なかなか進展しないから困る - 執事様のお気に入りの感想

身分違いを感じさせない恋

よくあるテーマ。それを超えてお付き合いするのが醍醐味である。しかし、8巻すぎるまで全然身分違いを感じさせない…というか恋に気づいていないからやきもきする。

ヒロインの氷室良も、ヒーローの神澤伯王も、相手がどんな人であろうと身分で対応を変えようとはしない２人である。一切の見返りなく、ただ一緒にいて、楽しく過ごしていく２人。ただそばにいてくれる存在は、お家柄的に伯王にとってはかけがえのない存在。恋に変わっても仕方がないのだ。

庶民育ちの良は、金持ちお嬢様学校に通っているとは考えずに、元気いっぱいに過ごしている。誰かが大変そうなら助けるし、頼まれたら精一杯期待に応えようとがんばる良。いい子。最初から最後まで、ずーっと毒がなくい続けた珍しいヒロインだ。余計なことは考えない、感情がそれを選ぶし、それが正しいと信じるから動ける。こういう気持ちって大事だ。時には間違っていることもあるかもしれない。だから、伯王というパートナーがいるんだろう。

一方の伯王も、自分の力を試したいからと執事の学校に入ったという…よくわからない男の子。執事は何でもできなければならないらしいが、それはわざわざ執事でなくても…と思う。まぁ、自分の家柄にコンプレックスがあって、敢えて反対側に立ってみたいという気持ちもあったのだろう。向坂遥巳の影響もあっただろうが、違う世界に飛び出したい男の子だったということだろう。

仙堂が出てきたタイミングで、何かおもしろい恋の駆け引きでも起こるのだろうかと期待したが、全然揺るがず。仙堂さんも不発。対抗馬としては、同じ執事として面白いことになりそうだったのだが…残念だ。

なんで執事だったのだろう

やはり、いつもは従っている執事の大逆転があることが執事とご主人様の物語の場合におもしろいところだろう。攻めと受けが逆転するというか。でもこの物語ではその「執事」「お嬢様」というポジションにこだわらないことが売りなのであり、あまり伯王が「執事」であることのメリットはなかったような気もする。

危険がないように・順当に進むように…と準備してあげるだけが執事なのではない。成長させ、支えてあげることを念頭に置き、準備してあげることが大事なのだろう。身の回りのお世話だって、経験させたほうがご主人の将来のためだ。レールの上を歩かせるために存在しているのではなく、一緒に歩いていく・協力していくスタイルが、伯王と良のスタイルだ。出会ってすぐにそういう関係をつくれた彼らは運が良すぎる。漫画すぎる。

いずれ妻と夫になるのだとすれば、プライベートも同じなんていうのは嫌なんだけど…伯王と良なら、変わらず共に過ごして高めあっていけるのだろうか。

金持ちだからって悪い人間だってことはないし、金持ちだからこそ、人を雇って雇用を生み出しているのだと思う。それなりに苦労をして、金持ちでい続ける努力もしているはずだ。だから、伯王の父親も責めたくはない。それに、良が真正面から向き合って、わかってくれたのだから、息子の将来を想っての行動だったとわかる。頑固であることは、一長一短があるし、必要に応じて切り替えていかなくちゃならないんだよお父さん。

脇役が常に支えてくれている

たいてい男が複数人数出てきたら、取り合いになるのが世の常。しかし、伯王の側役である庵と隼斗は常に徹底して伯王のことしか考えていない設定だった。ご主人様が恋した良。２人をそっと見守るお友達がいてくれたことは、何よりもよかったなーと思う。恋を成就させるには本人たちの努力も必要だが、やはり周りのサポートが欠かせないよね。

隼斗は天然タラシであり、常に優しく、常におもしろく、常に伯王優先に頑張っている。そりゃーモテる。優しい仮面に皮肉とドSを隠した庵に比べれば、人気は高かった。怒ったときにも本気で怖いのは隼斗。熱血漢って感じ。庵も隼斗も、伯王が一番！という気持ちには偽りがないから爽やかで気持ちが良い。

さらに、庵と隼斗以外にも向坂と碧さんがいる。もはや庵と隼斗よりも、重要だったと言える。庵と隼斗は伯王の友だちとして支えてくれたが、恋の手助けは向坂と碧さんがやってくれたようなもの。的確なアドバイスや対応は、まさに大人！それなしにお家柄を超えたお付き合いはできなかったかもしれないね。伯王と良がいい子だったこともあるし、周りで支えてくれる人たちが清く強い人ばかりだったことも幸いだった。人づきあいするならそういう人たちを選びたいし、自分もそうであるように努めたいものだね。どうでもいいようなものに惑わされて、大切な人とのつながりを失うようではいけない。

良の奪い合いはそれほどでもなく

仙堂さんと期待してたんだけど…寂しかったよ。真琴も、ユキヤも、アルも、さほどでもなかったな。婚約者の存在も大きいものではなかった。むしろ恋の駆け引きなんてできないから、単刀直入に確認してしまうようなキャラクターだからね。もういい！みたいなひどい言葉もあまりお互い使わなかったし、いい子ちゃんだった。それに、お家柄とは別の部分で、仲間が多かったことが幸いしていたと思う。伯王と良の関係性はできあがっていたし、むしろ早くくっついてくれないかなと思っていた。鈍感すぎる…。

伯王と父親との確執について、２人がしばらく距離を置いたりしたこともあったが、構成的には全然心配ではなかったし、どのタイミングで転がってくるのかを予想ばかりしていた。ラブラブ！という雰囲気もあまりない物語になっているので、進みが滞ってくると読むのがちょっとめんどくさくなったよ。父親だって、伯王が息子であり、大事に想う気持ちは本当だとわかった…というところもまた面倒なやり取りだなーと思ってしまったよ。進まな過ぎて。父親としてのプライドやら、金持ちだからこその理屈とか、伯王にとっては嫌なものばかりだったかもしれないが、良に協力してもらって、どこまでも恵まれている伯王なのであった。幸せもんだ。がんばっているからこそ、いい人間が寄ってくるのだと思うよ。邪魔する奴らは多かったかもしれないけれど、文句言わずに乗り越えていった伯王と良は、ただただえらいなーと感心するばかりだ。

楽しい学校生活

意地悪してくる人もいたけれど、伯王の事、良の事、理解して協力してくれる人ばかりで、幸せな漫画だなーと思った。常に味方がいてくれて…ちょっと易しすぎる漫画だけれどね…大人には…。最初から伯王と良ができあがった安定の関係だったからね。全然心配いらないんだもの…むしろここから危ない雰囲気が出たらやばい漫画だよ。

金持ち学校の道楽には実にいろいろあったが、お金を使った遊びっていうのはなかなかおもしろいものもあるらしい。そして金持ちなりにいろいろな悩みがあるのだ。貧乏が美化されることが多いが、どっちのほうがいいとかそういうことはないんだろう。そういうのは抜きにして、単純に伯王と良の恋愛の仕方を、ほのぼのと楽しむ漫画だと思って読むのがいいのだと思う。ロミオとジュリエット並みの大恋愛ってわけじゃないし、なんだかんだ言っても、そんなに悪い人がいないのがいいところ。最後まで安心しきっていいと思う。タイムリーに読んでいたときはそれなりに深さも感じた気がするが、よくよく見るとけっこう浅いかも。自然体でいることは大事だけれど、できあがった２人よりは泥臭さもほしいんだなー。