家族の好きと恋人の好きが違う - 龍の花わずらいの感想

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龍の花わずらい

4.004.00
画力
3.50
ストーリー
4.00
キャラクター
4.00
設定
3.75
演出
3.75
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家族の好きと恋人の好きが違う

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
3.5

目次

女の子が強いようで弱い

中華風なファンタジーと言えばドラゴン。中華っぽい豪華な部屋にチャイナドレス…必ず登場するよね。この物語の中では、主人公はドラゴンの末裔である女の子。完全な龍に変身が出来て、雨を降らせてくれたり、天災から守ってくれたりする。男がやってもいいようなキャラクターではあったけれど、女の子がドラゴンになって街を守っているっていうのもなかなかかわいいもんだなーと思ったね。

大昔に人とドラゴンとで恋愛して、人のためのオアシスが創られた。そして、脈々とドラゴンの能力は受け継がれてきて、オアシスは安泰だった。人の血が混ざることによって、ドラゴンとしての力は弱っていくんじゃないか?って気がするんだが、シャクヤは代々の龍の中でも能力の高い個体だったらしい。龍の婚約者は、代々5つの貴族の家から相手が選ばれて、そこから龍が婚約者を選ぶシステム。今回は、シャクヤの相手にはクワンが決まっていて、シャクヤもクワンを小さなころから婚約者として意識してきたし、確かに大好きだった。それがまさかのもう一人の婚約者登場により、揺らぎを見せるというストーリーになっている。

シャクヤがドラゴンとしての能力がとびきり強いとはいえ、やっぱり恋愛においてはその能力は役に立たない。人間の女の子の思考を持っているから、繊細で、戸惑いもする。強大な龍の力は頼りにされるものでありながら、利用されてしまう能力でもある。そこをクワンとルシンがどう行動し、守っていくのか。そしてシャクヤが誰を選ぶのか。1巻ではどちらを選ぶか全然わからなくて、ハマっちゃったのである。

2巻からはルシンで決まり

ルシンは、クワンとシャクヤとの仲を邪魔する、当て馬としての登場の恐れもあった。だけど実は、シャクヤとルシンの小さなころのエピソードがあって、それがどんどん2人の距離を縮めていくんだよね。ツンツンしながら大事なときは守ってくれるクワンとは違い、時には嫌われ役を担い、時には最強に愛を示してくれて、時にはやきもちも焼かせてくるルシン。そのギャップがまたシャクヤには刺激的だったんだろうなー…。いつも安心できるクワンの愛とは違う、ルシンの愛情表現。そして、クワンがルシンを排除しようとするのに、ルシンはクワンのことも大切にしようとする。それにも気づいちゃって、シャクヤはルシン大好きになっていくのだ。

シャクヤの力が大暴走したとき、逆に力が失われてしまう可能性が出た時、苦しいとき側にいてくれたのがルシンだった。「私にはクワンがいる」ってずっと考えてきて、クワンを裏切ることなんてしたくないって思っていたのに、どんどんルシンに惹かれていったシャクヤ。恋心に反応して腕の入れ墨はどんどん増え、自分の気持ちが傾いてきたことを信じざるを得なくなっていく。っていうか、この入れ墨増えるシステム、めっちゃいいよね。わかりやすいし、こんなふうに自分の気持ちを自分でも他人からも確認することが出来たら楽なのになー…って思った。浮気も判断できるしね。ただ、この物語の中では、最終的に花を自分で見なくたって、どっちに気持ちが向いているかってことをちゃんと自分で判断し、向き合っていく。人が花で判断するなら、自分の腕に筆で花を描こう。これが私の気持ちだって示そう。シャクヤの強い気持ちを表現する、いい演出になっていた。

裏切り者の恋

クワンは結局悪い人だった。シャクヤに取り入って、自分の故郷を救うために、もぐりこんだ刺客だった。…そりゃ無理だよね。愛されないわ。シャクヤはね、ちゃんとクワンを好きだったと思うんだよ。それは恋ではなくて、家族に対する愛だったのかもしれないけれど、それでもクワンが普通に頼みごとをしたら、シャクヤはやってくれたはず。なのに、利用してやらなきゃ!って気持ちでずっと来てしまったから、自分がシャクヤをどう想っているかが抜け落ちていたんだなーと悲しい。…ルピナはいつもいいことを言うわ。

番外編でのクワンは、もうただただかわいそうだったなー…。失って初めて、シャクヤの好意が自分にとって大事なものだったのかに気づかされたクワン。罪を償うために5年間服役している間に、シャクヤは美人な女性になっていて、「この人が俺のものだったはずなのに…」って悔しい想いをしたクワン。リンドウの花の数に安心し、シャクヤの気持ちを見ようとしなかった間に、もう負けていたんだね。

