自分が今、歩いている道は正しいのだろうか?
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自分が今、歩いている道は正しいのだろうか?
映画監督をしている田辺幸一と林業を生業としている岸克彦。年齢だけでなく、見てきたものも、知っていることも違う2人。未来に誰と出会うかなんて予想もつかないこの世界、この世界で、幸一と克彦は出会いました。幸一は、自分が監督であるにも関わらず、撮影したシーンを「監督これでokですか?」と聞かれても、はっきりと「okです」と答えることが出来ません。
自信が持てないのは、なんでだろう?
自信は誰かの無償の愛情がすぐ側にある時に生まれてきます。転んでも、また立ち上がれるトランポリンのようなものです。それは、今 自分のそばにいる家族や友達である場合や、歴史上の偉人であったり、物語の登場人物であったりもします。
しかし、自信は時に他者への優越感からも生まれます。その時に生まれる自信はもろく、私たちを不安にさせてしまうのです。なぜならその自信は、未来と繋がっていないからです。
幸一は、他者への優越感という形の自信、すぐに手に入りやすい自信を、手に入れたいと思うような人ではありませんでした。だからこそ、自信がなかった。だけどそれは、愛のような自信を心にもつための条件なのです。
幸一は、克彦と過ごす時間の中で、愛情を感じました。幸一は、前より自分の考えを伝えられるようになり、「okです」と大きな声で言えるようになったのです。
俳優の羽場敬二郎に、撮影終了後の夜にスナックに呼び出され、「また呼んで」と言われます。
それを聞いた幸一は、泣いてしまいます。
「自分が今、歩いている道は正しいのだろうか?」
その答えには、誰も答えてはくれません。だけど、「また呼んで」という一言で、自分が歩いてきた道に意味が生まれた、生きてきた意味が生まれました。
一瞬、晴れるぞ。(克彦)
僕らは自分で選んだ道を歩き続ける、それはその一瞬のため、なのです。
冗談でも言って欲しくない事は、ありますか?
親子2人で暮らしていて、ごはんは克彦が作り、洗濯物も克彦が干します。家事全般は、克彦がやっているようです。
克彦が仕事で家をあけているときに、雨が降りました。家に帰ると、洗濯物は取り込まれていなく、克彦は急いで取り込みます。家に入ると、浩一はくつろいでいて、2人は取っ組み合いになりました。
息子に対して、あまり厳しくしてはいないようですが、甘くしているわけでもありません。
あるとき、克彦の同僚が冗談めかして、浩一は、克彦と同じ林業の仕事をすればいいと言いました。
克彦は、怒りました。
冗談でも、息子の人生に口出しをして欲しくはなかったのです。克彦のプライドはそこにあるのです。
今、一緒にいるのが嬉しくてたまらないと感じることはありますか?
甘いものを控えている克彦と、この映画が取り終わるまでは甘いものは食べないというルールをもっている幸一。ですがある時だけは、2人は甘いものを一緒に食べました。
甘いものを食べて嬉しい気持ちになっているだけではなく、ただただ嬉しい。
絆が生まれるのは、何かをしてもらった時だけではなくて、ただ一緒の時間を共有する中で一緒に笑うこともそうです。お互いに、見えない何かを与え合っている。助け合っているのです。
克彦は同僚に、自分が映画の撮影に参加したことを説明します。
そのとき、全然面白くはないけれど、なんだか可笑しくてみんなで笑い合います。
なんか笑ってしまうのは、心が柔らかい時にしかできないこと。笑っている方は、自分は生き生きしているなあと感じることはないのかもしれません。しかし、確かに生き生きしていて、克彦と同僚たちは、エネルギーを生み出しているのです。そのエネルギーは、克彦もそうだし、同僚1人1人もそう、他人への優しさや愛に変わるのです。
一般論は、自分の言葉ですか?
克彦は、幸一が映画監督だとは知らずに、仕事を全然しないスタッフだと思っていました。その時に、なんか手伝うことあるやろ、と幸一に言いました。一般論ではなくて、自分が感じたことを自分の言葉で言っているのです。
私たちは、ついつい、どこかで誰かが言っていることを当たり前のように口にします。
でも、それは本当に自分の言葉なのでしょうか。
ほんとは、よく分からない。だけど、大多数の人がこう言っているからこうなのだろう。と、思うことは自由です。しかし、会話では、自分の言葉が必要なのです。一般論では、相手と自分の心が交流することはできないから。
人は、相手の表情や声などから必ず真実を見抜く目や耳を持っています。だから、例えば やましい気持ちは絶対に見抜かれる。感謝の気持ちを持っていたら、相手はそれを感じるのです。
自分の言葉で語っていないのも、すぐに見抜かれるのです。
相手の心には響かないのです。
気持ちはダイレクトに伝わる。だからこそ、幸一の気持ちは克彦に伝わったし、克彦の気持ちも幸一に伝わったのです。その2人だけでなく、それぞれの気持ちは、それぞれの相手に伝わったのです。
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