慈悲をめぐる心象スケッチの評価
慈悲をめぐる心象スケッチの感想
人間・賢治にせまる、渾身のエッセイ
宮沢賢治の生涯・その作品を支える思考に、僧侶でもある玄侑宗久が、作家として、また、賢治と同じ仏教者として迫る、渾身のエッセイ。賢治がいう「慈悲」とは何か、賢治の求めた幸福とは何だったのか?という根源的な問いを、さまざまな角度から検証しています。宮沢賢治というと、わりと「善意の人」、「雨ニモマケズ」にあるような救世主みたいな人、というイメージが強いので、それを覆そうとする(否定しているわけではありません)玄侑さんのアプローチは、へえー!と少なからず驚きのあるものでした。こんな深い内容なのに、文章は平明で読みやすいです。闇雲に神聖視するのではなく、一人の人間として、男として、彼はどんな人だったのだろうか?読み終えて、宮沢賢治の詩、童話を読み返したくなりました。