一粒で二度美味しいイチゴ味 - 北斗の拳 イチゴ味の感想

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北斗の拳 イチゴ味

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画力
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ストーリー
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キャラクター
3.50
設定
4.00
演出
4.50
感想数
1
読んだ人
1

一粒で二度美味しいイチゴ味

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.5
設定
4.0
演出
4.5

目次

読むべきか、読まざるべきか

『北斗の拳 イチゴ味』は人に勧めていいのか悪いのか、とても悩む作品だ。

もちろん、ギャグ漫画としてはかなり面白い。だが、『北斗の拳』という名作を母体にしている以上、『イチゴ味』を読んだら最後、あまりのキャラ崩壊と「そう来たか!」と思わずシャッポを脱ぐキャラいじりのセンスに染まってしまい、『北斗の拳』をまともに読めなくなってしまうからだ。それほどまでに『北斗の拳 イチゴ味』のインパクトはすさまじい。

まさしく是も非もなし 『北斗の拳 イチゴ味』のギャグ考察

まず、この画である。見ればわかるが、かなり『北斗の拳』に寄せてきているのだ。

この顔で(しかも、ほとんど顔面がいわゆる”ギャグ顔”になることなく、あくまで『北斗の拳』のキャラの表情で)ギャグをやられるから、読者は本当に辛い。面白すぎて辛い。この辺りは、原作のキャラをデフォルメしたギャグ漫画『DD北斗の拳』や、歴々の『北斗の拳』外伝シリーズにはなかった魅力だ。

そして登場人物。これはもちろん『北斗の拳』のキャラクターがそのまま登場しているのだが、なぜか主役がサウザーという強力なパンチをのっけから放ってくる。まだケンシロウなら読者も心の準備が出来たものを、なぜサウザー…。しかも、そのサウザーが扉絵で、原作の絵柄のままの凶悪な顔つきで遠足に出かけたり海に出かけたりするから読者はますます辛いのである。扉絵で噴出して、立ち読みしていた本をそのままレジに持っていった筆者のような読者は決して少なくないだろう。

キャラの暴走はサウザーだけに留まらない。天然ボケのケンシロウ、ケンシロウへひそかな恋心を抱くシン、サウザーにことごとく原作の見せ場を奪われるレイ、記憶と思考をリスに乗っ取られたフドウなど、次々と『北斗の拳』のキャラクターの皮を被った何者たちかが物語を跋扈していく。

ここまでキャラクターが原作と変わると、受けつけなくなる読者もいるだろうと思われた。だが、筆者を始めとする『北斗の拳』読者の数々は、『北斗の拳イチゴ味』を寛大な心で受け入れた。それは何故か。

ギャグだけではなかった 読者の妄想的願望を補完するイチゴ味の役割

答えは、原作『北斗の拳』の中にある。そもそも『北斗の拳』は、男たちの熱い生きざまが人気となった作品だ。キャラクターたちはほとんどが死んでしまうし、ギャグは皆無。

だが、キャラクターたちに人気があったからこそ、死んでいったキャラの生存やユーモラスな部分を見てみたいと望む読者は少なくなかったのである。同時に、原作を読んでて展開の一部に突っ込みたくなる読者もいただろう。後世に知られるリハクのうっかりなどはその典型である。

それを補完するのが『イチゴ味』もう一つの役目だ。

原作では、ケンシロウはちょっと天然めいたところがあるし、シンの言動も時々怪しかった(これは完全なる邪推だが)。また、南斗六星(正確にはユリアを除いた5人)が集まる姿を見たかった読者は多かっただろう。そこにサービス的ギャグを投入したのが『イチゴ味』だ。

ケンシロウの保護者と化したリンやバットも、なんだか楽しそうなユダも、こまめにケンシロウを呼びつけて友達になりたそうにしているサウザーも、キャラクターが刹那的な人生を生きていく原作『北斗の拳』では決して見られなかった光景だ。同時に、読者の一部が切望し続けた展開でもある。

それが、『北斗の拳イチゴ味』で読み、楽しめる。これが『イチゴ味』ギャグ以外のもう一つの魅力といっても過言ではない。

だから『イチゴ味』のキャラは多少ぶっ飛んでいるけれども、原作好きにはちょっと納得できてしまう。ここが、『イチゴ味』を嫌いだという『北斗の拳』ファンを生み出さない秘訣だろうと思われる。

悪質な企画の数々に読者は笑いを通り越して感動を覚える。

2015年秋、『DD北斗の拳』アニメ二期の後半2分間を借りる形で『北斗の拳イチゴ味』のアニメが始まった。2分という短い放送枠で、かつサウザー役の声優は銀河万丈だった。知っている人は知っているだろうが、銀河万丈は『北斗の拳』アニメ版のサウザーの声をやっていた。つまり本編からの続投である。意味がわからない。

しかも本人は至ってノリノリで、他の南斗役の声優陣(それぞれがベテランの人気声優ばかりだ)とザテレ○ジョンばりにイチゴを持って並んで撮影し、『それが大事』の収録に臨んでいる。銀河さん…。

『北斗の拳イチゴ味』の悪質極まりない演出はまだまだある。コミックスでは、昔のジャンプコミックスの巻末名物・読者からのお手紙を装って北斗の拳の作者・原哲夫、武論尊の寄稿を乗せるし(しかも両原作者はちょっと厳しくも好意的。うそだろ…)、ゲーム『サクラ大戦』のテーマ曲「檄! 帝国華撃団」を南斗六星に歌わせるし、堂々と他の出版社から刊行されている姉・行徒の漫画の宣伝をコミックス上でするし、「これ出版社的に大丈夫なのか?」と読者を心配させるような事態がチラホラ見受けられる。

また、こんなに売れたのにまだ自信が持てず姉・行徒に頼る作画担当・行徒妹の姿も、『イチゴ味』の名物と化している。

いずれにしろ、破天荒なまでの『北斗の拳イチゴ味』は、原作者にも受け入れられ、各地でコラボレーションが展開し、アニメ視聴者からはアニメの続編を期待する声も多くみられるなど、着々とその人気の裾野を広げているのである。今度の展開に期待が膨らむばかりだ。ちなみに、筆者は『イチゴ味』を読みすぎたせいでぱちんこ北斗の拳を打てなくなりました。

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