しかも、ルシンにすら優しくされて、すげーみじめ。人に優しいということがどういうことか、クワンも勉強になったことだろうな…クワンだって、悪い人ではなくて、苦しい気持ちでシャクヤを利用しようとしていただけの、かわいそうな人。これからは、ルシン、シャクヤ、クワンの3人で、穏やかな時を刻めると思う。

負けず嫌いのクワンが、「ルシンが死んだら俺を婿に…」って願っているのが、唯一かわいいなと思えたところ。初めて自分の願いを口にできた気がするよ。

決められた恋も自分で求めた恋も本当

クワンに対していだく安心する気持ち・ときめく気持ちも本当だし、ルシンに対して自分から飛び込んでいきたいと思う気持ち・ドキドキが止まらない気持ちも本当なんだよ。じゃーどっちが恋なんですか?って言われたらちょっと難しいところで。シャクヤの場合は、クワンへの気持ちが家族愛に近かったってことだと思う。別の女性だったら、まったく逆の解釈をしたかもしれないしね。どちらを選択するかはヒロインによってまったく変わってくると思う。何が本当の恋なのか?ってことではなくて、あくまで、シャクヤが選んだ道として解釈したほうがいいだろう。

小さなころから、クワンを自分の婚約者なんだと信じて、それが悪いことだなんて思わずに、たくさん気持ちの準備をしてきたシャクヤ。一緒に生きていく人だからと、いいところを見つけて好きになっていったシャクヤって、相当乙女なかわいい女の子だなーと思う。ルシンとの関係は、むしろ印象最悪のマイナスからのスタートを切ったけれど、いいところしか見てこなかったクワンとは違い、悪いところも、素敵なところも、自分しか知らないことも知れたルシンのほうが、年数ではなく気持ちの厚みが違うんだと思う。

一つの側面を見つめて生きていくことよりも、やっぱり全部を知りたい!って思っちゃうよね、大事な人ほど。そして、自分から求めてがんばっていくことが大切なんだなーって思うんだ。

チャーミングな癒しキャラも素敵

シャクヤを支えてくれたのは、クワンでもなくルシンでもなく、侍女ルピナだよなーって思っている。彼女がいつもそばにいて守ってくれて、シャクヤの気持ちを代弁してくれたり、道を示してくれたり。こんなに心強いことってないと思う。彼女の恋は叶わなかったけれど、それでも切り替えてシャクヤのお世話をしてくれる…できた女だよ本当に。これからシャクヤに何かが起きても、ルピナがいつも助けてくれるんだろうな~…もしかしたら、クワンとの何かも…いや、それはないほうがいい。いつまでもクワンにはシャクヤを狙ってモヤモヤしててほしいわ。

そしてルーとクー。かわいい…大きくなって凛々しくなってしまうのがもったいないくらい、なんで子ライオンってこんなにかわいいんだろう。この子たちのおかげで、物語に間違いなくかわいさがプラスされたよね。

できれば、もう少しルシンとシャクヤがラブラブしてくれたら嬉しかったんだけどなー…とは思っているが、かわいらしい脇役たちの活躍もあって、ほんわかした雰囲気に仕上がっていると思う。ドロドロした漫画ではないので、爽やかな気持ちになりたいときにはちょうどいいだろう。

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他のレビュアーの感想・評価

「好き」の気持ちにはやはり2種類ある気がする

主人公が完全な龍になれるというファンタジー人がドラゴンの末裔で…という話はありきたりだったはずなのに、まさか主人公、しかも女の子が完全な龍に変身ができるっていうのはなかなかないなーと思いました。たいてい、男の子のほうがドラゴンになり、普通の人間の女の子と結ばれるっていうストーリーが多いですからね。そして、ドラゴンの変身がとけたあと、シャクヤは真っ裸なわけです。ちょっと恥ずかしい…とは思わないのだろうか…誰も恥じらう人がいなかったので、まぁドラゴンに守られたオアシスでは当たり前のことなのでしょう。大昔に人と龍が恋に落ち、人を守るオアシスをつくった。そこから、ケンカしないように代々5家から婿を選び、人と龍はお互いを支えて生きてきた…そういう設定の中で、龍の力ってどんどん弱体化していきそうな気がするんですけど、シャクヤはなぜかすごいチカラを持ってしまったらしいです。突然変異ってやつでしょうか。...この感想を読む

4.04.0
  • betrayerbetrayer
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