一時の決着
ようやくクズの逆転
前回の負けから、取り立てにおびえつつ恐怖の日々を過ごしていたカイジの負けっぱなしの人生。金がない恐怖、返却しなければいけない恐怖は計り知れない。正直カイジは一生勝てないのではないか、とも思わせるお人好しぶりと肝心な所でツキの弱さ。黙示録を読んでいる時は智略、情に傾くため痛い目を見たので、今回はそこを学習して克服しているかどうかも読みどころ。結果、ようやく智略と行動力でもってリベンジする話。見ていてハラハライライラするが、最後はスカッとリベンジ完了。しばらく良い気分になれた。でも、きっとその勝利の余韻も長くは続かないんだろうな、とも思えるラスト。今後のカイジのクズ展開にも期待。
どうしても受け付けられなかったあの絵がツボ
本当にスカッとするが、画がどうしても受け入れられない。あそこまでアゴ尖らせる必要があるか、と思っていた。しかし個人的には画よりストーリーなので、そこまで気にならず読める。また、何度も読むうちにそれも1つの良さ、と思えるくらいになった。恐らく読者の多くも、これでこそ福本作品と思われるはず。今ではすっかり大好きな画だが、やはり「上手いか」と考えるとイェスとは言えないため、低めの評価。
福本先生のメッセージ
地下に落ちて、どう復活するかは金と行動力次第。逆転するために借金する覚悟や行動力はあるか?借金するのがクズではなく、負けているのに何もせず救助を黙って待っているのがクズなのだ。また、諦めて思考高度を停止する者もクズなのだ。利根川も世間は貴様らの母親ではない、と言っていた。何もせずに手を差し伸べてくれるのは母親だけ。独り立ちした大の男が、何をくすぶっているのか、と警鐘を鳴らしてくれていた。今回の破戒録では、利根川の左遷もあり強烈な正論を投げかける人はいないが、今日を頑張ったものにのみ明日が来る、を始めとした正論を、帝愛側の悪役が憎たらしい笑顔とともに吐き捨てる。きっと、福本先生の本音はカイジ側にあるのではなく、帝愛側の(黙示録での利根川始めとする)悪役側のセリフに委ね、我ら読者の心を一刀両断、奮起させてくれようとしているような気がしてならない。
最後に
今尚続くカイジシリーズ。しかし定期的に読みたくなるのはこの破戒録。地下チンチロでの『オールピンゾロ』での快勝や、伝説のパチンコ『沼』での『ありがとうございますっ…ありがとうございますっ…!!』からの勝利。勝つとわかっているのに、何度読んでもスカッとする展開は、破戒録にしかないのではないかな、と思う。書いているとなんだかまた読みたくなったので、休日返上で再読しようと思う。
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