戦争が生む苦しみと、現実の不確実さを見せつけられる衝撃の結末
賛否や好き嫌いは分かれる作品だと思いますが、私はナンバーワンに好きな映画です。テレビで放映されたりするとかなりカットされることでこの映画の真骨頂が伝わりにくいので、ぜひノーカットで観ていただきたい映画の1本です。よくホラーに分類されているようですが、意図が違うように思います。
主人公はベトナム帰還兵のジェイコブ、彼の日常に残るトラウマが描かれ続け、ラストシーンでどんでん返しがあります。映画館で初めて見たときは、自分の足元の世界が崩れるような恐ろしさを感じました。ネタバレするとこの映画の魅力が格段に落ちてしまうと思うので、どのようなどんでん返しなのかは言えません。映画の中で描かれていたことが全て裏打ちされるラストであり、覆されるラストでもあります。
ある人にとってはつまらないラストシーンかもしれません。なあんだ、そういうことだったのかと思うかもしれません。しかし、勘の良い人はすぐに主人公を自分に置き換えて気づくでしょう。私たちが生きている「現実」だと思っている世界や日常がいかに不確実で不安定なものかということに。私たちはこの映画からそれを突き付けられます。
この監督がそこまで意識してこの映画を作ったのかどうかということは知らないのですが、結果としてこの映画は「自分が自分だと思っているこの感覚や思いは何なのか」「この世界は何なのか」「何が現実なのか」ということを強く考えさせられます。
タイトルの「ラダー」とは「天国への梯子」です。聖書では12聖人ヤコブ(英名、ジェイコブ)が夢の中で見た、天使が行き来する梯子(階段)を云います。映画でもジェイコブを天国に誘う天使として幼くして死んだ息子が彼の前に何度も現れます。戦争や人生の残滓に苦しみ続けるジェイコブ、せめて彼の梯子は天国に向かっていてほしい、と願わずにはいられません。
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