「趣味 パン作り」の私が選ぶ 衝撃のパン8選
目次
パン職人ほど パンに精通してるわけではないが
私は2日に1回は、自分と家族用にパンを焼いている。近年はホームベーカリーが進化して一時期はかなりブームにもなったが、私はもっぱら自分の手で捏ねる「手捏ね派」である。
この作品を初めて読んだときはパンを作ったことは無かったのだか、パンを作るのが趣味になり、改めてこの作品を読むと面白いのではないかと読み返してみたところ、パンを作りだしたからこそわかる点や、マニアックなパン作りの知識がちりばめられており、パンを作るうえでとても参考になっている。
そんな私が、改めて作品を読んで衝撃だったパンを8品紹介していこう。
第1巻参照 「ジャぱん16号」
東がパンタジアの採用試験にて初めて作ったパンである。
試験中、河内に邪魔されて生地を床に落としてしまった東。制限時間内に発酵するパンを作り直すのは無理だと考えた東は、無発酵パンである「ジャぱん16号」を作り上げた。
驚くべきはその見た目である。見事な富士山の形をしているではないか。どうやってこんな難しい形に成形したの⁉︎というのが一番の感想である。
東の説明では、薄い生地をオーブンの天井に貼り付けて、重力でだんだんと垂れ下がってくるようにしたと言うのだ。実践する勇気はないが、説明を見る限り、出来なくはなさそうだと思った。
パンはちなみに、いわゆる「ナン」であり、東がカレーに合うように作ったジャぱんである。この漫画が面白そうだと思わせてくれた、とにかく見た目が衝撃的なパンである。
第4巻参照 「ジャぱん58号」
これはパンタジアグループ内で行われる新人戦で、東が作った「メロンパン」である。
私はあまりメロンパンが好きではない。表面のクッキー生地が歯にまとわりつく感じが嫌だからだ。なので自分で作った事もない。
このクッキー生地の事については作中で説明されているが、ベースとなるパン生地と、表面のクッキー生地は、本来であれば焼き上がりの時間が異なるものなのに、無理やり一緒に焼き上げることで、クッキー生地は焼きがアマくなり、ベトベトした食感になる。この点はメロンパンの未完成部分とも言われている。
東はパン生地とクッキー生地を別々に焼き上げ、メロンクリームを間に挟み、寿司の様に合体させてメロンパンを完成させた。これならばクッキー部分はサクサクとした食感で、まさにパーフェクトなメロンパンといえる。
第4〜5巻参照 「ジャぱん8号」
これは新人戦の三回戦の課題「動物パン」で東が作った「亀パン」である。
動物などのモチーフのパンは、パン屋では昔から置いているものだが、茶色く焼きあがったものが多い。もしくは白パンにチョコペンなどで描いたものだ。しかし東の「亀パン」は、それは見事な緑色をしている。そして凄い事に、わざわざ漫画もカラーページにして、亀パンの鮮やかな緑色を伝えている。
パン生地に色をつけるのは簡単だが、焼くと茶色く焼き目がついてしまう。焼き目がつかないように温度を低くして焼くと、時間がかかる分乾燥してしまいパサパサした食感になる。
東は、りんご飴のりんごは時間が経ってもみずみずしかった事から、水飴をパン生地に練りこみ、乾燥を防いで低温で亀パンを焼き上げた。
作中ではどのように水飴を練りこんだかは詳しく描かれておらず、水飴を練りこんだパンは美味しいかどうかも正直疑問なところではあるが、これほど鮮やかな動物パンがあれば子供に大ウケする事は間違いないだろう。
第11巻参照 「ジャぱん51号戒」
これはモナコカップ準決勝の課題、F1レーサーの為に作った「スポーツパン」である。
見た目は黒く、うなぎを模した形で輪になっている。表面には栄養豊富な海苔を巻き、生地には目に良い栄養素であるアントシアニンを多く含む黒豆、筋肉増強に必要な数多くの良質なアミノ酸を含むシルクパウダーを混ぜている。生地にちりばめられたうなぎと、黒豆やシルクパウダーの甘みがあいまって、あたかも上品なうな重を食べているかのようだという。
「スポーツパン」という単語は初めて聞いたので、どんなものか想像がつかなかったのだが、FIレーサーのために考えられた栄養満点のパンであった。「スポーツパン」というジャンルが一般的に普及していくのはなかなか難しいのかもしれないが、コンビニなどでこんなパンがあれば、部活生や男性にも人気が出そうだと思う。
13〜14巻参照 「ジャぱん61号」
これはモナコカップの決勝戦、東に出された課題「故郷の味を生かしたパン」で作ったドーナツパンである。このパンの衝撃の別名は「大麻ジャぱん」である。大麻好きのそれっぽい人が乾燥大麻を生地に練り込んで焼いたみたいなイメージである。加えてピエロからの要望は「天国に行けるようなおいしい大麻パン」を作ってほしいとの事で、ちょっとヤバそうな雰囲気である。
