ゆるくて不思議な世界観が魅力、という事でよろしくお願いします - 時効警察の感想

理解が深まるドラマレビューサイト

ドラマレビュー数 1,147件

時効警察

4.384.38
映像
4.00
脚本
4.75
キャスト
4.88
音楽
3.75
演出
4.13
感想数
4
観た人
6

ゆるくて不思議な世界観が魅力、という事でよろしくお願いします

4.04.0
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

時効警察は時効警察というジャンルと言っても、過言ではないのだ

「時効警察」を視聴した感想です。
この作品は、時効を迎えた事件を趣味で捜査する、主人公霧山修一郎の活躍を描いています。
取り扱う事件は全て時効を迎えているので、霧山が犯人を捕まえることがないのが、作品の最大の特徴だと言えます。

ミステリーの作品で、不幸な犯人がやむを得ず罪を犯すドラマもあり、「逮捕されるのがかわいそう」という気持ちにもなってしまいますが、この作品では犯人は逮捕されないので、そうしたモヤモヤがありません。

また、ゆるいキャラクターや、ゆるいギャグが作品全体に散りばめられており、殺人事件を捜査するにしては、緊張感などまるで無い、独特の雰囲気が漂っています。

事件の全貌も、偶然が重なっただけだったり、頭のおかしい証言者に助けられて真実かうやむやになっただけだったりと、不条理な結末が多く、推理もののドラマという感じはしません。
「時効警察」という作品の世界観を楽しんだ感じでした。

三日月くんは片想いでいてほしい


少し残念だったのは、話によって、設定にバラつきがあるように感じたことです。
この作品は各話で担当する脚本、監督が変わります。
監督の解釈によっては、ほんの少しですが、キャラクターの性格や関係性が違っているように見えてしまいました。

特に気になったのは、霧山と三日月の関係性と、霧山と十文字の関係性です。
霧山と三日月は二人でよく行動を共にしていますが、恋人という訳ではなく、三日月が一方的に霧山に片想いしている感じです。
しかし話によっては、二人が両想いのようだったり、霧山も三日月に気持ちがあるような描かれ方をしています。
私は三木聡さんの描く、三日月の一方的な片想いを、霧山が全然相手にしていないような関係性が好きなので、ちょっと違和感を感じてしまいました。
また、霧山と十文字は同期なのですが、十文字がちょっと出世していて刑事という肩書きなんですよね。
しかし、同期なので基本的にタメ口ですし、気安い関係として描かれています。
しかし、6話でだけ何故か霧山は十文字に遠慮していて、敬語で話すくらいの距離感になっていたので、少し変に見えました。
第1シリーズでは、十文字の出番が結構あるので、これもちょっと気になってしまいました。

また、作品のテイストも微妙に違っているように思えました。
6話では唯一、時効寸前の犯人を逮捕するのですが、ちょっとシリアスすぎる気がしました。
霧山が、本来時効までに逮捕しなければならない犯人を、時効の後に趣味で捜査するという事に、警官として良心の呵責を抱くという内容です。
自らへの葛藤や、十文字への叱咤激励など、普段穏やかな霧山にしては、激しいセリフの多々ある話となっています。
それを見ていて、正直「それを言っちゃおしまいよ」と思ってしまいました。
時効警察はそういった現実的なツッコミを必要としないような、不思議な世界観が魅力のはずです。
例えばキティちゃんに「何で猫が喋ってんの?」というような事だと思うんですよね。
根本にツッコミを入れるのは、どうなのか…。
また、普段バカキャラの十文字が真剣すぎる気がしました。
時効警察は異世界だと思ってこちらは見ているので、いきなり現実に引き戻されたように思え、違和感を感じました。

続編の「帰ってきた時効警察」では、同じく複数の監督が制作をしていますが、こうした設定の違和感やテイストの違いはあまりなく、見やすく改善されたと思いました。

ツッコミ不在という、新しい形のコメディと言っても過言ではないのだ


この作品の魅力は、随所に挟まれるコミカルなシーンです。
しかし、今までのドラマでは見たことのないような笑わせ方をしていると思います。
ツッコミが不在なんですよね。
たまにツッコミを誰かが入れるのですが、基本的にボケたらボケっぱなしで、視聴者がテレビの前でツッコむという笑わせ方をしています。

しかもちょっと不思議なボケなんですよね。
ラーメンの箸が浮いていたりとか、表札の文字がメチャメチャ小さいとか。
それを誰かがツッコむわけでもなく、ただ放って置くという。

