現代アメリカ文学を代表するカート・ヴォネガット・ジュニアの半自伝的なSF小説の映画化作品「スローターハウス5」 - スローターハウス5の感想

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現代アメリカ文学を代表するカート・ヴォネガット・ジュニアの半自伝的なSF小説の映画化作品「スローターハウス5」

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映像
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脚本
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キャスト
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音楽
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演出
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この映画「スローターハウス5」は、現代アメリカ文学を代表するカート・ヴォネガット・ジュニアが、1969年に発表した彼の戦争中の体験に基づく、半自伝的なSF小説の映画化作品だ。 そして、この作品は、人生の不条理、戦争の残酷さが、時にはアイロニーを込めて、ファンタスティックに描かれているのです。

このジグソー・パズルのような複雑な構成の原作を、「明日に向って撃て!」「スティング」の名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督が、類まれなる卓抜した演出で映像化した傑作だと思う。 原作の小説は私の愛読書の1冊ですが、この原作小説は、複雑な構成をとっていますが、映画もまたその構成に沿い、過去、現在、未来や場所を超えて自在に飛び交っていると思う。

第二次世界大戦に出征し、戦後は実業家として成功、一見平凡な生活を送るビリー・ピルグリム(マイケル・サックス)。 だが彼は、時空を超えて自由に過去・現在・未来を行き来できる超能力を持っていた。 しかも、彼が常に立ち戻るのは、第二次世界大戦中に、遭遇したドレスデンの無差別攻撃。

そこでの悲痛な体験が彼の人生を決定したのだ。 子供の頃、父親からプールに突き落とされ、無抵抗主義ゆえに水の中に沈んだビリー・ピルグリム。 若い日に見た野外劇場の踊子。ベルギー戦線でドイツ軍の捕虜となり、屠殺場(スローターハウス)へ移送される途中、凍傷にかかったアメリカ兵の足を踏み、それが原因で彼を死なせ、これを目撃したラザロ(ロン・リーブマン)につきまとわれることになる。その後、ドレスデンの収容所が連合軍の空襲を受け、町は一変したが、彼は助かったのだった-------。

戦後、事業家の娘ヴァレンシア(シャロン・ガンズ)と結婚し、家まで贈られて優雅な生活を送り、中産階級の一員として大成功したのだった。 ヴェトナム戦争に出征した息子が、立派な兵士となり、ビリーは冷ややかに見つめるのだった。 飛行機が山に激突し、ビリーは重傷を負い、妻は半狂乱の末、車の衝突で死んでしまう。 そして、ビリーもラザロに射殺され、二百億後年のかなたのトラルファマドア星で、若き日に野外劇場で見た女モンタナ(ヴァレリー・ペリン)と戯れている。

時間的な配列を追えば、このようになりますが、これを、時空を飛躍する悩みをタイプに打ち続ける彼を現時点に据え、大胆に配列しているのです。 むろんその核になっているのは、戦場での悲痛な体験であり、その体験を重く背負った主人公の姿なのだ。

だが、未来における彼は、光明の中にいる。 そのあたりに、過去に取り憑かれながら、光明の未来を追うジョージ・ロイ・ヒル監督の共通の主題が見い出されるような気がします。 また、この映画の音楽はバッハの「ブランデンブルク協奏曲」などをグレン・グールドの編曲により使用していて、実に素晴らしかったと思う。

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