飽くなき『食』へのこだわり。その果てに待っているものとは? - 魔人探偵脳噛ネウロの感想

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魔人探偵脳噛ネウロ

4.254.25
映像
4.00
ストーリー
4.25
キャラクター
4.00
声優
4.50
音楽
4.15
感想数
2
観た人
2

飽くなき『食』へのこだわり。その果てに待っているものとは?

3.53.5
映像
3.0
ストーリー
3.5
キャラクター
3.0
声優
4.0
音楽
3.3

目次

~その①:謎に飢えた魔人と食物に飢えた人間~

謎を食糧とする突然変異種の魔人脳噛ネウロ。魔界の「謎」全てを喰らい尽くしてしまったネウロは、自らの脳髄の空腹を満たせる「究極の謎」を求め、人間界へと赴く。

人間界でネウロが最初に出会った謎が、桂木誠一が殺された事件。(アニメでは、時系列が大幅に入れ替わっており、第1話では既に探偵事務所が開かれている)その事件により、娘である女子高生・桂木弥子と出会い、ネウロは彼女を女子高校生探偵として仕立て上げ、隠れ蓑にしながら「謎」を探しては解き、食していくというのが本アニメの大筋のストーリーである。

様々な謎を解決していくネウロと弥子であるが、魔界と人間界という異なる世界に住む住人の二人に共通することとして、『食に飢えている』ということがあげられる。この作品は、作者・松井優征が述べる通り「推理物の皮を被った単純娯楽漫画」という事件解決における、推理は従来の探偵もののような体裁をとっているが、その根底には「食(食事)」というテーマが見え隠れしている様に思われる。

~その②:「飢え」は脳が感じるもの~

食事という行為は、脳が感じる飢えを満たすのに非常に効果的な手段の一つと言える。そのため、大食漢である桂木弥子も謎を欲する魔人のネウロも、共に脳において「飢え」を常に感じているともいえるだろう。

人間は進化の過程で脳を発達させてきたことで、様々な言語や複雑な思考を出来るようになった。その進化の中で、人類というものもあらゆる形態に分化していったのかもしれないと考えられる要素の一つに、人々の脳に響く歌を歌う・歌姫「アヤ・エイジア」や世界中を震撼させる凶悪犯罪者怪盗「X」を筆頭とした、人という形を凌駕し豹変する犯人たちの出現があるといえるのではないか。

本アニメでは、ネウロや弥子のみならず、犯人たちも自身の中にある答えのない問いや目標を探し続けてもがいているように見える。

それぞれが脳で飢えを感じ、それが日増しに強くなっていく中で、独自の進化を遂げていったのかもしれない。勿論、飢えだけでは進化は成立しないのかもしれないということは、ネウロの「資質と欲望が・・・人間をどこまでも進化させる」という言葉より表れているとも言える。本作品の中に登場する犯人たちは、ある種その資質も持ち合わせていたために進化を成し遂げたといえるだろう。

~その③:魔人と人間の進化とは?脳が生み出す軌跡~

弱肉強食の世界で例えるのなら、本来、魔人であるネウロは強者で、非力な弱者の人間である弥子の力を頼らずとも、自力で謎を食らうことは充分可能であったはずである。それにも関わらず、なぜ、強者は弱者を頼ったのか?

食物は調理というひと手間を加えることで、その味を一味も二味も変化させる。食同様に、謎も、それを生み出す人間の脳が複雑(独自の思考や感覚に特化する、様々な見方が出来る等)になればなるほど、より高次なものへと変化していくのかもしれない。

人間の脳は普段、10パーセントも使われていないという。残り90パーセントの部分にどのような可能性が秘められているのか、それは実に興味深い問題でもあろう。もしかしたら、ネウロは自身からしたら弱者である人類の脳に秘められた「進化の可能性」をどこかで期待していたのかもしれない。だからこそ、桂木弥子という人間を触発材として利用したと考えられる。彼女の人を知ろうとすることに特化した能力により、彼女と関わる人々の持つ謎をより深みのある、進化させたものへと誘い、最終的に食していくことが、ネウロ自身の求める「究極の謎」を食す行為へと繋がると考えたのではないだろうか。

進化という点をもう少し考えた時、人間はより魔人のように異界の強者(絶対的な力を持つ者)へと近づいていくことが進化の一つと考えられるが、魔人にとっての進化は人間の進化の形とは違ったものになるのかもしれない。具体的に述べるとすると、ネウロの場合、弥子と一緒に探偵事務所への依頼をこなしていくうちに、より人間的な思考が出来るようになっていったことが見られるため、そこには異界の強者が異界の弱者の持つ考えを理解できるようになっていくという進化を遂げたともいえるかもしれない。更に、ネウロは強者へと進化を遂げた人間たちに対して、”進化の仕方についてそれでよいのか?”といった問いを投げかけるシーンもあった。その背景にある彼の気持ちとしては、自身のような強者の生む謎はたかが知れた謎であり、自分の求める究極の謎」に値しないため、間違った進化であるために止めた方がよいという、彼なりの魔人にしては人間かぶれな情に近い気持ちが表れているように感じられ、そこには彼の脳が人間の脳によって影響を受け、人間のような感情をもつという一見、退化のように見える進化を遂げた可能性があるともいえよう。

上述してきたように、本作品は、魔界の住人のネウロと人間界に住む弥子という二人を中心に織りなす、「食」への飽くなき探求心が成した軌跡ともいえるかもしれない。

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他のレビュアーの感想・評価

今までに見たことのない推理もの

推理できない探偵っていうからには推理がつきものだという私の概念が見事なまでに覆された作品です。推理しようにもヒントが何にもないので、やりようがないんです。よくある探偵ものだったら少なくとも犯人が誰なのか分かるようなヒントを出してくれるものなんですけどね。これは全くそういうのがなくて、いつもネウロの秘密道具が強引に解決に導いてたから途中から推理することを放棄しましたね(笑)というかこの作品がそういうことを目的としていないんだということをもっと早く知っておくべきだったと後悔しました。推理することに夢中になって前半の話がほとんど頭に入ってなかったですからね。魔人探偵のすごさというかなんというか、もはや探偵というのもいかがなものなのかってレベルの強引さでしたよ(笑)弥子ちゃんの扱い毎回見てて思うのはネウロの弥子ちゃんへの扱いですね。弥子ちゃんも一応ヒロインっていう立場のはずなんだけど、なんていうか...この感想を読む

5.05.0
  • ぽんぽん
  • 149view
  • 3006文字
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