反権力の颯爽とした三人の浪人を描きながら、他方で生きるために権力に使われる冴えない浪人をニヒリズムの視点で描いた「三匹の侍」
時代劇のヒーローに浪人がいる。権力体制からはじき出され、自分の腕っぷしだけで生きなければならない。野良犬、虫ケラと蔑まれても、武士の誇りは捨てない。一匹狼だから権力への遠慮はない。むしろ、権力悪に対しては、人一倍強い怒りを持っている。時代劇では、この浪人は、しばしば、宮仕えの武士以上の爽快なヒーローになるものだ。戦前の傑作、山上伊太郎脚本、マキノ正博監督の「浪人街」三部作、戦後の黒澤明監督の映画史に残る大傑作「七人の侍」、そして「用心棒」「椿三十郎」。時代劇は、浪人を常に魅力的に描き続けてきたと思う。食うや食わずの痩せ浪人が、思いもよらない剣さばきを見せる。薄汚れた野良犬が、牙をむき出し、強大な権力に闘いを挑んでゆく。「他人のことなんか知っちゃいない」と、うそぶいていた素浪人が、何を血迷ったか、飢えた農民のために、剣を抜く。1962年からフジテレビで放映が始まった五社英雄演出の「三匹の侍」...この感想を読む
4.54.5
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