さで人を殺す。思春期の少女は、「これはダメ。あれは嫌」という女性特有の感情で老人に立ち向かう。老人が人を殺し、少女が阻止する。しかし、少女も感情の爆発で罪もない人を殺してしまう。結局は感情と感情のぶつかり合い。誰が善で誰が悪か、いつ入れ替わるかも分からない究極の展開に惹かれます。もしかしたら、この少女の行く末はボケた老人と同じなのかもしれません。明確な正義ではなく、感情の暴走だけで繰り広げられるバトルが斬新です。

映像化希望!必ず、アニメ界に新たな旋風を吹かす作品。

『童夢』をアニメ化しないなんて、宝をゴミ箱に捨てるのと一緒。もったいないとしか思えません。『AKIRA』や『スチームボーイ』が賞賛を浴びるのは納得の結果ですが、この『童夢』なくしてはアニメ界の進歩が止まってしまう。いつの時代に読んでも新鮮。だからこそ、世代や国籍関係なく知ってほしい。こんなにも素晴らしい漫画があるということを。本物のクリエイティブとは『童夢』のようなものを指すのだということを!


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