文句なしの名作 タイムリープ&魔法少女もの
アニメ好きは絶対に踏まえておくべき作品
『魔法少女まどか★マギカ(以下、まどマギ)』がアニメ史に名を残す名作であることは、もはや疑いようもない事実だろう。
ニトロプラスならびに虚淵玄の名を世に知らしめるキッカケになった作品であり、以降ニトロプラスは『仮面ライダー鎧武』や『がっこうぐらし!』『Fate/Zero』など数々の作品に携わるようになる。
また、これ以降漫画やライトノベルで”魔法少女もの”、あるいは”魔女もの”、そして”タイムリープ”ものが大いに流行ったことからも、その影響力が垣間見えるというものだろう。
しかし、流行りはあくまで上っ面のものでしかなく、本家以上に面白いものはなかなか生まれない。『まどマギ』以上の完成度を誇った作品は、いまだに存在していないといえる。
完成度と一口にいっても、その精度と功績は一概には語れない。のちの『がっこうぐらし!』にも応用される、3話目で視聴者を騙す工夫。”魔法少女モノ”において定番の付け合わせだったマスコットキャラクターの黒幕化。全12話という短い話数ながら、無駄もなく冗長もない構成。1クール作品でありながら3度にわたって映画化され、更に続編の公開が待望されているのも、人気作品故といえる。
蒼樹うめのキャラクターデザインについては賛否両論だが、限りなく残酷な物語への対比としては抜群の効果を与えただろう。コアなアニメ臭さもなく、男性女性両方に支持され、かつグッズ化もしやすい。それぞれのパーソナルカラーを基調とした魔法少女のデザインも可憐で、劇場版でのダンスからの変身シーンも含めて観るとより一層楽しんでみれる。
設定としてはかなり強烈なダークファンタジーだった『まどマギ』は、本来は観る者を選ぶ作品だったのにも関わらず、あえて対照的なキャラクターデザインをすることによって万人向けのコンテンツへと変貌した。この功績は非常に大きいといえる。
『まどか★マギカ』のキャラが残したもの
『まどマギ』の中心キャラクターは、5人の魔法少女だ。それぞれが自分の願いを叶えるべく魔法少女になり、魔女との戦いへと身を投じる。
主役であるまどか、準主人公のほむらは、あえて語るのも憚れるほど作中・アニメ界で大きな役割を果たしている。
平凡な少女であるまどかが、自らの願いによって神へと変わっていく過程。ほむらがまどかのために何度も世界をやりなおすことで、結果的にまどかの因果を大きくしてしまい、まどかは更に魔法少女としての非業の末路のループへはまってしまうという悲劇。
二人がたどった物語は、”少女の成長物語”、”悲運の友情物語”などと安易に語れない深みを持っている。まどかとほむらは、創作界が今まで持ち得ていたカテゴリやテンプレートを超越した、新たな新機軸を打ち立てた。
たとえばまどかの自己犠牲的な結末を受け付けない人がいたり、今までまどかのために頑張っていたほむらが報われないと語る人もいたり、それぞれの結末には賛否両論あるものの、物語の顛末としてはよく収まっているといえるだろう。文学ではなくエンターテイメントとして見たうえで、『まどマギ』のクライマックスは最高の盛り上がりを見せていた。 クライマックスでのまどか役の悠木碧、ほむら役の 斎藤千和の演技も実に見事である。
また、マミやさやか、杏子もそれぞれ作中で大きな役割を担っている。特に、『まどマギ』の方向性を決定づけたマミの死は、”マミった”などという動詞が出来るほど有名なシーンである。
それまで魔法少女というものを甘く見ていたまどかやさやか、引いては視聴者に、冷や水を浴びせる形で降りかかったマミの死。まどかの漠然とした「魔法少女になる」という決意を思い留まらせると共に、のちに「あんな死に方をするのは覚悟のうえで、上条のために魔法少女になりたい」というさやかの強い意志を視聴者に印象づけるための重要な布石になっている。
俗にいう”マミった”シーンは、キャラクターの意志の揺らぎと視聴者への今後の伏線、両方に作用した極めて重要なシーンなのである。
『新編』は蛇足か、それとも
円環の理となったまどか、改編された世界で戦い続けるほむら。二人のエピソードが完結し、アニメ版『まどマギ』は収束する。
しかし、そこから更に『まどマギ』のコンテンツは飛躍していく。劇場版三部作最後の『[新編] 叛逆の物語』である。
今回はアニメ版『まどマギ』の考察であるため、多くを語ることは出来ないが、『[新編] 叛逆の物語』ではアニメ版で完結した物語の続きが描かれていることを述べておくに留める…が、これについては賛否両論が激しい。
アニメでキレイに終わったものをなぜこのような描き加え方をするのか、完全に蛇足である、との声も多い。各キャラクターのファンによっても意見は様々で、特にほむらファンは激しく意見の分かれるところであろう(逆に、杏子やさやか、マミのファンはアニメ版以上の活躍が見れて嬉しかったのではないだろうか)。
いずれにしろ、三部作と銘打たれた劇場版において、『[新編] 叛逆の物語』の結末はあまりにも物足りない。
劇場版公開からすでに2年あまりが経過しているが、続編を待ち遠しく思う今日この頃だ。
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