ほっこり男4人組の日常
夏樹の恋
主人公の夏樹は本当に乙女な男の子。割とイケメンだし、全然アリだと思うのだが、何しろ恋愛には奥手で自分からは行動できないタイプ。4人の中では一番ヘタレだろうね。でもそのまっすぐさがみんなの心に響くというか、相手の小早川杏奈も人づきあいそのものが苦手な人で、夏樹のヘタレっぷりでも十分リードできている。確実に杏奈の心は傾いていっているのに、夏樹は鈍感だからあまり気づけていなくて、それをつよぽん、まっつん、恵一にからかわれているのがまた愛しい奴である。
最初はいい感じで、少しずつ歩み寄っているのが楽しかったのに、まさかこの手のゆるゆる脱力系の漫画でも横恋慕が出てくるとは思っていなくて、正直驚いた。もっちーはイケメンなうえにバスケ部で、ぐいぐいと杏奈に迫るし、夏樹とは違って同じクラスで親睦を深めることも容易い…実にいいポジションにいるから、夏樹はハラハラしっぱなしだった。
付き合えるようになってからだって、いろんなことがあったね。ゆるぎなく笑顔でいられるのは、夏樹が優しいからだし、杏奈も天然なりに考えて行動してくれているからだと思う。付き合えるまでのドキドキ感がすごく楽しかったから、うまくいってからはちょっと物足りなさも感じたけれどね。男4人、確かにイケメンなのに、つるんでいるのが楽しくて、本気で遊んで、本気でケンカして、仲直り。ちょっと性格が残念なところも、趣味が偏っていることも、変に気遣うことなく一緒にいれるってのが憧れ。爽やかで気持ちのいい漫画だなと思う。
つよぽんの恋
序盤のうちにゆきりんとお付き合いを始めたつよぽん。告白はゆきりんから…だから、全部つよぽんは受け身なんだけど、勉強は常に上位キープで、自分のやりたいことをきっちりやるタイプ。一見ダルそうに見えて、やるべきこと・やりたいことをしっかり見据えて行動している彼に、ゆきりんは射貫かれてしまったんだと思う。
ゆきりんはつよぽんにベタ惚れなんだけど、つよぽんも、ゆきりんがそういう彼の性格をちゃんとわかってくれて、先回りして答えてくれて、いつも笑顔でいてくれるところが大好きらしい。温度差があるように見えて、ちゃんと想いあっているから、4人の中では一番安定のカップル。夏樹たちが頑張っている間に、着実に二人の仲を進めているのもまた…やることやってるね!萌だわ。
夏の海ではうちわの後ろでキスしてみたり、自然と手をつないで歩いてみたり。知らないうちに旅行も楽しんで、他の3人の恋を温かく見守るポジション。つよぽんは傍観者だけど、ゆきりんはまりや杏奈とも友だちだから、友だちの恋を守ろうって頑張っていて、かわいらしい。そこを許しているつよぽんもまたかわいい。
そんな安定の2人だったからこそ、進路問題でこじれそうになって本当に辛かった。つよぽんは東京の大学を受けるって決めてて、ゆきりんにはそれを言ってなくて、離れることを簡単に選択してしまったかのような…のちにそれは誤解だとわかるんだけど、もっと早く、つよぽんが愛をささやいていればこんなことには…!と思うよ!やはり、いくら相手が自分の事をわかってくれているという自信があったとしても、言葉にして伝える努力は怠ってはならないものだ。
まっつんの恋
まっつんは前途多難。百合疑惑のまりに恋しちゃったから、もう引っ掻かれるはツバつけられるわ、散々な目にあわされて…せっかくのチャラ男イケメンも台無しに。それでも報われない恋を必死で守っているまりに恋しちゃったわけだから、もう自分も本気でぶつかっていくしかない。かわいいって思っちゃったんだから、しょうがない。大事にしたいって心の底から思えるからこそ、簡単には手を出せないものなんだと知っていくまっつん…これもまた、大人の階段を上ると言うことだろうか。まりの頑ななまでの抵抗もなんのその、必死で喰らいつくまっつん、イケメンだったよ。
大嫌いだと思っていた相手が大好きになるときは一瞬で、それは自分では認めたくない感情。だけど、認めざるを得なくなってあとはぶつけるのみ。まりもまた、杏奈だけでいいと思っていたのにそれでは不十分になってしまい、他の人の優しさ、男子がみんなそんな野蛮な人間ではないということなど、まっつん含めた4人組と関わることによって理解していく。夏樹の恋はお互いに不器用で、つよぽんの場合は落ち着いた大人の雰囲気、恵一は年上から年下への転換、そしてまっつんの場合はお互いに大嫌いだったはずの関係性が逆転するという不思議。それぞれに、よくあるようでなかった、絶妙な部分を突いた恋になっているよね。そしてそれは4人の男友達なしでは絶対に成功しなかったはずの恋。実に微笑ましく、男友だちっていいなーって本気で思えるね。キメるときはビシッと一人でキメなきゃならない・そしてそういうときは誰も手伝ってくれないっていうのもいっそ清々しい。
恵一の恋
ドSであるため、常にドMな彼女を探してきた恵一。元家庭教師が恵一のドSが物足りなくなって離れてしまってからは、しばらく女関係は音沙汰なかったね。4人の中で一番自由で、一番寂しがり屋なのが恵一だったと思う。なんだかんだ、4人でつるんで帰宅部やっていることが楽しくて、他の3人が恋の方向へ忙しくなった時、本当にかわいいやつだなーって思った。それを見抜いている感じのたいぞーもまた素敵。お父さんって言うよりお母さんを感じたよ。
まっつんの妹からのアタックがあって、恵一はそっち方面に行くことに。調教してやるんじゃない恋も覚えていくことになって、実に大変そう…プレイを楽しむのでなく、心通わせた先にある恋人の関係ってやつを学ばなくてはならなかった。スポーツ万能、イケメン、友だちづきあい良し、優しさ良しの恵一だけれど、ドSなことも、勉強ができないことも、いつも元気そうだからといって元気とは限らないことも。彼女には全部を知ってほしいね。年上になら何でもわがまま言えただろう。それが今度は聞いてあげなくちゃいけない立場になって、むしろそうしたいと思える相手に出会えたことが、恵一にとっての何よりの成長だね。
お兄さんはいったいどんなプレイを見せてくれるのか…それがとても気になっているよ…。
みんなが主人公級のおもしろさ
どのキャラクターたちもみんな素敵。カッコいいし、絵がいいなーっていつも思いながら読み進めた。別に共通の何かがあるわけじゃない。みんなそれぞれが、それぞれの方向を向いてがんばっている。でもつるんでいて楽しいのはこのメンツなんだ。男子のこういうゆるさとか、テキトーさ、大事なときに協力できる熱さがいいよね。女子同士では絶対にありえないこの距離感がすごく好きで、うんうん言いながら最後まで読み進めることができてしまう。
基本ゆるい日常漫画になっているので、ネタがある限り続けられるような漫画。かなり長編になったけれど、最初から最後まで、彼らの魅力は衰えることなく表現されていたなーって思う。恋物語が主になってしまうけれど、男友達ってそれだけのつながりじゃない。キモいところもあるけれど、爽やかな部分だってたくさんある。どちらかと言えばキモい部分も通り越せばいっそ気持ちのいいくらいだ。難しいことはわからないし、うまく説明もできないけど、笑って、楽しくて、一緒にいる。ただそれだけなのに、男メインの漫画って楽しくてしょうがない。
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