こんなの普通じゃありえないっ!
イメージをここまで崩されるとは思いませんでした
私は、ホラー系が大の苦手です。子供向けの妖怪アニメが限界なぐらいなのです。特にバンパイアやフランケンシュタインが出るような番組は一切見ませんでした。だって、架空の話しとは分かっていても、バンパイアが若い女性の生き血を求めて彷徨う姿は恐怖以外の何物でもありません。ただ、彼らが太陽の光りやニンニク、更には十字架を嫌うという弱点が唯一の救いです。小さい頃に何も知らずに父親が掛けていたバンパイアの映画を見た時は、慌ててニンニクを食べたものです。ですから、この『マスターモスキートン』も最初は見る気がありませんでした。ありませんでしたが、第一話のサブタイトルである「ジヨシコーセーとバンパイア」という一分に惹かれて見てしまいました。そして、こんな面白いバンパイアが居るんだと大笑いしていました。イナホと血の契約を結んだバンパイアであるモスキートンは、あらゆる常識から外れていました。餃子やニンニクラーメンを好み、太陽の光りも平気。更にはイナホに命令されても喜んで服従しているという。今までこんなバンパイアは居ませんでした。そして、そんなモスキートンが世界史の先生として平気で授業を教えているのですから、こんな発想が出来るあかほりさとる先生は一体どんな思考をしているのでしょう?とにもかくにも、モスキートンのおかげで私のバンパイアに対する意見はガラリと変わりました。
結局は満たされない
ストーリーとしてはかなり面白かったです。ヒトメボレ家に代々伝わる魔導書を頼りに、「命でお金は買えないのよっ!」がモットーな女子高生イナホと、彼女と血の契約をしてしまったモスキートン達が織りなす奇想天外な冒険ラブコメディという感じでした。途中から加わるナイスバディな魔族の女性ウルフレディと彼女を慕う見た目はターミネーターな心優しいフランキーも加わり、更に賑やかになっていきました。そして、ただの冒険ではないのがこの作品です。そうですっ。これはモスキートンとイナホのラブストーリーなのですっ。最初、イナホは血の契約によってモスキートンと行動を共にします。彼の事はおそらく便利なボディーガードとしてしか見ていなかったのでしょう。ですが、彼の優しさや身を呈して自分を守ってくれる姿に、イナホの心は動いたのだと思います。途中、モスキートンは再び灰になります。イナホは急いで使い魔のホノオとユキと共にモスキートン復活の儀式を行います。自分の血を一滴たらし見事にモスキートンは復活するのですが、彼の意識は覚めないままでした。そして、なぜか坂道を棺と共に下りながら彼女はそれでもモスキートンから離れませんでした。それぐらい、彼を大切に思っていたからです。ですが、この後目覚めたモスキートンの首を締めたのは、やっぱりイナホだな。と、思いました。「お金が何よりも大切」と公言して憚らない彼女ですが、やっぱりお金だけで満たされる事などないのだと教えてくれるシーンでした。そして、後半になるとギャグよりはシリアスなシーンが増えて来ました。モスキートンをはるか昔から敵視するサンジェルマン伯爵が現れたからです。彼は言葉巧みにイナホを惑わします。ですが、モスキートンの深い愛情を知ったイナホはサンジェルマン伯爵の、元を去りました。そして、野心だけのサンジェルマン伯爵はモスキートンによって倒されてしまったのです。愛してくれる人が側に居たのに、です。愛を選んだモスキートンと、野心だけのサンジェルマン伯爵が対比された話しだったな。と、後からしみじみ思いました。
さすがです
モスキートン役をされている子安武人さんですが、私は子安さんがデビュー間もない頃に参加した『天空戦記シュラト』でその声を知りました。その時に演じたガイという役も、とても複雑なキャラクターでした。誰にでも優しい少年でしたが、宿命によって飛ばされた異世界で心を操られかつての親友と戦うというものでした。そんな複雑な役を見事に演じた子安さんの演技力と美声が好きで、彼が出ている作品はほとんど見てました。このモスキートンも、普段は温厚でイナホに頭が上がらないダメダメなバンパイアですが、一度敵が現れるとホノオとユキを従えてイナホを守るという、ある意味で二面性を持っています。更にイナホの前世であるカミル・イナホ・カミーラとのシーンではバンパイアらしいクールなモスキートンでした。こんな風に一人のキャラクターを巧みに演じ分けられる子安さんは、本当に凄いと見る度に思います。そして、イナホ役の今井由香さんにも驚きました。少年キャラを演じている声しか知らなかったので、イナホの声を聞いた時には驚きました。一見高飛車で小生意気という本来なら嫌われそうなこのキャラクターが、どこか愛らしく聞こえるのは、きっと今井さんの声のおかげだと思います。
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