しかし作中でも説明されているが、大麻の種は合法であり、七味にも大麻の種は入っている。その種から抽出した大麻ミルク、種を煎って作った大麻きな粉、揚げ油には大麻油を使い、大麻づくしのパンを東は作った。
加えて、焼く→揚げる→焼くという手間のかかった工程で丁寧に作り上げたドーナツは、審査員であるピエロに「歴史を変えるパン」と評された。
「大麻ジャぱん」というネーミングでは正直イメージが悪いが、作る工程を読むとかなり美味しそうだ。作中に登場したパンの中でも、異彩を放った存在感の高いパンである。
第15巻参照 「大間ジャぱん」
「焼きたて‼︎25」という番組でパン勝負を行うことになった東たち。1回戦でのお題「大間」の特産を使ったパンという事で、ウニを使った「茶碗蒸しパン」が「大間ジャぱん」である。
まず河内にベタベタの不味いフランスパンを作ってもらい、皮をトンカチで叩いて薄く丈夫にし、卵液が染み出さないようにして茶碗蒸しの器にするという工夫。パンの中身をくり抜き、それを小さくちぎってウニと炒め、ウニクルトンを作って茶碗蒸しの中に入れるという工夫。ウニ茶碗蒸しは単純に美味しそうであるが、工夫を凝らした作り方のパンである。
パンを器にしたものは、グラタンパンなどもあるし、この茶碗蒸しパンもお店でぜひ作って欲しいものである。
第16巻参照 「埴輪ジャぱん」
これは「焼きたて‼︎25」2回戦、宮崎県西都市で特産品のマンゴーを使って東たちが作ったパンワッフルである。
良質なマンゴーは生のままが美味しいという事で、そのままワッフルに入れたが汁が染み出してワッフルの食感が悪くなってしまった。その改善策として、マンゴーを急速冷凍し、解凍時に汁気が出にくくする工夫をした。それに加え、水分を吸う効果があり、程よい塩気が甘さを引き立てる「塩の花」を使った。ワッフルの形は郷土品である埴輪を模しており、その形を生かしたワッフルの食べ方を提案し、中身のマンゴーを十分に味わえる様にした。
対戦相手のcmapのカレーパンも、マンゴーと宮崎牛を使ったカレーに、パン粉の代わりにコーンフレークを使ったりと、製造工程を見る限りとても美味しそうなカレーパンであったが、東たちのワッフルのほうが見た目にまで工夫があり、やはり上回っていると言える。
この「焼きたて‼︎25」編頃から、作中のパンの材料は珍しい食材が増え、作り方も手の込んだやり方になっている。味の想像が以前よりも明確になったと思うし、作中で美味しいと派手にリアクションするのも納得できる。これは制作サイドの取材力が格段に上がったからだと思うし、より魅力的な作品になっていると言える。
第17巻参照 「折曲ジャぱん」
これは「焼きたて‼︎25」3回戦、秋田県大曲市で特産品の曲りネギを使って東たちが作ったパンである。
東たちは、ネギを生のまま生地に練り込む事と、卵黄を泡だてて加えるという2つの工夫をしたが、対戦相手である諏訪原も全く同じ事をしており、最後の成形の部分だけが異なっていた。諏訪原はトゥルニュと言われる手法で生地をねじり、ねじれとねじれのくっつく部分を利用して、生地を釜伸びさせた。
一方、東たちはフォンデュと言われる手法で生地を折り、折った部分がくっつくのを利用して、生地を釜伸びさせた。しかも東たちは折り曲げた生地を更に折り曲げたダブルフォンデュで、釜伸びの仕方も2倍にし、諏訪原を上回る工夫をして勝利を収めた。
これは、成形の工夫がパンの釜伸びを左右したという話であるが、私も一つの生地を同じ分量で分けて、丸く成形したものと、ロールパン型に成形したものを作って焼いた事がある。
成形後、二次発酵させた後は同じくらいの大きさなのだが、焼き上がりはロールパン型の方が大きくなっており、なんでかなあと思っていたが、この話を読んで謎が解けた。ロールパン型の方が、生地と生地の接着した部分が発酵し続けて釜伸びしていたようだ。
この回は、パンを作るうえでとても参考になった回であり、東たちがしていたダブルフォンデュの作り方は、簡単にマネできるのでぜひやってみようと思う。
マネしたい!と思ったパンが多かった
この「焼きたて‼︎ジャぱん」で作られたパンは、実際にパン作りで用いられる手法と、マンガならではのフィクションの手法、両方をバランスよく配合して作られたパンが多かった。あまりに奇をてらったパンだと、パンを自分で作る私は興ざめしてしまっただろうが、これは本当に作れるんじゃないか⁉︎という気にさせてくれたパンがたくさんあった。
パン作りをする人には、パン作りの意欲を高めてくれる作品であると思う。
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