恋の記憶を思い出す「カギ」は5歳の娘
人気コミック「紅茶王子」の続編となる「紅茶王子の姫君」。「紅茶王子」のクライマックスで人間になったアシャー(アッサム、アッサムの元紅茶王子)と奈子の娘・杏梨がヒロインです。山田先生自身の子育ての経験が反映されているのか、子ども=杏梨の描写がとてもリアルで子育てに苦労する両親の心情もとてもリアルです。
杏梨の両親であるアッサムと奈子は住む世界の違うということで結ばれるためには「本人を除く全員がアッサムのことを忘れる」という条件が挙げられ、アッサムは奈子を説得してこの条件を受諾します。奈子はアッサムを忘れて大学に進学し、そこで人間となったアッサム(アシャー)と再会し、結婚し、そして娘を産むのですが、実は奈子は紅茶王子のアッサムを忘れています。再会してまた恋をするというところまでは王道ですが、アッサムを思い出さないというのは意外なオチでもあります。
そうして番外編として出来上がった本作「紅茶王子の姫君」では、なんと娘の杏梨がアッサムを知っているのです。その裏には紅茶王子のアッサムのことを奈子に思い出させたいというアッサムの母・マリアの願いがあるのですが何と言っても5歳です。上手に言葉にならずジレンマに陥ります。さらに大人になったら父親の紅茶王子時代を忘れてしまうというタイムリミットもあるので、「早く」と焦る気持ちが母親・奈子を傷つける暴言にしかなりません。
父と母を想っているのに失敗してしまい、それに葛藤する杏梨の姿はキャラクターとしても魅力的です。いつも不機嫌な娘にどうしたらいいのか悩む奈子の姿はとてもリアルで、「大好きなのにどうしていいのか解からない」というのは子育ての悩む女性にとって深く共感できる感情ではないのでしょうか。
番外編として作られたのでとてもテンポの良い本作。もうちょっと説明が欲しいな、と思う所もありますが別の作品で補っていけば内容は理解することができます。
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