南くんがイケメンであったなら
誰しも自分の彼女が(いや、彼女じゃなくても)突如としてお人形サイズになってしまったら非常に困惑するに違いない。
いくつかの偶然を経て南くんのもとにやってくることができたちよみは幸運であったなと思う。
あの年頃の男女は四六時中一緒にいたいものだし、独占欲が強ければお互いを独り占めして二人の世界を作ってしまいがちだ。
そういう意味では10代カップルにとっては最適のシチュエーションかもしれない。
小さくなってしまったちよみは、南くんの帰宅をひたすら待つ生活だが、南くんは違う。学校もあるしエロチックな誘惑もある。
お色気たっぷりな同級生とお近づきになり、ドギマギするのも南くんらしくて好ましい。
これがイケメンであったなら、引く手数多のモテモテ男子生徒になってしまい、いくら彼女でもちよみが不幸になりそうだ。
カップルの片方が変身してしまう作品では、川原泉の『森には心理が落ちている』が思い出される。
単なるクラスメイトだったが、ひょんなことから女子高生が亀になってしまい、男子の家で生活させてもらうというストーリーだ。亀と人であるし、まだ付き合ってもいない男女なのでエロチックな描写はないが、ふんわりとしたラブストーリーになっている。
この作品の男子高校生が非常にイケメンであった。
幸い亀になった女子はのんびりした生活だったため、色恋に走るようなことはなかった。
しかしである。
南くんはイケメンではない。しかしありあまる優しさを持っている。南くんがちよみのために尽くすのを作品の中で何度となく見る。
小さいちよみのために修学旅行へ一緒に行く画策をしたり、温泉に行ったりもする。
あんな風な混浴ができたらいいなとも思ってしまう。
できたらちよみは元のサイズに戻って欲しかった。二人に楽しい高校生活を送らせてあげたかった。
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