こんなに残酷だったの!?不思議な発見にも遭遇!!
子供の頃の記憶に印象になかった継母の存在!
ヘンゼルとグレーテルは、私の大好きな童話の一つで、母に夜寝る前に読んでもらったり、自分で読んだりして登場人物は、ヘンゼルとグレーテルの仲の良い兄妹と木こりのお父さん、そして悪い魔女で物語も暗記するように覚えていたはずだった。あれから何十年たった今、読み返してみると「エッ!ヘンゼルとグレーテルに継母なんていたの?!」と子供の頃の記憶に全くといっていいほど継母の存在がなかった私にとって衝撃的だった。しかも最悪の鬼のような継母!何故幼いころの私には、印象がなかったのか?それが不思議だった。
ヘンゼルとグレーテルの童話の原本は、継母ではなく本当は実母だったと言われているが、あまりにも残酷な実母の為、途中で継母に変更になったと調べてみたらわかった。先ほどの話に戻るが、何故幼いころの私には、印象がなかったのか?おそらく継母は登場していたけれど「酷い母親だ」とかそんな憎しみの気持ちも持たずに、印象になかったのだから存在感もない薄い存在だったのかもしれない。今の私からしてみれば、登場人物の中で、魔女についで本当にありえない存在の継母なのに。
夢を忘れてしまった...今に気づく
ヘンゼルとグレーテルの物語のメインは、なんといってもお菓子の家というのが、幼いころの私の一番印象に残っていた場面だった。「ビスケットの屋根ってどんなだろう?」「砂糖菓子の窓って」等、小さな胸をときめかせながら想像し、ワクワクしていた気持ちを思い出した。けれど改めてこの童話を読んでみると、残酷すぎて、子供の頃に読んだ記憶のギャップが違いすぎて、あのワクワクした気持ちが湧いてこない、確かに子供の頃に読んだこの童話は、美しい絵本に彩られており、子供が読むには、悲壮感の漂う時代背景や極力残酷な場面を省いて、子供に夢を与えるように「お菓子の家」に重点を置き、兄妹で力を合わせて悪い魔女を倒し、家に戻り木こりのお父さんと幸せに暮らしたというように、構成されていたように思う。
しかし残酷な場面は、やはりあったことも思い出した。それは、ヘンゼルとグレーテルが魔女に捉えられて、兄のヘンゼルを食べるために少しでも太らせようと様子をうかがっている場面やグレーテルが隙を狙って、魔女をパン焼き窯?に押して焼き殺してしまう場面だ。子供の私はそんな残酷のシーンにも関わらず「魔女をやっつけたざまあみろ!」と単純に思っていたのだ。
残酷な子供時代を思い出してしまったと、今の私は思うけれど、あの時の私はそれが残酷だと思っていなかったし、リアルに考えていなかったということだ。
童話の背景にあったもの
大人になってから読んでみると、ヘンゼルとグレーテルの童話を描いた歴史的背景が、とても気になり調べてみると、それは14世紀から16世紀頃に、ヨーロッパでは天候による不順が続き、飢饉が頻繁に起こっていたということやキリスト教の改革の影響により、15世紀半ばにドイツが荒廃してしまい、その当時の世の中は殺人や放火、物資や食料の略奪が日常茶飯事だったことが記されていた。子供を養うことが出来ずに捨てたり、人身売買をしていたという悲しい時代背景があったことを知った
子供の頃のあのワクワクした気持ちで、母にヘンゼルとグレーテルを読んでもらったあの頃の私を懐かしく思い出し、そして大人になった今改めて読んでその童話の背景にあった現実を知りとても切ない気持ちになった。
グリム童話は、ヘンゼルとグレーテル以外にも白雪姫やラプンツェル、赤ずきん等も残酷で怖い物語と言われている。確かに恐ろしいけれど、その時代には、実際に起きていたことは事実なのだ。そのことを受け止めながら、もう二度とこのような時代が訪れないように、後世に伝えるために、グリム兄弟は書いたのだと思う。
ヘンゼルとグレーテルを読んで発見したことは、子供の感覚で読むのと大人の感覚で読むのとでは、全く違うと言うことだ。それは、子供は嫌な記憶をすぐ忘れてしまうのだと思った。だから鬼のような継母の存在も忘れてしまうし、恐ろしい魔女をパン焼き窯で焼き殺してしまう場面なんか忘れてしまう。楽しい「お菓子の家」と仲の良い兄妹「ヘンゼルとグレーテル」のイメージしか残っていない。大人はリアルに考えるので、ヘンゼルとグレーテルの父親は臆病者だし、継母は無情な自己中女、魔女は人食いで残酷、ヘンゼルとグレーテルは、森に捨てられてあまりにも可哀想な子供たちとして、夢のような童話なんて思えないというところだ。
短い童話の中に悲しい時代背景があり、それでいて淡々として描かれていて、魅力的で深く考えさせられてしまう。大人になってから読んで、衝撃は大きかったけれど、でも再びこの童話に出会えてあの頃の自分を発見できたので感謝しています。
これからも後世に語り継がれるヘンゼルとグレーテルを心から応援していきたいと思いました。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)