あたたかな家族をつくろう
真魚の気持ち・基の気持ち
絵的にはかわいい系。男の子は細目・スタイルはいい系。空気感はふわっとしていて、タイトルの「たいようのいえ」という平仮名もよく似合う。内容はハードすぎるわけでもなく、それぞれが悲しい家族の事情がありながらも心通わせていく、ハートフルな恋物語であると言えるだろう。
真魚のツンデレはすべて基にお見通し。いつも助けてくれるのは、子どものころから基だね。
気が強く、基たち兄弟ともいつも張り合って、お父さんとお母さんがうまくいってないってことも言えなかった。基はそんな強がりの真魚の気持ちに気づいていて、真魚がつらいときにいつもそばにいてくれた。もうこの時点で誰と誰がくっつくかは目に見えていたし、まさかこんな家族をテーマにしたマンガで、よくわからない相手と恋を成就させるってパターンは絶対ないと思ってたよ。それでも、そこに至るまでの過程は本当にあたたかなものばかりで、癒された。自分には居場所がないと思っていた真魚が、基のおかげで居場所を得て、家族を得て、かわいく強く成長していく。基も、なんで自分はこれほどまでに家族を求めているのに、家族を大事にしない奴が家族を持っているんだろうって…悲しい気持ちになりながら、それでも前みたいに誰もが笑いあって過ごせる家族をつくろうって必死にがんばってる基は、かっこよかった。無自覚な天然さんはとっても曲者だったけれど、真魚も基もどちらも「家族」を求めていたから、2人が恋に落ちて一緒に家族をつくろうとすることは、自然だったと思う。
よく、好きなんじゃなくて、ただの憧れだった、とか言って別れるパターンがある。しかし、よく考えてみたら、憧れだろうがなんだろうが、一緒にいたいと思えたらもうそれは恋ってことでいいと思うようになった。同情だ、とか、ペットへの愛とか、どれも本当に相手を大切にしている気持ちに変わりない気がする。そばにいたいと思う気持ちがあれば、そばにいていいんだと思うんだよ。めんどくさい理由は置いておいたほうがいい。
子どもと向き合えよ
真魚は、お父さんとお義母さんから逃げていた。相手も自分を理解しようとはしていないと思い込んでいた。本気でぶつかったことはなかったくせに。だから、こんなに家族になるのに時間がかかってしまったね。
同じようにお父さんもお義母さんも、話し合うことはしなかった。真魚のことを、年頃だからどう接したらいいのかわからないと思っていた…悩んでいるなら悩んでいると、伝えてくれたほうが優しいのに。オトナらしく振舞おうとすることが、大切じゃないときだってあるんだよ。そのまんまで、ただ愛してほしいと思うのが子どもなんだ。それに気づけてないわけじゃなかったのだろうと、今ならわかるのだが、しかめっ面でいたら、お父さんから子どもが離れていっても仕方ない。態度がダメなら言葉で、できれば態度でも、伝えられるようにならなくちゃね。お父さん。
確かに、お父さんから前のお母さんは離れていった。新しい男をつくって。でも真魚はお父さんのほうに残ってくれたんだよ。それだけでもすごいことなのに、娘も妻も出ていったみたいに言っちゃったら…あまりに真魚がかわいそうじゃん。お父さんがしっかりしてたら、真魚だって家にいたんだよ?意地っ張りは親子でそっくりですか。
おめでとう親友
想い人の織田くんが真魚のほうしか見てないって思って気持ちを隠し、それでも親友の真魚を大切に気遣ったちーちゃん。素敵。真魚がなんでも話してくれないことを悲しみ、本当に大切に想っているからこそ、本当の気持ちを話してほしいというちーちゃん、オトナですな!真魚の周りには、家族も、友達も、恋する人も。たくさんの人がいるんだよ。その一人一人のおかげで、今の真魚がつくられているということを、伝えてくれる。
真魚にほれ込んでしまった織田くんも、いい奴だった。ただ、奪っちまおうなんていう悪い考えではなく、ピュアに真魚を想ってくれてた。いっつも自分がちやほやされてきた男の子の場合、自分に興味を示さないやつにびっくりする…ものなのかな。自分がモテてるってどの段階で知るんだろうね、そういうやつ。とりあえず、織田くんの気持ちは間違いなく恋だった。大丈夫。
真魚にはちゃんと自分を大切にしてくれる人がいたのだ。自分に居場所がないとか、ネガティブなことは言っていられない。支えてくれる人に感謝しなくちゃならないね。卑屈になるより、ぶつかっていこう。わからなくなったら、友だちがいつでも助けてくれる。
大樹も捨てがたかった
いい働きをした。基に適度に刺激を与え、揺さぶりをくらわせていた大樹。小学校のころから、真魚を意識していた大樹。じゃー早く言っちゃえよ!
真魚のことはわかってる。それは基もだけど、基だって大樹がいなきゃ自覚できなかったこともあるだろう。当て馬…ってだけではなくて、基の求めた家族でもあり、きっかけをつくってくれた人が大樹だったと思う。基とくっつけないなら大樹でお願いしたかった。
ラジカルさんには望みはなく、基が苦しみながらでも求めたものを、心の底から理解してくれるのはやっぱり真魚しかいなかったと思うね。大樹も、ラジカルさんも、優しい人。真魚と基を支えてくれたのだから、やっぱり素敵な人だ。関係を崩してまででも奪いたいと思うような輩ではない。選ばれたかどうかで点数が付けられるわけじゃないし、ご縁がなかっただけのこと。勝ったとか負けたの話ではないし、大樹とラジカルさんが、本当の意味で相手を思いやれる人だったということだ。
誰も傷つかない恋なんてない…とかカッコいい事言ってるが、それでいいの。不倫とか面倒なことをせず、一生懸命当たって砕けたならそれでよし。諦められなきゃもう一度突っ込めばいいし、諦めるなら猪突猛進をいったんストップして周りを見ればいい。欲しいと思ったもの全部手元において置けるほど人生楽じゃない。もがいてもがいて、懸命に這いつくばって勝ち取っていこう。あっち行ったりこっち行ったり、悩みながら答えを見つけていこう。そしてその時できる最高をいつでも叩きつけてやろうね。
好きだからこそ距離を保つ
めんどくさいことがごちゃごちゃとあり、苦しい時期もあった。しかし、真魚はオトナの判断をして、本来の家族との時間を持つために、基の家から出ることにした。いい子や…心通わせるお義母さんがかわゆい。なんでも話せる、真魚にとって、母であり、ちーちゃんに並ぶ相談相手になってくれたら嬉しい。
そうやってくだらないことだって話し合いながら、真魚なりに基との関係も進展させようと奮闘しているのがまたかわいい。ヘタレの基を引っ張ってくれる真魚。素敵だ。ドキドキして、うまくできないこともいっぱいある。だけど、相手を信頼しているし、自分も信頼されるように努力する。お互いがそういう気持ちでいるなら、恋愛に年齢は関係ない(あまりにも幼少の相手に手を出すのは犯罪)。
「たいようのいえ」はあたたかくてお日様みたいに明るい家。家族がいて、笑い声がある。なんてことない家が、誰にとっても宝物である。ラストは裏切りなく、静かに幕を閉じていったので、安定感ある去り方だったなーと思う。序盤から本当に少しずつ、それこそ1巻に2~3歩くらいのちっぽけな勢いで、着実に恋の歩みを前に進めてきた真魚と基。末永く、幸せになってくれ。
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