圧倒的な写実力と歴史研究の深さ
歴史小説の巨匠・池波正太郎が筆をとった「真田太平記」は全十一巻のシリーズですが、どの巻を読んでも、詳しく歴史を知らない方でも、十分楽しめます。私は二十歳のときに地元の図書館で借りて十一巻を一週間ほどで読破しました。学生で、時間があったということもありますが、物語の中にのめりこんでいきます。
それは、池波正太郎の圧倒的な写実力が大変魅力的です。戦国期の物語ですので、戦の場面の描写の臨場感はもちろんのこと、戦国期の地方の大名の普段の生活なども、目に見て手に取るように伝わります。また、真田家の親子・兄弟などの心の機微が大変丁寧に描かれております。兄が成長していく様、弟が兄に抱く心の揺れ、親を見る息子の目など、現代となんら変わらない彼らが、戦に身を投じ、世の中を動かすまで、見届ける気持ちになります。
また、二巻では特に、「忍」の活躍が細かく描かれています。「忍」とは、忍者のことで、彼らが、一見普通の市民のように装い、驚異的なスピードで歩く(走る)こと、日常生活において訓練された決められた動きをすること、また、情報収集だけでなく、なんでも行うこと(実際、真田家の次男幸村に女性というものを教えたのも真田家お抱えの忍だったと描写されています)
大変興味深い池波正太郎の世界観が、ぎゅっと詰まった1冊です。
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