まるで宝石のような物語 - タクミくんシリーズの感想

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タクミくんシリーズ

4.504.50
文章力
4.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
4.50
演出
4.50
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まるで宝石のような物語

4.54.5
文章力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.5

目次

こんな風に愛されたい

人里離れた山奥に建つ私立祠堂学院高等学校。二年生に進級した葉山託生が入学式早々、高林泉からの嫌がらせを受ける所から始まるこの作品を、当初は「よくある話し」ぐらいにしか思いませんでした。しかし、託生くんの人間接触嫌悪症や、同室となるギイのあまりの素敵さにすぐに心を奪われました。それに、ごとうしのぶ先生の文章はスラスラと読めて、途中で止める事が難しい程です。特に、託生くんが食堂で野上からカレーを掛けられる所でギイがかばう所は本当に胸がキュンッとしました。あんな風に自然に守れるギイは、本当に恰好いいです。その後、音楽堂に閉じ込められた託生くんは暗がりの中でギイに「好きだ」と言われます。逃げようとする託生くんを追い詰め、今風に言えば「壁ドン」で逃げられないようにしてからのキスシーンが印象的で、託生くんがつい人間接触嫌悪症である事を忘れてしまっても仕方がありません。しかし、意外なのはここからです。音楽堂から無事に脱出出来た託生くんに泉がガラスの破片を振り上げた時、まさかの吉沢くん登場です。ここで、いかに吉沢くんが泉の事を大切に想っているかが分かりました。彼が守りたかったのは託生くんではなく、きっと泉の方だったのです。ギイに対する純粋な気持ちから託生くんへの嫉妬心を募らせる泉が吉沢くんには辛かったのです。彼ほど泉の事を愛している人は居ないし、泉よ吉沢くんの事を好きになってくれて嬉しかったです。そして、託生くんとギイは両思いとなったものの大した進展はしません。それは、託生くんの人間接触嫌悪症のせいです。そんな彼をギイは辛抱強く待ちます。普通、出来ませんよ。両思いだと分かった人と同じ部屋で指一本触れずに耐えるなるて。男としての本能を思うと、ギイがどれだけ託生くんを愛しているかが分かりました。無理矢理にでも抱こうと思えば出来たはずなのです。そうしないのは、ギイが欲しかったのは託生くんの身体ではないのです。彼の心ごと欲しかったのです。そして、託生くんが実の兄にされた事で人間接触嫌悪症となった事が明かされるシーンでは、かなりシヨッキングな過去のはずなのに、穏やかな文章で綴られています。『タクミくんシリーズ』は、一見すると暗くなってしまう話しが穏やかに進んでいきます。まるで季節がゆっくりと変わって行くように。まるで宝石がキラキラと輝くようなこのシリーズが私は大好きです。

彼の気持ち

ギイの親友である赤池章三くんですが彼は何だってあんなに冷静なんでしょう?普通、友人が同性愛者だと知ればかなり動揺します。ましてやそのパートナーも知っているとしたらもっと複雑です。もし私が親友にそう告白されたらしばらくは今まで通り接する事は難しいです。そもそも彼はなぜ祠堂学院に来たのでしょう?幼い頃から何も出来ない父親との二人暮らしで、家事全般を得意とした彼には、幼馴染の奈美子ちゃんという存在が居ます。気立ての良い可愛らしいお嬢さんです。互いに好意を持っているみたいなので、離れていて平気なんでしょうか?大体、彼が動揺したりするんでしょうか?三年生の柴田先輩に思われていると知った時すら彼は平然としてました。風紀委員としてなんでもキッチリこなす彼の唯一の息抜きがタバコを吸う事だけなんて、そんなのつまらないじゃないですか。赤池くんが奈美子ちゃんと電話で話しているシーンや、あのチャーミングなお父様の事を思い出しているシーンがもっとあったら良かったな。高校生らしく青春を謳歌している赤池くんというのもなかなかに魅力的だと私は思います。唯一ノーマルというキャラクターなので脇役に徹するのは仕方がないのですが、時々だけクローズアップされないのは淋しいです。

逆に色っぽい

『タクミくんシリーズ』が最初に発売された1985年の頃はまだBLというジャンルはありませんでした。同人誌の一部の少女達がこっそりと楽しむ感じだったのです。今はもう「やおい」という言葉も聞きませんよね。隠れてコソコソ見ていたものが急に脚光を浴び始め、バラエティで若い女性タレントが「私、BLが大好きなんですっ」と言った時には、「ええっ。そんな事言って良いのっ」と思いました。表現方法も今とはかなり違い、最近のBLってとにかくすぐにベッドシーンですよね。昔は長いストーリーがあって最終的にベッドシーンというのが多かったんです。それはそれで何かじれったいのですが、すぐにヤリまくっているのも何か冗長がありません。「えっ。これってどうなってるの?」という表現が逆に色っぽく感じるのです。露骨な表現だけが全てではありません。わざと遠回しな表現の方がより耽美的だし、肉体関係だけが恋愛ではないと思うんです。男同士だから、言葉よりも身体の方が気持ちは伝わる。というのも分かりますが、最近のBLがただ「それだけ」を目的に作られている気がして、少し淋しく感じます。

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