ジャッキーの原点であり最高峰!男心をがっちり掴んで離さない作品 - ドランク・モンキー/酔拳の感想

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ジャッキーの原点であり最高峰!男心をがっちり掴んで離さない作品

4.54.5
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
4.5

目次

ジャッキー・チェンの原点!彼の人間力に魅了される

言わずと知れたハリウッドスター「ジャッキー・チェン」だが、この「ドランク・モンキー/酔拳」では、彼の類まれなるアクションや演技・表現力といったものを存分に体感できる。ジャッキー好きには本当にたまらない作品といえるだろう。彼自体がとても興味深い人生を歩んでおり、父が元スパイであったり、2人の兄に会ったことがないなどの逸話もある。まだ有名でない時代には、あのブルース・リーの映画「ドラゴン」シリーズにもにもスタントマンやエキストラとして出演している。このような道のりを経たジャッキーチェンが、本作品で主役を務めて一躍有名になるのである。この背景を知っていると、彼の演技やアクションを観るのがさらに楽しくなってくる。

ジャッキー・チェン演じる主役のウォン・フェイフォンは、物語序盤では見栄っ張りで自意識過剰の未熟者。酔拳を習得している師匠との出会いをきっかけにして、どんどん力をつけていく。今考えると「ベタな設定と展開」といえるかもしれないが、紆余曲折してブルース・リーの作品にまずエキストラとして出演してスターになっていくことを考えると、結果的にフェイフォンとジャッキー自体がとても似ているような気がしてならない。フェイフォンの迫力ある演技はジャッキー自身の想いがそのまま投影されていることで生み出されているのかもしれないと感じる。いずれにせよ、ジャッキーチェンならではといっても良いコミカルさとシリアスを兼ね揃えた味わい深い演技やアクションは、彼が強く人生を歩む中で身につけてきた人間力の賜物といっても良いだろう。

「酒を飲んだ分だけ強くなる」訳の分からない男のロマン溢れる設定が良い

「気を練って強くなる」とか「気合を入れて力が増える」とか、そういうものが基本であるところに、「酒を飲んで強くなる」という訳の分からないものをぶっこまれたら、それがどういうものか気になるのは当然だろう。タイトルを見ただけで、序盤から「どこで酔拳が出てくるんだろう?」「酔拳ってどのようなものなのだろう」と興味深く見てしまっている自分がいたのを覚えている。

「酒を飲むだけで強くなるの!?」という疑問に対して、「しっかり努力が必要」という回答が用意されているのも良い。私の当時のイメージでは「酒飲み」というと「大人のだらしない男」とつながっていたからだろう。その固定観念が丁度よいギャップになって、どんな道でも極めるのには尋常ではない努力が必要なんだというメッセージがダイレクトに伝わってきた。酔っ払いの拳法なのだが、しっかり型もある。学生時代に不良がかっこよいという風潮になることがあるように、「だらしがないがやる時にはやる」という設定がかっこよく感じるのだろうか。この酔拳を見て、当時まだ未成年だった私はどれだけ水やお茶を飲んで酔拳のものまねをしたか分からない。それだけインパクトのある斬新な設定であった。

おもしろ師匠と弟子の絆もまた良い

私の勝手な見解ながら、本作品はフェイフォンの「師匠」がいて初めてヒット作品になったと感じている。歳はとりすぎ、ルックスは良くない、戦い関係なく酒ばかり飲んでいる、日常生活が堕落している…と、まったく強くなさそうな師匠だが…強い!個人的には大好きで、本当に良い味を出していると思う。この風貌の師匠が、エリートでイケメンだが生意気で自意識過剰なフェイフォンを実力でも圧倒して、厳しく指導していく姿を見るのがなんとも爽快な気分になるのである。この強い個性を持った二人が修行する…となった時には、一般的な熱血真面目系の修業にはならないだろうと何となく分かるのだが、師弟間でお互いのプライドや、体たらくなところがこれでもかと表れるコミカルな駆け引きには何度も笑わせられた。

師弟で色々なことを乗り越え、フェイフォンも確実に力をつけていき、絆は深まっていく。色濃い個性がしっかりぶつかり合ったからこそ、お互いに尊敬の念を持つことができてより深い信頼関係を築くことができたのだろうと思う。時間を経るごとに表面だけでなく、心底からの師弟関係になっていく様子が自然と伝わってきた。映画を観終わった後、成長したフェイフォンと師匠との直接対決を見てみたいと思い、どちらが勝つかと言うことはよく友人と討論したものだ。笑いたっぷりの修行シーンが印象深く、師弟のこれからをついつい想像したくなる。

強敵との対戦が熱い!!最後は何でもありだが気分爽快!

本作品、相手がとてつもなく強い!殺し屋で「無影拳」という最強の拳法を使う。名前のカッコよさでは確実に「酔拳」よりも上だ。この経的にはフェイフォンの父親であり、道場の師範代も全く歯が立たず。一昔前の映画で特殊効果が少ない分そう思うのかもしれないが、その強さがシンプルでとてつもなく、「地力が違いすぎないかい?」と思ってしまうほど。それでもフェイフォンは師匠から習った酔拳を使い、さらに最強の酒(三鞭酒)を飲んで最強になるか…という展開。しかし、そこで逆転勝利で終了とならず。最後の最後まで観る人をいい意味で裏切ろうという徹底ぶりには感服!!対戦相手がさらにその酔拳に対応し、フェイフォンも技を忘れるという場面には、さすがに「ここでまた笑いを入れてくるか!」と思った。たった数個の型を忘れるなんて、フェイフォンは確実に頭の中も鍛えるべきである。

最後に自分自身で新しい酔拳を生み出すという展開は全く予想できず、ここまで来ると何でもありだなとは思ったが、強敵に対してコミカルな技でどんどん形勢逆転していく様子は気持ちがスカッとした。生意気で未熟者だったフェイフォンが、修行を通して強くなり、誰かを守るために戦うようになったことには素直に感動した。やはり敵は強大であればあるほど良いのだろうか。スカッとして分かりやすいハッピーエンド、私は大好きだ。

終始コメディとアクションのバランスが最高!!最後まで酔いしれる!

「酔拳/ドランクモンキー」という題名の時点で、ただのアクション映画でないことは容易に想像できるこの映画。笑いと真剣さのバランスが本当に最高と感じる。展開もスムースに進むので、まったく飽きずに時間が過ぎていく。実はこのバランス、当時俳優として伸び悩んでいたジャッキー・チェンの持ち味を最大限に発揮されるように調整されていたとのこと。映画が成功するか否かの前に、ジャッキー・チェンという俳優が映画関係者からいかに愛されていたかが分かる逸話だ。主人公フェイフォンのやんちゃだがどこか憎めない性格と、対照的で厳格な父親、そして風変りな師匠、圧倒的な強敵という構図もシンプルで分かりやすい。アクションは本当に素晴らしいし、迫力満点。映像の作り方も、本当にアクションが見やすくて演技に見えない。笑いとシリアスがメリハリ良く表現されていると思えば、この二つがうまく混ざりあってさらに面白みを増す。シリアスだけではない人間味溢れる情景が描き出されているからこそ、自然と映像に引き込まれていく。

ムカついて、笑って、泣いて、驚いて、熱中して… 映画を楽しむにあたって必要な内容がぎっちり詰まっている作品である。ただのアクション映画でなく、かといってコメディでもない。この絶妙なバランスに、一体世界中でどのくらいの人々が酔いしれたことだろう。

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