愛があれば大丈夫らしい - ミッドナイト・セクレタリの感想

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ミッドナイト・セクレタリ

4.004.00
画力
4.50
ストーリー
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キャラクター
3.50
設定
4.00
演出
3.50
感想数
2
読んだ人
2

愛があれば大丈夫らしい

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
3.0

目次

吸血鬼というキャラクターのお手軽さ

いつの時代も吸血鬼はよく用いられるテーマ。もはや女のほうが血を吸われたいと思っているんでしょうね。男の征服欲の象徴みたいなところを表現するのにももってこいだし。女も攻略されたいんだろうしょせん。ミッドナイト・セクレタリでは、吸血することによる弊害があんまりないし、すごく単純な吸血族。生きていくために血液くださいってそれだけなので、あまり怖い展開がないのも読みやすいと思う。

この物語の舞台は会社。常務である当麻杏平と、その秘書となった花夜。杏平は敏腕常務であり、かつ女性関係の乱れで有名な男。噂を聞いていた花夜は、杏平の女関係は置いておき秘書の仕事を完璧にこなして杏平に自分を認めさせる。見た目は女性らしくなくても、仕事の内容は完璧だから杏平はぐうの音も出ず。快感だったことだろう。しかし、それにプラスして杏平の吸血のお世話までしなくてはならなくなったからもう大変。あんなに嫌いだったはずなのに、なぜかドキドキ…花夜は杏平を愛していくようになってしまう。吸血鬼の甘い香りに酔わされてしまったんだろうね。恋愛感情なしで血液の手配・提供を行っていく、なんていうのがそもそも無理で。極上の味がするのは花夜が杏平を愛しているからで、杏平も花夜を愛しているからなんだってなんで気づかないかなー…ソッコーで付き合うんだと思ってたのに、全然付き合わないからやきもきしたよ。杏平のお兄さんとの三角関係もあるのかと期待していたのだが、横恋慕は全然なし。杏平と吸血鬼仲間の女性への嫉妬はあったが、取り合いにはならず。吸血鬼と人間という垣根を越えて付き合っていけるのかどうか、というところがメインであった。

花夜みたいにデキる女になりたい

秘書としての仕事の速さ、正確さ、女性ならではのプレゼント選びの感覚。何をとっても完璧にこなす花夜。素敵。しかもメガネとお団子頭を解放したらそれなりにかわいいっていうじゃないか。どんな女やねん。童顔だろうが、かわいけりゃ最高だと思うよ。花夜みたいな女になりたいものだ。

他の作品では、よく秘書課の中での派閥争いや、男の取り合い、不倫や略奪愛がテーマになることがあるが、「ミッドナイト・セクレタリ」では他の秘書の話は全然なし。花夜と杏平の愛の営みはいくらでもできるのだ。うらやましいことこの上ない。

杏平の夜の相手も銀行頭取の娘などお金持ちばかりだった。しかし、杏平も花夜の血のうまさに溺れて、他の女の血では渇きを潤せなくなっていく。お互いに好き同士で、身も心も虜。プライベートでも仕事でも最高のパートナーになってしまった彼らは、もはや離れられない関係に。花夜以外の血を飲みたくないというところまでたどり着いてしまった杏平。愛とは怖いものである。序盤であれだけツンツンしていたのに、手放せないと気づいてからのデレ具合は甘すぎた。

今までごひいきだった女たちは全部食用であり、愛した女は花夜だけ。不幸にもそのことによって杏平は吸血族からの追放を言い渡されることとなる。妊娠している女の血は毒になるらしく、その間の血は人工的に作られたものを飲まなくちゃならないみたい。この物語における吸血鬼って本当にルールが多くて、人間界に潜んでひっそりと種を残していっている。そう考えると肩身が狭くてかわいそうだよね。

杏平が初めての感情に戸惑う様子が萌えた

杏平にとって花夜が欠かせない存在になってしまった時、杏平は花夜を自分から遠ざけるようになる。それが悲しくて花夜は秘書をいったん辞めるのだが…杏平の理由は笑っちゃった。仕事だけじゃなくて、吸血鬼として花夜を欲しがっていることを認めたくないプライドがあったらしい。なんでこんなにこいつの血が欲しくなるんだ?!と思い悩み、好きな子に辛く当たってしまうイケメンな杏平くん。かわいいやつ。ドキドキするんじゃなくてイライラするってどんだけなの。誰か特定の人間を愛するなんてこと、杏平には初めてのことだった。セフレまではトントンと登ってきたのに、恋人になるにはものすごくハードルが高くて、お互いすれ違いになって…読者がイライラだよ。すでに仕事終わりに通い婚してたじゃない。