演者のやりとりにしてもそうで、基本的にサネイエと三日月がツッコミを入れますが、全員で変なことをやっていることも多く、話の着地点もおかしかったりします。

コメディが得意な監督や脚本家というと、堤幸彦さんや宮藤官九郎さんを思い出します。

堤監督は画面に小ネタを入れ込んだり、おかしな人を登場させて笑いを誘うのが得意です。

また、宮藤さんは、面白いセリフをこれでもかこれでもかと、ワンシーンに詰め込むやり方が魅力的です。

しかし、双方ともやっぱりボケ、ツッコミの形の笑わせ方はしていると思います。

ツッコミ不在というのは、すごく新しいですよね。
それでもすごく面白くて、すごいと思います。
笑ってしまうし、時効警察の不思議な世界観にもマッチしていて、いいと思いました。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

脱力系ドラマの決定版

深夜ドラマの自由さを生かした傑作深夜ドラマは大きな視聴率は望めないので低予算しか組めませんが、そのぶんターゲットを絞ったマニアックな作りが可能で、ゴールデンタイムドラマにはない自由さが魅力です。「時効警察」は、そうしたメリットをフルに生かした作品で、放映時にもかなりな評判を呼び、続編「帰ってきた時効警察」が製作されるに至りました。ここでは正編を中心に考察したいと思います。基本トーンは三木聡ワールドこのドラマは作家主義が基本で、監督たちが自分で脚本を書いているエピソードが多いのが特徴です。ケラリーノ・サンドロヴィッチ、園子温ら舞台、独立映画で気を吐いている面々が集まっています(園はこの作品のあと何本かの映画で大幅に知名度を高めましたが、当時から注目株でした)。それだけ多士済々にも関わらず、バラツキがないのも驚きで、頭と終わりの3話(この番組は全9話)で脚本監督を担当する三木聡が見事に全体...この感想を読む

4.54.5
  • オスミンオスミン
  • 166view
  • 2077文字
PICKUP

趣味が事件捜査って!?

時効事件を捜査する、ありえない設定趣味がない霧山修一朗が趣味を探すということから始まった、この時効警察。霧山くんの趣味が、時効になった事件を捜査する、現役警察官なのに趣味で・・・という設定。時効になった事件を趣味で捜査する、という設定はありえないけど、今までに見たことのないので、とても興味を引かれた。しかも、殺人事件で犯人がのうのうと暮らしているにも関わらず、犯人が分かったとしてもあくまで趣味のため、「口外はしない」現役警察官の話なのに、「逮捕しないのかい!」と、ツッコミたくなるとても面白い設定のドラマでした。決めセリフのようなカードこの時効警察には、他のサスペンスにあるような決めセリフはない。例えば、金田一少年の事件簿だったら、「じっちゃんの名にかけて!」みたいな決めセリフ。それが、この時効警察の場合、誰にも言わない証として、「誰にも言いませんよカード」にあたるみたいで、いいアイデア...この感想を読む

4.54.5
  • 安曇安曇
  • 166view
  • 2048文字

ゆるーいかんじがいつまでも続けばいいのに

個人的にはかなりヒットのドラマです。ゆるーいかんじがこの深夜枠のドラマなんだよな、ってかんじ。実際にはこんな時効の事件調べてて、真犯人にたどり着いちゃったらそもそも霧山を刑事課に異動させようよ、ってかんじなので現実感はないドラマですが、そこをあたかも現実感っぽく見せているのが良かったところですね。基本1話完結していく中で雑なかんじの笑える要素が散らばっているかんじです。そしてキャスティングも最高です。あのゆるいかんじではオダギリジョーは本当にピッタリだと思います。ゆるーいかんじなので冷めているところは心底冷めているキャラクターですしね。麻生久美子のキャラクターもこの人だから許せるな、ってかんじでした。実際にあんなオーバーじゃなくてもあのタイプの女がいたらいらっとしそうでしたが麻生久美子だから嫌味もないですし、むしろ可愛いです!オダギリジョーとの組み合わせみもうまい感じの掛け合いになって...この感想を読む

4.54.5
  • cocococo
  • 59view
  • 599文字

感想をもっと見る(4件)

関連するタグ

時効警察を観た人はこんなドラマも観ています

時効警察が好きな人におすすめのドラマ

ページの先頭へ