ひよりを育てるお話
恋というよりもお友達づくり
交通事故で高校1年生の最初を休んでしまったひより。まさかの12月から高校生活が始まるという、とんでもない遅れをとってしまった。もともとの気の弱さもあり、ひよりはすっかりビビッて友達作りもままならず。でも小学校からの親友りっちゃんや、ひよりをめっちゃかわいがってくれる夏樹、そして結心たちのおかげで、彼女の学校生活は1日目にして今までにない色を見せる。
表紙はずーーーーっと14巻まで結心とひよりなので、疑いようがなく彼らの恋物語であることはわかっていた。身長差50センチという驚異の差から、心の大きさの差だったり、友達の多さだったり、いろいろなものが結心と比べられてしまうひより。そのままではいけない!と奮起し、少しずつ強くなっていくひよりをかわいらしく描いている。
とにかくひよりが…かわいいので、ついつい応援したくなってしまった。とりあえずびびりで泣き虫なひよりには、若干あざとさも感じられるけど、許したくなってしまう理想のフォルムを持っていたね。高校1年生の思い出に、と写真を撮ったときの内また具合は、あまりに予想通りで「うわー…」と思ったけれど、純粋に狙ってないひよりだからこそ許されるなーと思った。
もちろん恋物語だけれど、トータル的には、どうやってひよりが友達と打ち解けて、新たな友達を作っていくのか、というストーリーになっていると思う。結心やその他の友達の立場もお母さん・お父さんって感じで、たくさんの優しい友達に囲まれて成長していったひよりであった。その分、まさか自殺しようとするレズの秋穂が出てくるとは思わなかったから、そこは驚きだった。今までのひよりでは考えられないインパクトだったね。
モッテモテ結心とおどおどひより
気さくで優しく、どんな人とも打ち解ける結心。心も広いし、モテるし…いやだわー…だからコウを応援したくなるんだよ。何がすごいとか、めっちゃバスケができるとか、めっちゃ頭がいいとか、そういうことじゃなくて、どちらかというと不真面目な感じで気さくなほうがモテるよなー…。早弁する男子とか、少女漫画の中の鉄板。いつまで経っても、早弁へのロマンって尽きないところがある。先生への反抗の1つでありながら、バレてもあまり影響ない、いい感じのヤンキー感が出る。ただ、ひよりのスカートがめくれてて、パンツのひよこかいってめっちゃ笑うところはなんか…嫌な感じ。そしてそのあとのフォローが謎。バカにされたことに傷ついたはずなのに、いつの間にかお友達をつくりたいとかどうにかしたいって話になっていて、ん?ってなる。そこで吹っ切れて好きになっちゃうひよりもまた謎。
ひよりのほうは、典型的な…弱い感じで、ただただかわいい女の子。何か特技があるってわけじゃないし、どこが魅力か?って考えてみると、フォルムがかわいいことと、意外にも自分で考えて行動できるところかなーと思う。男の子でも女の子でも、ひよりを見ているとほわーっとした気持ちになるはず。
2人の恋は、結心がひよりをとにかく優しく包んでいて、ひよりは兎にも角にも大事にされているし、毒がない。妃とのイベントを通して急速に近づくことができたひよりだったが、付き合う前・付き合った後での関係性の変化が少ないよね、この漫画は。
コウのスパイスがよかった
ほわほわの安定カップルだったこともあり、コウの存在はかなり重要だった。なんでも直球に言葉を言ってくれて、優しくするんじゃなくて厳しくしてくれる。少しはいじめの要素もあるけれど、全部に愛があるんだよね。結心よりも先にひよりの悲しいときに気づいてくれたり、支えになってくれたり、その想いを告げたときは冗談だってごまかそうとしたり。ツンデレの真骨頂を見せてくれた。おふざけシーンでのコウのフォルムがまたツボで、いいんだよね。あの何にも興味がなさそうにしている表情が萌えだった。また、ひよりが「コウくんしか頼れる人いなくて…!」っていう言葉に弱いコウがすごく残念で、実にかわいい。
りっちゃんはひよりに恋するコウに気づいていて、それでも告白した強き女の子。結心ともうまくいっているのに、コウからも想われて、さぞ憎たらしかったことだろう。そこを乗り越えて、自分の気持ちに正直に意見をぶつけ合うところは、ほんといい子やなーって思った。どいつもこいつもかわいい。りっちゃんのように、活発で元気な女の子が恋してモジモジしまくるのも萌だよね。コウより若干背が大きいから、コウは絶対コンプレックスに思うだろうなー。
ひよりと結心を揺るがすものってあんまりなくて、秋穂のときなんて、今更妃のこと出すあたり、もはやネタがなくなったんじゃないだろうかって思った。最後のほうになって実は結心のことが好きで…というネタにしないように、苦肉の策でひねり出した気がする。
自分から一歩踏み出す
臆病だったひよりが、少しずつ大人になって、強くなって、結心やりっちゃん、その他の友達みんなと楽しい学校生活を送っていく、微笑ましさがこの漫画のウリだろう。きっと最初のころのひよりのままだったら、何もできずにおどおどして、また学校に来れなくなってたかもしれない。自分から勇気を出して、気持ちを伝えること。それだけで反応が返ってくるし、たいていは仲良くなりたいから話すのである。
自分から動き出す、ということは何歳になってもなかなか難しいことで、思い通りには事が進まないことに対してただ腹を立て、それで終わってしまうこともしばしばある。漫画の中に出てくる登場人物たちっていうのは、そういう教訓も含めて、強く生きることをいつも教えてくれるよね。どのジャンルの漫画でも、自分から一歩踏み出せ!って背中を押してくれる作品がほとんどだし、世の中みんな背中を押されたがっているってことも、よくわかってくる。
知りもしないでただ周りに対して恐怖感を感じていたひよりが、逆に怖がっていたことのほうが失礼だったんだ・自分から道を切り開いていけば、案外とリアルなものはすぐそばに存在しているんだって気づいていく。その過程を、ゆっくりと楽しむ漫画だと思う。14巻続く内容のようには思えなかったけれど、王道がいつも読者の心を打つよね。
優しい気持ちで最後まで
結心、ひより、りっちゃん、コウ、夏樹、レイナなどなど…みんながハッピーで、微笑ましい気持ちで読める漫画である。
少し物足りなさを感じるとすれば、高校生のお決まりの悩み・進路問題。この点においても、ひよりは何も考えていなくて、焦っておどおど…結心に「大学に行ってから考えてもいいんだよ」と言われて納得!…という流れがあった。
いやいや、高校生の時に考える将来のことって、ものすごーく大事なんだよ!と言いたい。高校生のうちに何も考えないで、大学行ってから苦労するパターンになりかねない。だからここはしっかり考えてほしかったよ。大学で考えればいいって言って就職難にぶち当たる若者が多いというこの現状。人気の漫画が助長するようなストーリーをつくると本当に困ることになると思うわ。もちろん、先の事はわからないし、高校生のときに見定めた夢からそれることは大いにあると思う。だからと言って、考えるのは後でいいやーって流しておくような決断の仕方は本当にやめておいたほうがいいよ…って思うんだよね。社会人だからこそ、このあたりはシビアに考えてしまうところだ。少女漫画にそこまで求めてもね…とは思いつつ、楽観的な結心と、決断を他にゆだねるひよりにイラっと来た人もいるかもしれない。
何はともあれ、かわいらしく、ほっこりする少女漫画として、人気は高い作品だ。
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