ついに気持ちが通じた!となってからはもうデレデレMAXでいちゃこらしまくっている2人。艶々の表情、色っぽいけどそんなにガチのリアルではなく、かわいらしいもんだ。本当の恋人になってそのままエンドでもよかったけど、やはり付きまとうのは種族の違い。ここをどうクリアするのかが見ものなんだよね。

それにしても、杏平と花夜の身長差やばくない?いったい何センチ?絶対やりづらそう…って思うのは私だけだろうか。

壁を乗り越えるのは簡単だったらしい

心配なのは、花夜が妊娠しちゃって血が飲めないっていう杏平の問題だけだったんだよ。そこさえクリアすればいいだけだった。確かに杏平は一族から追放をくらい、吸血族でも利用できるような医療施設やそのほかの関連施設の利用ができない状態になっちゃったけど、杏平には人間の世界で積み上げてきた仕事の実績と人脈がある。人工の血液なんていくらでも作れるんだから、ということで物語はそのまま終わりを迎えることとなった。

…以外にもあっさり。花夜が出産すればいいんだよね。そしたらまた血が飲めるから。ここで登場する吸血族って、本当に立場が弱いよね。どこかしら人間界に影響は及ぼしているんだろうけど、エサをなくすようなこともできないし、人間ありきでこれからも生きていかなくちゃならない運命にある。天変地異を起こせるような能力があるわけでもなく、ただ人間の血を少しずついただいて生きている、というだけなんだ。そう考えると、全然怖くはないし、「そういう外国人さんね」ってぐらいの勢いで軽い存在のように思える。副作用もないし、実に安全。

花夜が身ごもった杏平の子どもは、どうやら吸血族の血が濃いことになるらしい。子どもにも迷惑をかけるね…だけど、杏平の財力とブレーンで、ハーフになった自分の子どもが不自由なく生きていけるくらいには整えてくれるんだろうよ。…なんか、杏平だったら花夜以外はどうでもいいとか言いそうで怖いよね。キャラ的にあり得ない話じゃないし。それを花夜にとがめられて、大切に育てるという気持ちを学んでいく未来が見えるよ。

ラストははっきり言って物足りない

杏平が追放をくらっただけで、別に殺されちゃうとか、花夜の子どもが殺されてしまうとか、なかったなー…杏平にすでに人間界でもかなり上の力があったことも幸いして、自分の会社の研究員に作らせるからいいとか、軽い終わりだった。死闘があるわけでもなく、命の危険があるでもなく…他のヴァンパイアものの漫画では、たいていが血みどろの争いに発展するようなものばかり読んできたため、ぬるいと言えばぬるい結末だ。

その後、杏平と花夜、そして大事な赤ちゃんはいったいどうなったのか…ハッピーエンドなんだろうけど、続きの気になる終わり方だった。そこが若干もったいないよね。ここまでの道のりは恋わずらいあり、ドキドキの背徳感あり、ワクワクさせられてきたものだっただけに、去り際は微妙。花夜の敏腕秘書としての活躍も続いてほしいなと思っていたので、働く姿を見せて終わってほしかったなーと残念な気持ちになった。全体としても“やや”エロティック、というくくりになるので、そちら目的の人にはつまらないかもしれない。

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最後までぶれることなくハッピーエンド

ヴァンパイアと人間の女というよくある設定なんでヴァンパイアものがいつの世にも流行るのか。それはもう女が血を吸われたがっているからとしか思えませんね。男にとってみれば血はなくてはならないもの。欲しがって当然なんですが、女からしても支配されたい欲・自分だけを見てほしい独占欲みたいなものがあるんでしょう。逆パターンで、女が吸血鬼・男が普通の男っていうパターンも他作品で見たことがありますが、これまた萌でした。どちらにしろ、欲求をあらわすのにヴァンパイアって使いやすいですよね。ミッドナイト・セクレタリでは、常務と秘書(のちに社長と秘書)の関係にプラスしてヴァンパイア設定です。背徳感が感じられるので割とドキドキさせてくれます。兄弟であるお兄さんのほうとの三角関係勃発も予想されましたが、案外とその方向には至らず。まさか花夜のほうから苦しくなって会社をやめていくとは思いませんでした…このストーリーには...この感想を読む

4.04.0
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