新聞連載された超名作のセルフパロディ - ベルばらKidsの感想

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ベルばらKids

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画力
4.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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新聞連載された超名作のセルフパロディ

4.84.8
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

名作だからあり得た時代を超えたパロディ化

ベルサイユのばらは、40年以上前の少女漫画なのに、今でも老若男女、世界中で愛されている言わずと知れた名作である。

これだけ完成度の高い作品を著者の池田さんが20代で描いたというのも今思うとびっくりであるし、最近では時を経て追加エピソードとして続編も刊行されている。

ベルばらKIDSは本編の続編より前の2005年から朝日新聞の土曜日のみの別刷りで連載されていた4コマ漫画だが、当時としても30年も前のシリアスな作品がギャグ漫画としてパロディ化されるのは異例だったと思う。キャラクターも三頭身、しかも著者ご本人によるセルフパロディだ。

本編にも少し垣間見ることができた池田さんのユーモラスな部分全開である。基本は作中のエピソードが使われている話もあるが、キャラクターたちが現代に生きていたら?という架空設定もある。

こう言った作品が受け入れられた背景に、まずはそれだけベルばらの人気が根強い事、池田さんご本人による作品だったため、思い切った話の内容ながらもキャラクターにブレがなく、本編のイメージを破壊することがなかったという点が挙げられる。

もし池田さんが他の作家に代筆を頼んでいたら、おそらく受け入れられなかったろう。本編が悲壮感あふれる結末だっただけに、悲しみのかけらもない明るい作風に、救われたファンも多いかもしれない。

同じ後付作品なのに、KIDSより本編続編の方が酷評!?

ベルばらは、宝塚歌劇のみではなく、お菓子やコスメなど、今では日常の中でもイラストやおまけのフィギュアなどが起用され、まだまだ人気が衰えない。

以前からベルばらの特集本などが発行されると、池田さんはフェルゼンとマリーテレーズのその後などについてなど、まだまだ描きたいエピソードがあったことを対談で語られていた。

KIDSはそういう意味では、全く池田さんが描きたかった追加エピソードとは異なる。全く遊び心満載の、池田さんご本人が描かれたベルばらの同人誌のような、パラレルワールドで、本編とは別物なのだ。

あまりに別物過ぎ、またパラレルワールドだという前提で読むからこそ、ファンもそういうものだと思って楽しめる。アントワネットがハンカチ王子のファンなどのエピソードも、当時の世相が反映されていて、新聞連載を意識した感じがするし、アントワネットが現代の四角いハンカチの原型を作った史実も重ねてあって、意外に凝った内容になっている。

一方で、2014年から刊行されている本編の補完(追加)エピソードは、やや当時の作品の読者層には評価が真っ二つ(やや酷評が勝る)の印象だ。

それこそ対談で池田さんが願っていた描きたかったエピソードがとうとう描かれたわけだが、作画が当時の絵柄と多少違ってしまっている点や、エピソードの中には当時の本編の解釈を変えてしまうものもあり、本編として受け入れられないファンも多いようだ。池田さんとしては渾身の続編と思われるので酷評は残念なのだが、やや続編の登場が遅すぎた感は否めない。

そして、なんといってもベルばら時代の絵柄が好きなファンが圧倒的に多く、オルフェウスの窓の途中から変化した絵柄にはなじみがないファンも多い。絵柄変化後に描かれたベルサイユのばら外伝などは、全く別の作家が描いたかと思うほど絵柄が変わっているので、ストーリーには違和感はないものの、ややこの外伝にも賛否があるほど、絵柄は大事なのだ。

その点、KIDSは三頭身化したギャグテイストの絵柄のせいか、全く違和感もないし、オルフェウスの窓の途中以降のやや線がこまごまとした絵柄ではなく、どちらかというとベルばら本編に近い絵柄だと思う。この読み手の印象や評価を見るに、漫画はやはり(当たり前なのだが)絵が重要だと感じる。

サザエさんの逆手法と優れた解説

国民的人気漫画サザエさんは、新聞連載の4コマを基にアニメの話が製作されている。しかし、ベルばらKIDSはその逆で、物語から4コマを抽出して描かれていると言ってもいい。

現代の世相を反映したものや、キャラのユニークさに徹したものもあるのですべての作品が原作に沿ったものではないが、4本分の四コマのエピソードごとに、本編の関連部分の詳しい歴史背景、池田さんの考えや見解などの解説が設けられており、裏話的なものに触れられている点では良書だと思う。

むしろ本編を読んだことがなく、たまたまこの作品から手に取った人でも、ベルサイユのばらとはこういう作品なのかと導入として理解するという読み方もできる本ではないだろうか。

本編は当然フランス革命の歴史的勉強になるが、ベルばらKIDSも解説の部分ではかなり勉強にもなり、あまり教科書では学べない世界史への興味をそそられる、歴史オタク的知識の宝庫になっている。

サザエさんの4コマから一つのストーリーを作っていく手法もかなり大変そうだと思っていたが、ストーリーから四コマを作って、歴史背景を語るという手法もなかなか珍しい。しかしながらこういう表現の本が、本編の発行から30年以上たっても受け入れられるのは、やはり「ベルばら」だから、と感じる。

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