複雑なラブストーリー - マンハッタンラブストーリーの感想

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マンハッタンラブストーリー

4.174.17
映像
3.33
脚本
4.17
キャスト
4.50
音楽
3.33
演出
3.83
感想数
3
観た人
4

複雑なラブストーリー

3.03.0
映像
3.0
脚本
3.5
キャスト
3.5
音楽
3.0
演出
3.0

目次

宮藤官九郎さんの、新しい作風

宮藤官九郎さん脚本の作品は、「ピンポン」や「池袋ウエストゲートパーク」、「木更津キャッツアイ」など、若者が活躍するような、青春群像劇が多かったと思います。
そのイメージとは真逆の、大人のラブストーリーをテーマとしたのが、この「マンハッタンラブストーリー」です。

それまでの作品では、若者言葉が飛び交う騒がしい作風だったと思います。
しかし、このマンハッタンラブストーリーでは、そういった実績を捨てて、年齢の高いキャラクターを多く出しながらも、しっかりと笑える脚本作りをしていると思います。

また、ラブストーリーという、ともすると緩急をつけるのが難しいテーマにもチャレンジしていると思います。
そのおかげで、マンハッタンラブストーリーは、これまでティーンや若者層に支持のあった宮藤官九郎さんのファン層を広げた作品になったと思います。

また、各キャストにも意外性のあるキャラクターを当てていると思います。
ヒロインの赤羽さんは、男言葉で咥えタバコで運転するような、女性タクシードライバーです。
そのいかにも男社会で揉まれているような、色気の全然ない役を、小泉今日子さんが演じているのは意外でした。

また、船越英一郎さんは「船越英一郎本人役」として出演しています。
船越さんは、サスペンスドラマの印象が強いですが、この作品では、分かりやすい大物役者の「船越英一郎」を演じており、こんなフランクな船越さんをテレビで見るのは意外でした。

また、蒲生忍は物語中盤で、実は男性ではなく女性だったことが明らかになるキャラクターですが、女性を出すようになって以降は、演じる塚本高史さんは、自然にギャルの演技をしていたと思います。

このように、キャストにとっても視聴者からのイメージの幅を広げることとなった作品であると思います。

もっとスッキリしたかった

ただ、視聴した感想としては、いくつか気になった点もあります。
まず、一番気になったのは、各キャラクターの恋愛をあまり応援したい気持ちにならなかったことです。
ヒロインの赤羽さんはベッシーのセフレにされているし、土井垣さんと千倉先生は不倫だし、えもやんも不倫だし…。あまりにも倫理的によくない関係ばかりで、誰も応援できない感じでした。
特に土井垣さんは、上の娘は思春期で、下の息子はまだ2歳で、絶対に不倫なんかしてはいけないキャラクターですよね。
土井垣さんは家庭の他に、えもやんと千倉先生と関係があり、えもやんに至っては妊娠させてしまっています。
本当にクズな男だと思いますし、ドラマと分かっていても、「最低!」と思ってしまいます。(だから、最終的にはメインのキャラクターとくっつかず、赤いトレーナーの女と再婚したんでしょうか?)


ラブストーリーは根本的に、登場人物の恋愛模様を応援できないと面白くないと思うんですよね。
ですので、そのあたりがいまひとつ物足りない感じがしました。

また、毎回ストーリーの締め方が、消化不良な感じがしました。
毎回誰かがくっつきそうになるような盛り上げ方をしておいて、実際にはくっつかないで終わるパターンが多く、見ていてモヤモヤ感が残ってしまいました。
具体的には、海外に行こうとしているベッシーを赤羽さんが引き止めて、それで二人がくっつくのかと思いきや、ベッシーが千倉先生に告白してしまったり、不倫相手の子供を身籠ったえもやんが、忍君とくっつくのかと思いきや、実は忍君は女性だったことが発覚する…という感じです。

ほぼ毎回このパターンで放送は終了します。確かにそれで次週の展開は気になりますが、一回の放送で、どこかでスッキリとさせてほしかったです。
特にえもやんは、不倫相手の子供を妊娠したけれど、結婚には不安を感じているキャラクターで、あの展開は可哀想な感じがしました。
話がリアル過ぎて、茶化すのもどうなの?と思ってしまいました。

また最終回では、皆が皆、それまでの放送でフラグがたった人とは結ばれず、結局全然関係ない人と結ばれているのも、「じゃあ今までのは何だったの?」という感じがしました。
この辺りは、「人の心はすぐに変わってしまう」という作品のテーマに沿っているんでしょうか。
私には、良くも悪くもあんまりな最後のように思えました。

赤羽さんの伏線がもっと欲しかった

作品では、「軽井沢夫人」という作中劇が登場します。
赤羽さんが大ファンのテレビドラマで、千倉先生が脚本を手掛け、声優の土井垣さんがナレーションを担当し、振り付け師のベッシーが演出を手掛けているという設定で、作中で頻繁に登場します。
そして、実はヒロインの赤羽さんが、この「軽井沢夫人」とそっくりな生い立ちをしていることが、後に発覚します。

これにはすごくびっくりしましたし、面白い設定だと思いました。しかし、少し唐突な感じもしました。
欲を言えば、この展開を匂わすような伏線を、1話から見られればもっと楽しめたのかな、と思います。

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