乱射事件(乱射するとはいってない)。 - 松ヶ根乱射事件の感想

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松ヶ根乱射事件

3.003.00
映像
3.00
脚本
2.00
キャスト
3.00
音楽
3.00
演出
3.00
感想数
1
観た人
1

乱射事件(乱射するとはいってない)。

3.03.0
映像
3.0
脚本
2.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.0

目次

「松ヶ根乱射事件」を視聴した感想です。


私にはこの作品の面白さも、意図しているところも分からなかったです。
映画のワンシーンワンシーンを思い出しても、「だから何なの?」という毒にも薬にもならない感情しか浮かばないんですよね。
感情が動かされないというか。
笑いもないし、涙もない。
そういう作品も、邦画にはよくある作風ですので、映画として成り立っていないとは思いませんが、個人的な感想としては、好きにはなれないと思いました。

作品の中心になってくるのは、貧しい人々の生活感だと思います。
作品の中に登場する人々の底辺感というか、貧しさみたいなものはすごく伝わってきて、目が離せない感じがしました。
田舎の村の閑散とした様子。愛人の所に転がり込んだ父は、その娘を孕ませ、母は義父の介護に追われる日々。
長女は畜産業の経営で終始キリキリしており、弟はそれをブラブラと手伝っている。
そのどこにでもありそうな、生活に追われている人々の鬱屈した姿が、作品全体に含まれています。



ただ、それに終始しすぎてやしないか?とも思いました。


底辺の人々以外の要素があまり無いよな、と思ってしまったのです。

どん詰まりの人々の生態というのは、それだけで目を引くものがあります。
映画でなくとも、ドキュメンタリー番組で放送される、引きこもりやホームレスの人々の生態。
そういった番組が成り立つのは、そうした内容が、それだけで人の目を離さない程の面白さがあるからなのだと思います。
ドラマチックな展開も、ストーリーもないのに、人はそれを見てしまう。
そうした人々を描写するだけで、反応する人々がいる。
この作品は、そうした「底辺感への人々の興味」に頼りすぎのような気がしたのです。

ですので、映画の感想としては、一貫してずっと底辺の人々の営みを見せつけられているような印象を持ちました。
これでもか、これでもか、と繰り返される、人々の貧しさの描写に、これはちょっとあざといんじゃないか?と思ってしまいました。
やり過ぎな感じですよね。

映画としては、底辺というエンターテイメントの他にも、もう少し違う要素もあってほしかったです。
コメディ要素だとか、ストーリーに謎を持たせるとか、何か一とっつきやすさを増やしてほしいなあと思いました。

例えば同じく底辺の人々を描いた「闇金ウシジマくん」では、きちんとストーリーの面白さも、キャラクターの気持ちよさもありました。
それくらい観客に配慮がないと、ただただ「ダメな人々見せつけられている」という押しつけがましさを感じるのではないでしょうか。

また、性の表現も一々不愉快な感じですよね。冒頭の車に轢き逃げされた女や、ハルコの扱いが、ただただ不愉快に思えました。
もう痛々しさしかないというか。
これはわざと嫌悪感を抱くように描写されているんでしょうが、とにかく気持ち悪いですよね。
そのあたりも好きになれないポイントでした。

しかし、映画の評価というものは、一概にエンターテイメント性によるものではありません。
この作品も見る人が見れば面白い作品なのかもしれませんし、映画的価値があるのかもしれません。
監督の山下敦弘さんは国内外で数々の賞を受賞されています。
ですので、このような感想も、あくまで私個人の素人意見であることを併記しておきます。


主演の新井浩文さんの怪演が見所


キャストの方々は、皆さん異様な雰囲気があって良かったです。
一番印象に残ったのは、義父の葬儀の晩にキムラ緑子さんがお弁当を食べるシーンです。
ちょっと音がする感じとか、味わずに飲み下すような感じから、疲労感や生活感がすごく伝わってきました。
以前バラエティー番組でなにか召し上がっているのを見たことがありますが、こんな品の無い食べ方ではなかったですね。
食べ方一つにも役作りがあるのだと感心しました。

新井浩文さん演じる光一は、新井さんから溢れる不穏な空気感も相まって、非常に印象に残りました。
ラストで頭がおかしくなってしまう(そもそも最初から頭がおかしかったのか?)シーンも、新井さんの死んだような目が印象的でした。
父親と同じ女をこっそり抱いて、隠しておくような人間性や、毎日いもしないネズミを捕らえるための、ネズミ取りの仕掛けをする様子に、静かな狂気が滲み出ていました。

光一の双子の弟、光役の山中崇さんも、底辺のお兄ちゃん役がうまいなと思いました。

怒られても、下を向きながらニヤニヤしている感じが、光のダメな人間性をよく表していると思うのですが、そうした表情がうまいと思いました。
新井さんも山中さんも、闇金ウシジマくんの実写に出演していますよね。
こうした世界観にマッチしているのでしょうか。

また、謎の男役の木村祐一さんも、淡々とした口ぶりで暴力をちらつかせる感じが、怖さもあるし、少し面白い感じもしてよかったです。

最終的に金を加工してストラップを作っている様子は、なんだか愛着がもてました。

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