明日の記憶の感想一覧
映画「明日の記憶」についての感想が4件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
毎日を必死に生きても記憶を失うということ
アルツハイマー病ー記憶を失うタイトル通り「明日の記憶」とは明日の記憶が分からないということだ。部長の佐伯はバリバリに仕事をこなし、更に几帳面な性格だ。待ち合わせの時間を忘れたことなどなかった彼が大事な会議があることを忘れてしまう。次に起こるべき自分の記憶が全く分からなくなってしまうのだ。病気の症状とストーリーが平行に進んでいくこの作品スタイルが私をハラハラさせた。神経的なものが影響している病気に彼はかかってしまう。軽い気持ちで受けた病院でのテストにスラスラ答えられない彼は落ち込み始める。自分の体の異変に気付きそれを認め始めた彼は病状は悪くなり始めた。非常に進行の早い病気のように感じるが、進行具合は人それぞれだろう。急に怒りだしたり、人の名前が思い出せない、頭痛、めまいは頻繁に起こる。佐伯はアルツハイマー病になってしまったのだ。患者にとって感情表現は生きている証に繋がるアルツハイマー病は...この感想を読む
怖くなります。
上記のamazonレビューを見ると、「希望の光を感じさせる」とありますが、私にはただただ怖かったです。過去の記憶がなくなっていくだけでなく、普段できていることや知っていることもだんだんわからなくなってしまう。愛する人ですらわからなくなってしまう。そうなってしまったら、彼らはどんな世界に生きているのだろうか。想像しただけでものすごく怖いです。認知症の宣告は私には余命宣告のようにも思えてなりません。こんな風に感情移入して見られるというのは渡辺謙や樋口可奈子の演技のうまさがあったからだと思います。なんだか他人事には思えなくて、どちらの側にも入りこんで泣きながら観ました。もっと演出をシンプルにストーリーを追っていくだけでも十分良い映画だと思いました。
夫婦の絆を確認
考えさせられます。働き盛りで会社での責任も重たい、家族を養わなくてはいけない、仕事もおもしろい。そんな生活が一変したら、自分だったらどうするか。パートナーがそうなった時に支えることができるか。独身の時に見ても共感できたから、結婚してからだったら受け止められなかったかもしれない。一番好きなシーンは、娘の結婚式。娘の名前も思い出せず、スピーチの紙も忘れて絶体絶命。それでも乗り越えられたのは娘への一途な親の愛があったから。病気を克服することはできなくても、抗うことはできる。意外なことに渡辺謙さんの初主演映画にしてアカデミー賞最優秀主演男優賞。
怖いだけじゃないけれど、親しい人とみたい映画
渡辺謙が原作小説を読んで感動し、みずから映画化を希望したとされる作品。働き盛りバリバリのサラリーマンが若年性アルツハイマーを発症し、病が進行していく。まだまだ若く、仕事人間だったりすると、自分にふりかかる病気そのものを受け入れるのがとても大変なんだろうな、と見ててしみじみ思った。家族や友人との関係も激変していく。しかも自分は、自分のしたこと、言ったことも憶えていられなくなる…。まだ認知度の低い「若年性アルツハイマー」という病気に、かなりストレートに迫っているストーリーだと思った。ラストはハッピーエンドとはいえないかもしれない。題材に対して、ドキュメンタリーでなく、ある意味ファンタジーの余地がある「フィクション」であることが、この映画では活かされていると思う。ひとりで見てもいいけれど、家族や親しい人とみるのもいいかもしんない、と思います。