野球にかける高校球児たち
私の中の野球漫画の主人公のイメージは、剛速球を投げる、ビックマウスのピッチャーというものだった。しかし、このダイヤのAという作品の主人公沢村栄純という少年は、130キロにも満たないボールしか投げられない(しかもストレートのみ)という野球漫画の常識を覆す存在だったのだ。それでも強豪青道高校でエースになる!と直向きに努力する姿に誰もが応援したくなる。ライバルとなる剛速球派ピッチャーの降谷暁や「この人と野球がしたい」と思った存在であるキャッチャー御幸一也など、個性豊かなキャラクターが脇を連ねる。キャラクター一人一人の心情、作者である寺嶋先生は本当に野球が好きなのだなということが伝わってくる試合描写など好きなところを挙げていくとキリがない。私が特に好きなのが、沢村が夏の甲子園予選決勝で相手チームのバッターにデッドボールを当ててしまった後イップスになるストーリーだ。沢村の持ち味で最大の武器だった強気のインハイ。デッドボールの後からコースが甘くライバル校で4番の轟雷市にホームランを打たれ、マウンドを降りるシーン。帽子で顔を隠し「この状態でマウンドを降りてしまったらー…」と涙する沢村と一緒になって泣いてしまうのだ。その後、師匠と慕うクリスのおかげで沢村はアウトローという、新しい武器を手に入れる。挫折を経験しながらも強い意志でまた立ち上がる沢村を、これからも応援していきたい。原作は第2部に入り、新キャラクターも続々と登場している。続きが楽しみな作品だ。
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